今のすべてを表現した“心からのうた”
「シンプルに歌いたい」との思いを抱えて、上間綾乃は、新作『魂うた』の制作を始めた。沖縄民謡で鍛えたノドで新曲や想い出深い曲などを歌っている。
「10代で初めてハワイに行き、昨年再び訪れる機会があって《懐かしき故郷》をまた歌った。日系の方々の誇りを持ってたくましく生きる姿にエネルギーをもらってね、それが新作を作る力になりました」
沖縄特有のイントネーションが愛らしい。幼い頃から民謡を学ぶなかで、ウチナーグチを習得してきた。アルバムは、2012年の1stアルバム『唄者』で組んだ井上鑑のプロデュースのもとでレコーディングされた。
「鑑さんと組めて、もう最高に幸せでした。私の中にある曲のヴィジュアル的なイメージを伝えて、そこからアレンジをしていただく方法で進めたんだけれど、私が言葉で説明できないときも、私の頭で鳴っている音を作ってくれるんですよね」
たとえば、《道端三世相》は、上間が三線を弾きつつ、イントロはプリミティヴなパーカッションから始まり、サックスが妖しく響く。
「沖縄の遊び歌のひとつで、歌詞がちょっと怪しげなんですよね。そこから浮かんだのがちょっとサビれたサーカス団。だから、民謡っぽくない、パーカッションやサックスが入っている。おもしろい曲なのに、あまり録音されていないので、ならば、私がやろうと(笑)」
アルバムは、ピアノの凛としたイントロが印象的な加藤登紀子の《命結―ぬちゆい》のカバーから始まる。
「加藤さんは、東京のお母さんのような存在。《命結》は、“命がつながる”という意味の造語です。この曲は、歌詞が私の中にバァ~ッと入り込んでくる感じがあって、すごく気持ちよく歌える。時代も歴史も人も命も全てつながっている、という作品のテーマを象徴する歌になってくれると思って、1曲目に収録しました」
新曲《アマレイロ》も《南風にのって》も、ハワイで《懐かしき故郷》を再び歌った際に強く感じた“つながり”が作曲のインスピレーションになっている。
「《アマレイロ》は、ポルトガル語で黄色という意味で、シンザ(灰色)に見える世界にいても幸せ色のアマレイロを目指して進んでいく、という曲。それに続く曲として鑑さんと《南風にのって》を共作した。歌があれば、同じ街並みも色づいて踊る、という、ある意味で、今の私の心境が反映されている曲でもあります」
自分の全てを出し切って、“心からの歌”が歌えた。それは何よりも大切にしてきたこと。その思いからアルバムのタイトルを『魂うた』にした。ここ数年何かを求めて探す旅を続けていたが、親しい人達に「綾乃、帰ってきたね」と言われたのが嬉しかったという。
LIVE INFORMATION
上間綾乃 4th album発売記念ツアー2016~魂うた
○11/26(土)16:15開場/17:00開演
会場:日本橋三井ホール
www.uemaayano.net/