コラム

ホセ・ジェイムズ(José James)『Blackmagic』発売10周年を迎えた名盤の革新性を坪口昌恭が紐解く

©Janette Beckman

ホセ・ジェイムズの革新性ここにあり!

 ロバート・グラスパーが 『Black Radio』(2012年)でジャズの歴史を塗り替えたのは間違いないが、その3年前にエレクトロニカとヒップホップをジャズの土俵で見事に融合させ、既に近未来音楽の扉を切り開いていたのはホセ・ジェイムズの『Blackmagic』だと強く思う。

 フライング・ロータス特有のサイケ感、またJ Dilla影響下のズラしドラミングやストイックなベース、タメの利いたギデオンのジャジーピアノ、ドライなテイストのホーン、そしてサンプリング・ループのセンスを表出させるホセのヴォーカル。赤面するほどLoveな歌詞のせいもあり一貫してハートフルなムードが漂っているが、彼が築いた人脈とのコラボレーションにより最先端の光を放っている。

JOSÉ JAMES 『Black Magic (10th Anniversary Edition)』 Rainbow Blonde/ユニバーサル(2020)

 ホセは本作以降Blue Noteに移籍し、より深化した作品を発表し続けるが、R&B/カントリー/ロック/アコースティックジャズ回帰/ダブステップ寄りとスタイルの振幅も大きく、リスナーを戸惑わせてきたことも事実。そうして10年たった今、ホセの革新性ここにありな本作がリイシューされることに内心ホッとした。そうそうやっぱりホセ・ジェイムズはこれよ!

 ビリー・ホリデイ追悼作の頃タワーレコードのイベントでホセとデュオ共演するチャンスに恵まれたが、さらっとしたブルース・フィーリングとタメの効いたグルーヴ感が忘れられない。飛び入りした黒田卓也氏に「『Blackmagic』でのあのレイドバックした演奏は、もしかしてPro Toolsでズラしてるの?」という愚問を投げかけたところ、「いや、そんなんやってないっすよ、あいつらアレできるんです」だとさ。恐れ入りました。〈歌い上げすぎない〉スタイルだからこそバックの音楽性が引き立つどころか『Blackmagic』では参加ミュージシャンとのスピリチュアル・コネクションによりマジカルな香りが終始漂っている。

 今回新録の再演音源が3曲追加収録されていて、アレンジの細部を決めずに演奏されている様子が確認でき興味深い。

 ここ10年を振り返ってみても、やはり僕にとってのゴールド・ディスクだ!

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