トラディショナルから未来へ。島太鼓奏者・ひがけい子のリーダーアルバム
父である比嘉恒敏が作った“艦砲ぬ喰ぇ残さー”(いまだからこそ聴くべき強烈な反戦歌)のヒットで知られる四姉妹民謡グループ、でいご娘。その末妹・ひがけい子のリーダー作『テンミカチ ドンミカチ ヒヤミカチ』が届いた。島太鼓奏者の第一人者という顔を持つ彼女だが、本作はそこを主軸とし、気心知れた仲間から才能のある若手、そして民謡界を代表する大御所など多彩な客演陣らと賑やかなコラボを展開しつつ歌い手としての側面も深く掘り下げるなど、自身の豊潤なルーツを軽やかに炙り出す作品に仕上がっている。
「14分近い“連続カチャーシー”には全員が参加しているんですね。2テイク録ったんですが、1回目で十分満足のいく演奏が録れたのに、もう1回やろうって声がみんなから自然にあがって。とにかく参加してくれた方々の勢いと熱がすごかったですね」
疾走感溢れるバチ捌きを披露する“太陽太鼓”といい、ウットリするほどカッコイイ彼女を映し出す。挑戦的な試みも多々あり、エイサーの定番曲“テンヨー節”と元歌とされる宮古民謡“中立ぬみががま”をつなげて物語を豊かに広げてみせるなど試行錯誤の跡が見てとれるが「いまは苦労が思い出せない。すべてが楽しいハードルでした」と笑ってみせる。その晴れやかな表情はまさに本作の格別な親しみやすさや広々とした間口に直結していると言っていい。
とにかく聴き応えのある場面の連続で、とりわけ彼女が幼い頃、芝居の一座と地方巡業に行った際よく耳にした響きを再現する“呼び込み太鼓”から芝居の挿入歌として有名な“紺地小”(玉城流三代目家元・玉城盛義とデュエット)へと繋がる劇的な展開が白眉。また“呼び込み太鼓”で拍子木を打っている前川守賢提供の表題曲、そして最後を締め括る知名定男の書き下ろし曲“鼓動よ響け”も見逃せない。
「偶然、両方の歌詞にも〈ヒヤミカチ(気合を入れて起き上がる意)〉ってフレーズがあって。だから自然とアルバムのキーワードになりました。定男さんの曲は打ち込みのスケールの大きな曲で、彼はこれ浮かないか?って言ってたけど、未来へと繋がっていく感覚もあり、曲順は最後しかないなと。今回はルーツへ戻るというテーマを掲げてやってきましたが、この曲のおかげで、トラディショナルから未来へ、という方向性ができた気がします」
LIVE INFORMATION
「テンミカチ ドンミカチ ヒヤミカチ」アルバム発売記念公演
2022年6月5日(日)沖縄 ミュージックタウン音市場
開場/開演:16:00/17:00
出演:ひがけい子/田場盛信/金城恵子/普久原千津子/前川守賢/伊藤幸太/松原忠之/宜寿次光/シュビーズ/喜久川ひとし/門屋徹也/玉城流三代目家元 玉城盛義(予定)
※有料配信あり
https://www.otoichiba.jp/event/220606higakeiko/