COLUMN

〈アンサンブル室町+人形浄瑠璃〉 人形浄瑠璃の名作「本朝廿四孝」から5人の作曲家が生み出す新作を聴く

アンサンブル室町©Yoshihito Yokokawa

人形浄瑠璃の名作『本朝廿四孝』から5人の作曲家が生み出す新作を聴く

 ヨーロッパのルネサンス・バロックの楽器と日本の伝統楽器の奏者によるユニークなグループ、アンサンブル室町。これまで日本舞踊やコンテンポラリーダンスや舞踏ほかの踊り手、俳優、声楽家など、様々なアーティストとのコラボレーションも話題を呼んできたこのグループが、今度は聖夜に、人形浄瑠璃の名作『本朝廿四孝』の奥庭狐火の段をテーマに、伊倉由紀子、大家百子、向井響、渡辺俊哉、渡部真理子の5名の作曲家による新曲と、女流義太夫および乙女文楽による人形浄瑠璃の抜粋とを上演する。

 人形浄瑠璃は、太夫と三味線弾きが義太夫節で語る“浄瑠璃”を、人形遣いによる人形と共に送るもの。しばしば「“情”を伝える芸能」と言われる通り、主君、家族、友人、恋人などに対する一途な気持ちや思いやり、喜びや悲しみが、ドラマを通して克明に描かれるのが特長だ。江戸時代に人気を博し、今も全国の団体で上演されており、最高峰が“文楽”なのだが、いわばその女性版として、女性の太夫と三味線弾きが演奏する“女流義太夫”と、女性の人形遣いによる“乙女文楽”がある。三人がかりで一体の人形を操作する文楽に対して、乙女文楽では一人の人形遣いの身体に一体の人形を装着して動く。今回はこの乙女文楽の面々と、女流義太夫の竹本寿々女(太夫)と鶴澤三寿々(三味線)が、アンサンブル室町と共演するのだから見逃せない。

左から、ひとみ座乙女文楽、三味線:鶴澤三寿々、浄瑠璃:竹本寿々女

 『本朝廿四孝』の舞台は戦国時代。武田信玄の息子・勝頼と長尾謙信の娘・八重垣姫は、敵対する両家の和睦のため許婚となるが、勝頼はある出来事により切腹してしまう。ところが、八重垣姫のもとに死んだはずの勝頼が現れる。実は死んだのは別の人物で、本物の勝頼は長尾に奪われた武田の家宝の兜を奪還するため、身分を偽って長尾家に入り込んだのだ。しかし謙信もそのことに気づいており、勝頼の命を狙う。八重垣姫は恋しい勝頼の身に危険が迫っていることを伝えようとするが、目の前に広がるのは、水面が凍って船も通らない諏訪湖。「翼が欲しい、羽根が欲しい、飛んでいきたい」と葛藤した末、彼女は兜を手に、兜を守る狐達に護られながら、勝頼のいる湖の向こうまで駆けていく……。このマジカルな場面が、今回上演される奥庭狐火の段だ。

 日本人が長く語り継いできた珠玉のドラマから、5名の作曲家がどのような作品を生み出し、それらと人形浄瑠璃がどう繋がるのか? 過去にもアンサンブル室町の公演に出演している俳優・工藤巧も橋渡しをしてくれそうだ。越境を得意とするアンサンブル室町ならではの、斬新でイマジネーション豊かな世界が待っているに違いない。

 


LIVE INFORMATION

アンサンブル室町+人形浄瑠璃
12月24日(火)開場14:30/開演15:00 開場18:30/開演19:00
【会場】北沢タウンホール(下北沢)
【曲目】伊倉由紀子/大家百子/向井響/渡辺俊哉/渡部真理子(委嘱作品・世界初演)
【出演】ひとみ座乙女文楽/竹本寿々女(浄瑠璃)/鶴澤三寿々(三味線)/鷹羽弘晃(指揮)/工藤巧(俳優)/アンサンブル室町(和楽器15名+古楽器8名)
【演出】萬浪大輔
【芸術監督】ローラン・テシュネ
【照明】松本永
www.ensemblemuromachi.or.jp/2019-ningyojoruri

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