インタビュー

黒田卓也、プロデューサーの手腕が全面開花した新作『フライ・ムーン・ダイ・スーン』を語る

©Hiroyuki Seo

新作『フライ・ムーン・ダイ・スーン』ではプロデューサーとしての手腕も全面に

 Blue Noteからのメジャー・デビュー作『ライジング・サン』と、Concordからの『ジグザガー』によって、国内外で評価を確固たるものとした黒田卓也。待望の新作『フライ・ムーン・ダイ・スーン』がリリースとなった。「Blue NoteとConcordから出したあと、次にどう取り組んだらいいだろうと考え、自分だけに立ち返ってみようというのが、今回のアルバムの始まりでした」。

黒田卓也 『フライ・ムーン・ダイ・スーン』 ユニバーサル(2020)

 エンジニアと二人だけで作ったのが冒頭の“フェイド”だったという。「この曲で自分がプロダクション・サイドでここまで出来るんだと思えたんです。これまではデモの制作程度だったのが、自分が作ったビートにエンジニアと一緒に音をいろいろ入れていく内に、自分が思っていた以上のものが出来上がったので」。

 黒田はビートメイカーのようにビートを打ち込み、キーボードを弾いてメロディーを作り、ヴォーカルも入れた。そして、プロダクションの音像にも拘った。エンジニアは、ホセ・ジェイムズやネイト・スミスの録音で知られるトッド・カーダー。ブルックリンの有名なバンカー・スタジオを支える一人だ。「ジャズで素晴らしいパフォーマンスをキャプチャーするという観点から言ったら、アルバムである必要はない。パフォーマンスはライブがベストだと思うので。トッドからは制作後に〈8割は君がやったよね〉と言ってもらいました。そこにいつものメンバーを少し採り入れて、失いたくない、一緒にやっている感じは残したんです」。

 コーリー・キング、ラシャーン・カーター、大林武司、小川慶太など、クレジットされたメンバーを見ると一緒にセッションしているようだが、個別に録音を加えた。「今回、特に小川慶太は凄く効いていて、見たこともないパーカッションをいっぱい持っているので、コンピュータでは絶対できないことを彼はやってくれました。あと、アルバム・タイトル曲は女性の高い声を入れたいと思って、ceroとやった時以来、仲良くさせてもらっている角銅(真実)さんにお願いしました」。

 “フライ・ムーン・ダイ・スーン”はハイライトだろう。新たな制作手法で黒田が示したかったことが最もよく顕れている楽曲だと思う。「この曲が特にそうですけど、ホセやロバート・グラスパーの影響からの決別というか、そこからメジャーの世界に入れてもらいましたけど、そこにずっと甘んじていてはいけない、というのは自分の中で大分前からありました。こういう曲で自分なりの方向性を示せたと思います」。

 音楽家、プロデューサーとしての黒田卓也がいよいよ本格的に始動した。その第一歩が本作だ。

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