前回の韓国スペシャルからしばらく経ってしまいました……。久々の更新となる今回はダンスに注目したいということで、日本のシカゴ・フットワークのパイオニアであるTAKUYA aka LiL HaVoCを迎えてのインタヴューをお届けします! そもそもダンスがあってこその音楽であるジューク/フットワーク、という話はこの連載でもたびたび出てきている通り、両者は切っても切れない間柄。TAKUYA氏については本連載Vol.4でも紹介されていますが、本場シカゴのプリンス・ジェイロン率いるフットワーク・クルー=ハヴォック(HaVoC)に所属し、日本ではKATA FOOTWORK CLUBの一員としても活動中。そしてD.J.Fulltono氏が日本で初めて見つけたフットワークのダンサーであり、いまでは互いのフィールドで共に日本のジューク/フットワーク・シーンを盛り上げる同志とも言うべき存在です。
ここでは、TAKUYA氏のダンサーとしてのキャリアを遡りつつ、いま彼が考える日本におけるシカゴ・フットワークの今後や、自身のめざすゴールについて、いろいろ訊いてみました!
他にはない激しさ、エナジーに溢れているところがカッコイイ
――最初のところから訊いていきたいのですが、ダンスを始めたきっかけは?
TAKUYA aka LiL HaVoC「ダンス自体は15歳の時に始めました。先輩がやっていてカッコイイなと思ったのもあるし、友達がバンドをやっていて、そいつが急にバンドを辞めてダンスをやると言いはじめたんです。そいつはもともとカッコイイ奴だったこともあって、〈俺もやろ〉みたいな。モテたかった(笑)」
――ハハハ(笑)。その時はどういうダンスをやられていたんですか?
TAKUYA「ブレイクダンスから始めて、ヒップホップも好きだったから、それで踊ってみたいなと思ってヒップホップ・ダンスをやって、ロック・ダンスやハウス・ダンスなんかもやっていました。音楽が好きなので、いろんな音に対して踊れたらいいなと思って」
――では、シカゴ・フットワークを知ったきっかけは?
TAKUYA「2011年にYouTubeでハウス・ダンスのバトルを観ていて、フットワーキングズ(FootworKINGz※1)として(キング・)チャールズと(プリンス・)ジェイロン※2が出ていたんです。それで、彼らのスタイルはハウスとちょっと違うなと思ったんですよね。でもカッコ良かったから、フットワーキングズを調べてみたら、シカゴ・フットワークってジャンルがあるんだということを知りました。それまでは音聴いてカッコイイなと思ってそのダンスを始めていたんですけど、シカゴ・フットワークはダンス先行でした」
※1 シカゴ・フットワークのパイオニアといえるシカゴのチーム。2009年にはマドンナのワールド・ツアーのダンサーに抜擢されるなど、シカゴ・ローカルな活動からメジャーなフィールドに躍り出た
※2 個々の活動についてはこちらの回を参照
――どういうところに魅力を感じたんですか?
TAKUYA「他にない激しさ、エナジーに溢れるところがカッコイイなと思って」
――FulltonoさんはYouTubeでTAKUYAさんを知ったんですよね。
D.J.Fulltono「そう。〈Footwork〉〈Juke〉とかキーワードを入れて検索したら、TAKUYAが部屋で踊っている映像を見つけて。〈誰だこいつは!?〉みたいな感じになったんです。たぶん(TAKUYAが)フットワークを始めてすぐの時期じゃないかな」
TAKUYA「2011年末くらいですかね。その時のはフットワークの形にもなってなかったですけどね(笑)。曲に合わせて踊ってみた、みたいな」
――でもFulltonoさんにとっては衝撃的だったんですよね?
Fulltono「シカゴ・フットワークを知ってる、そしてやってる、ということが衝撃的だった。日本のダンサーは誰もこのダンスのことを知らないと思ってたから(笑)」
――TAKUYAさんがフットワークを始めた時は、他に日本でやっている人はいたんですか?
TAKUYA「TOKYO FOOTWORKZというクルーがあって、そこはハウス・ダンスにいろんなステップのエッセンスを採り入れてやっているんですが、そこに所属しているshu-heiくんという人がフットワークを採り入れてはいました」
――では、専門的にやっている人はまだいなかったんですね。それまでTAKUYAさんがさまざまなダンスをやってきたなかで、シカゴ・フットワークに特化してやっていこうと思ったのはなぜですか?
TAKUYA「なんすかね……単純に自分のなかでカチッとハマったというか。トラックもサンプリングでさまざまなジャンルの音楽を採り入れて作られているから、いろんな音楽を聴く自分にフィットした。曲もカッコイイ、ダンスもカッコイイ、やるしかないっしょ、と。フットワークはリズムの展開がおもしろくて、自分でリズム作れるというのも魅力のひとつですね」
――他のダンス以上にクリエイティヴィティーを発揮できる?
TAKUYA「そうですね。よくシカゴの奴も言ってるんですけど、フットワークはダンスじゃないと。なんて言うんだろ……言葉にするのが難しいんですけど、カルチャーというか、音とダンスが密着している感じですね」
――シカゴへ行ったこともあるんですか?
TAKUYA「一度だけ。2015年3月に、シカゴのサウスサイドへ1週間行ってきたんですけど、衝撃でしたね。みんな上手いっていうか、あたりまえなんですけど……〈ホンモノだ〉と思って」
Fulltono「同じクルーの人の家に泊めてもらったんだよね?」
TAKUYA「はい。Dre aka DJ Aceyという奴がいるんですけど、彼のところに。すげー貧乏なんで(笑)、シャワーが使えなくて5日間も風呂に入れず……」
――ハハハハ、それは大変でしたね(笑)。シャワーが使えなかったこと以外で、具体的にどういうところにいちばん衝撃を受けましたか?
TAKUYA「フットワークが生活の一部なんですよ。〈あ、ひらめいた!〉ってキッチンで急に踊り出したり、散歩していて街中でいきなり踊り出したり。あと、小学生がパーッて来て急に踊り出すとか。その子たちが踊っていたのは、当時シカゴで流行っていたシカゴ・バップというダンスで、“DLow Shuffle”という曲に合わせて、振付けみたいなものも決まっているパーティー・ダンスなんですけど、そういうのが生活のなかで普通に行われている。それがいいなーと思って」
――日本ではあり得ない光景ですよね……。シカゴへ行って、現地の人にアドヴァイスをされることはあったんですか?
TAKUYA「みんながみんな教えたがるんですよ(笑)。〈タクヤ、こっち来いよ。お前この動きできるか?〉みたいな奴もいましたし、〈この動きいいだろ〉と言ってくる奴もいて。チームごとの色、個人の色もあったり、いろいろ教えてくれましたね。踊り方に関して言われるというよりかは、〈俺のムーヴを教えるからやれ!〉っていうことが多かったです(笑)」
――チームごと、個々人なりのムーヴがあって、それがイコール〈色〉ということなんですかね。
TAKUYA「そうですね。僕らは日本人で、外からシカゴ・フットワークを観てやっているから〈シカゴ・フットワークとは?〉みたいなことを言ったりするんですけど、それを地元の人たちは答えられないと思うんです。なんつうか(フットワークは)ライフスタイル、生き様みたいなものじゃないかなと」