燃え盛る感傷と繊細な情熱が音を立てる、楽器を持たないオーケストラ。止まらない勢いと鋭利でエモいキラー・チューンの連打が、新たな6人の前途を眩しく照らす!!

妥協のないアルバム

 「止まらなかった。止まることを許されなかったっていうか」(モモコグミカンパニー)――痛みを伴う変化を経験しながらも勢いを緩めず、濃密な季節を駆けてきたBiSH。5月に“DEADMAN”でメジャー ・デビューした数日後に結成メンバーのハグ・ミィが脱退を発表。6月2日に赤坂BLITZで行われた渋さ知らズオーケストラとの対バン企画にて6人最後の姿を見せた直後にすぐさま5人でパフォーマンスを披露し、そのまま〈BiSH Less than SEX TOUR〉に突入。フェス出演も挿みながら、過去最長のツアーを現在も継続している真っ最中だ。

 その過程で加入したのがアユニ・D。8月にお披露目された最年少の彼女は、もともと個の立ったBiSHにかつてない純朴な新風を吹き込む存在だろう。ライヴ参加もこの9月から始まったばかりだ。

アユニ・D「画面の向こうのBiSHはもっと強い人たちっていうイメージだったんですけど。初めて会った時は……みんなちっちゃくて、可愛いなと思いました」

セントチヒロ・チッチ「最初に会った時のアユニは、子鹿みたいな……」

モモコ「未来を見るようなキラキラした目をしてて、いいなって思いました。私たちの忘れてしまった何かを持ってる(笑)」

ハシヤスメ・アツコ「まだまだフレッシュよ! まあ、年齢は離れてます。非公表なので誰が最年長か知りませんけど(笑)」

アイナ・ジ・エンド「まだ6人では数えるほどしかやってなくて、いまは回を重ねるごとに良くしていこう、という状況です」

BiSH 『KiLLER BiSH』 avex trax(2016)

 で、そうした動きと並走する形で制作されたのが、「いままでより突き詰めて作った感じ。妥協が一個もないアルバム」(アイナ)と胸を張る『KiLLER BiSH』だ。メジャー初にして、早くも通算3枚目のアルバム。松隈ケンタ率いるSCRAMBLESの音作りはプリミティヴなバンド・サウンドのカッコ良さを容赦なく追求し、渡辺淳之介(プロデューサー/マネージャー)やメンバー個々による歌詞も、いつも以上に心に迫ってくる。

アイナ「珍しく渡辺さんが〈詞ができない〉って悩んでたり、モモコは自主的に英詞を書いたり、関わった全員が寝る間も惜しんでがんばったと思います。レコーディングでも、何回も何回も録り直して松隈さんたちもすごくこだわってくれて、私たちも遠慮せずに〈もう一回歌いたいです〉って食らいついて」

チッチ「昔は一生懸命なだけだったけどね。だんだん意志が芽生えてきて」

アイナ「あと、松隈さんの要求も激しくなってきました(笑)。それにちゃんと応えられてるか……わかんないけど、一生懸命がっついてきて。それを今回のアルバムではもっと超えられた気がして……だから、いまの自分たちの全力って感じです」