安孫子真哉率いるレーベル、KiliKiliVillaが10月19日に7インチ・シングルを3タイトル同時にリリースする。各タイトルから音源が公開されたので一挙紹介したい。

井の頭レンジャーズ From 『Rangers Patrol 1977~1982 UK!』 KiliKiliVilla(2016)

まずは、“徹子の部屋のテーマ”や“ひこうき雲”のカヴァーで話題を集め、小島真由美asuka andoとのコラボも素晴らしかったインスト・ファンク・バンド、井の頭レンジャーズ。現在制作中というUKパンクの名曲を採り上げたアルバム『Rangers Patrol 1977~1982 UK!』からのリード・シングルで、ここではジャムの洒脱なソウル・ナンバー“The Bitterest Pill”をカヴァーしている。彼らならではのセンティメンタルなロックステディに仕上がっており、原曲の胸締め付けるメロディーをなぞるオルガンが堪らない。

ジャムの82年のシングル“The Bitterest Pill”
 

7インチには、同曲に加えクラッシュの“(White Man) In Hammersmith PalaIs”、イアン・デューリーの“Sex & Drugs & Rock & Roll”、そしてデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの“Geno”のカヴァーを収録。いずれもパンク~ニューウェイヴ期のイギリスが生んだ名曲であり、はたして井の頭レンジャーズがどんな解釈を施しているのか。実に楽しみだ。

 

LEARNERS,CHILDISH TONES LEARNERS x CHILDISH TONES KiliKiliVilla(2016)

 続いては、松田“CHABE”岳二紗羅マリーらを擁し、Mikikiに掲載されたメンバー5人全員インタヴューも反響を集めたLEARNERSと、DECKREC主宰のネモト・ド・ショボーレ率いる4人組、CHILDISH TONESとのスプリット。LEARNERSはバウ・ワウ・ワウのヴァージョンが有名な“I Want Candy”のカヴァーを提供。ライヴでモッシュを巻き起こす定番レパートリーでありながら、昨年リリースされたアルバム『LEARNERS』には未収録だったため、待望の音源化である。セカンド・ライン調のパターンと高速2ビートを緩急自在に行き来するリズム隊のマッシヴさもさることながら、堀口チエのソリッドなギター・プレイが滅茶苦茶カッコイイ!

バウ・ワウ・ワウの82年のEP『The Last of the Mohicans』収録曲“I Want Candy”
 

そして、CHILDISH TONESは、キュアー屈指のギター・ポップ・ナンバー“Boys Don’t Cry”にオリジナルの日本語訳詞を付けてカヴァー。バンドのコンセプトは〈TOY楽器のみでロックンロールを演奏〉ということで、ガチャガチャとチープなアンサンブルが微笑ましく、聴いているとオモチャがあちこちに転がっている子供部屋を想像してしまう。原曲が備えている思春期性を捉えつつ、よりチャーミングな反抗心を打ち出すことに成功しており、これはかなりの好カヴァーと言えるのではないだろうか。

 キュアーの80年作『Boys Don't Cry』収録曲“Boys Don't Cry”

 

BADGE714 TEARLESS KiliKiliVilla(2016)

 最後は、94年にBEYONDS中村修一を中心に結成されるも、ごく短期間の活動に終わった4人組、BADGE714が同年に発表した7インチ“TEARLESS”のリイシュー。今回は最新リマスターが施され、松田“Chabe”岳二によってアートワークも新装される。アノラックシューゲイザーといった90年代序盤のギター・バンドに特有の鋭い疾走感を堪えつつ、その後に隆盛を極めるパンク~エモに通じるヘヴィネスも垣間見えたりと、まさに時代の刹那なキラメキを封じ込めたかのような1曲だ。その一方で、上村和歌子による瑞々しいヴォーカルは不変の魅力を放っている。

 

試聴音源の公開に合わせて、レーベルの公式サイトでは予約受付をスタートしているので、これらの7インチを確実に手に入れたい方はそちらを利用してほしい。なお、筆者が先日レーベル主宰の安孫子らスタッフと話したところ、これからは新作を〈出して出して出しまくる〉とのこと。KiliKiliVillaのリリース・ラッシュに期待大だ。