3回目となる子供達との共演 ここだけのビートルズ・ナンバーがまた生まれる

 ジャズ・ピアニストの山中千尋が、管楽器を手にした小学~高校生たちと共演する新年コンサートを行う。その際の素材は、メロディ性と底なしの広がりを持つビートルズの珠玉の楽曲群。そこには“Jazz × Beatles 3”という副題が掲げられているように、かような催しは次回で3回目を数える。2012年に『ビコーズ』というビートルズ・トリビュートのアルバムを作ったこともある山中千尋だけに、ビートルズに対する思い入れはもちろん人一倍だ。

 その渋谷区主催の〈さくらホール・ニューイヤー・ジャズ・コンサート2017〉という公演は、2部構成にて持たれる。その1部は、山中千尋トリオがジャズの魅力を直裁に伝える演奏を披露。そして、2部では10代の若者達との鋭意協調する。総勢30数名のビッグ・バンドを構成するのは、同区が2014年から音楽体験と発表の機会を提供するために始めた“大和田レインボウ・プロジェクト”に参加する子供達。彼らは3ヶ月ものレッスンを重ね、晴れ舞台に立つことになっている。

 ビートルズ・ナンバーをジャズのビッグ・バンドにアレンジして、技量や演奏歴も様々な参加者を指導するのは、トロンボーン奏者の松本治。デビュー時はいくつものビッグ・バンドに関わり、その後は坂田明山下洋輔ら“あちら側”を見ることができる奏者たちと渡り合うとともに、様々な対象にアレンジを提供してきている御仁だ。松本治は音大での教育にも力を注いできているが、コドモコドモした編曲を排し、プロではない彼らを上のステージに引っ張り上げるような巧みなお膳立てが用意されるはずだ。

 そういえば、山中千尋は2016年の師走には、バークリー音楽大学時代の恩師であるラズロ・ガードニーと2台のピアノを並べて対峙する、東京オペラシティでの公演もすることになっている。そちらは静謐にして格調高い行き方を取るはずで、なんと振り幅の広いこと! 極端に言ってしまえば、〈入門&エンターテインメント度が強いもの〉と〈アートとアカデミック色が濃いもの〉と、その二つは説明できるか。だが、その両端にあるものをあっさりと繋いでしまうのが、まさにジャズという太っ腹な表現。そして、その離れた所にあるものを遊び心とともに十全に謳歌してしまうところに、山中千尋という天衣無縫なピアニストの精髄が表れる。

 聞けば、10代のキラキラした人たちを指揮し、一緒に重なり合う山中千尋は、普段とはまた違う笑顔に満ちているそう。実は現在バークリー音楽大学の助教授もしている彼女、子供好きなんだよね。

2016年作『ギルティ・プレジャー』収録曲“クルー”

 


LIVE INFO

さくらホール ニューイヤー ジャズ・コンサート
Jazz × Beatles3 Forever・フォーエヴァー

○2017/1/3(火) 15:00 開演 
出演:山中千尋トリオ/大和田レインボウ・プロジェクト参加者の皆さん 他
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
www.shibu-cul.jp/