人々を魅了し続けるエリック・サティが織りなす東西の出会い

 「サティの人間的な大きさこそ、彼を12月25日の演奏会のテーマに選んだ理由です」

 バロック古楽器+邦楽器というユニークなコンセプトで知られるアンサンブル室町の代表兼芸術監督でチェンバロ奏者ローラン・テシュネはこう語る。

 「アンサンブル室町は西洋と日本の古楽器の編成で現代作品を演奏していますが、この活動は過去が未来を豊かにすることを象徴しています。サティ自身も偉大な未来の予見者でした。あらゆるジャンルを飛び越えた活動を行った彼は、私たちの視座にもさまざまなエスプリを与えてくれるのです」

 演奏会は三部から構成されている。

 「本公演は、三面鏡のように両面が中央に閉じることのできる三連の絵画、トリプティークのようなイメージで構成しました。第一部と第三部が阿部加奈子さん率いるアンサンブル室町の演奏、第二部が小倉貴久子さんのフォルテピアノと私のチェンバロのデュオになります。この第2部は私が2002年から開始した「チェンバロ+~」シリーズの延長です。このシリーズの第1回は世界で初めてバロック古楽器と邦楽器によるコラボレーションを企画し、アンサンブル室町のアイディアの原点になりました」

 プログラムはサティ作品のとサティにちなんだ委嘱初演作が中心になる。

 「サティ作品としては《スポーツと気晴らし》と《ソクラテス》の抜粋を軸に、小品も取り上げます。前者は人間のポートレートギャラリーのような趣があり、後者は東西の神話性を喚起する作品です。委嘱新作はサティへのオマージュがテーマで、鈴木純明さん、川島素晴さんなどの日本の実力派に加えて芸大大学院生の青柿将大さん、そして海外作曲家たちにも依頼しました。新作にはサティの詩や手紙を使うなど、独創的な試みも含まれる予定です」

 公演にはダンス、日本舞踊、ジャグリングなども参加する多彩な陣容で臨む。

 「サティの音楽とも相性のいいソプラニスタの岡本知高さん、クロスオーバーな活動を展開している口笛演奏家の青柳呂武さんなどにも出演していただきます。青柳さんの口笛が、さまざまな場面で登場しますのでどうぞお楽しみに。サティ作品は多彩な身体表現を含んでいましたが、今回の演奏会ではサティの曲に合わせて、または音楽なしで、などいろいろな場面で観客とダイレクトにコミニュケーションするダンス、日本舞踊、ジャグリングが見られると思います」

 サティを介して織りなす東西の斬新な出会いに期待が高まる。

アンサンブル室町の2015年の公演〈エドガー・ヴァレーズと室伏鴻に捧ぐ墓〉のダイジェスト動画

 


LIVE INFORMATION

アンサンブル室町による「メリークリスマス エリック・サティ!」
○12月25日(日)16:00開演(15:30開場)
会場:東京文化会館 小ホール
演奏:アンサンブル室町
指揮:阿部加奈子
出演:岡本知高(ソプラニスタ)/小倉貴久子(Fp)/ローラン・テシュネ(Cem・芸術監督)/浅井信好(ダンス)/ほか