スティーヴ・カーンのこの新譜の飄々とした佇まいにやられた。コンテンポラリーなラテンジャズというより、ジェリー・ゴンザレスのコンフント・リブレ、フォートアパッチ的な70年代の香りが随分するのだが、取り上げている作品はオーネット・コールマン、アンドリュー・ヒル、グレッグ・オズビーといったおっかないジャズアーティストのものが並ぶ。しかし、来年生誕100年を迎えるセロニアス・モンクの『クリス・クロス』の、故ケニー・カークランドとジェリーマナーを踏襲したルンバ風アレンジには、NYのジャズのアナザーサイドであるラテンジャズの深い味がするのだし、このヴェテランをしてその伝統への共感が感じられるのだ。