40年振りに甦る、多彩な音楽が詰まったデヴィッド・ボウイ初主演映画のサントラ
俳優としても異彩を放ったデヴィッド・ボウイ。なかでも、彼の俳優としての魅力を最大限に引き出したのは、ニコラス・ローグ監督による初主演作『地球に落ちて来た男』だろう。そのサントラが40年の時を経て、2枚組というヴォリュームで初CD化された。映画でボウイが演じたのは、トーマス・ジェローム・ニュートンと名乗る異星人。当初、ボウイがサントラに曲を提供する予定だったが話がまとまらず、元ママス&パパスのジョン・フィリップスが音楽監督を務めて、サントラに楽曲を提供することになった。当時、フィリップスはイギリスに渡り、ミック・ジャガーをはじめローリング・ストーンズのメンバー達とソロ・アルバムを制作中。そんななかで、フィリップスがサントラのために書き下ろした曲は、バンド・サウンドをベースにして、アメリカーナなロック・ナンバーからジャジーなインストまでなかなか多彩。スティール・ギターをBJコールが弾いていたり、ストーンズのミック・テイラーをゲストに迎えたりしながら、乾いた音とアーシーな叙情に物語の舞台になったアメリカの大地の匂いを漂わせている。
JOHN PHILLIPS,STOMU YAMASHTA The Man Who Fell To Earth Universal(2016)
その一方で、ニュートンの持つ“異星感”を醸し出しているのが、ツトム・ヤマシタの既発のアルバムから選ばれた曲の数々だ。フリー・ジャズ、プログレ、現代音楽、さまざまな顔を持つヤマシタの独創的な音楽が、ニュートンのミステリスなキャラクターを印象づけている。フィリップスとヤマシタのスタイルが違った音楽が、不思議なバランスで共存するのが本作の特徴だろう。さらに、ルイ・アームストロング、キングストン・トリオ、そして、当時フィリップスの妻だった女優のジュヌヴィエーヴ・ウエイト(『ジョアンナ』!)のノスタルジックな歌声が優しく囁きかけ、オーケストラによるホルストの『惑星』が重厚に響き渡る。ボウイの歌声はないけれど、異星から来た男の心象風景を描いたような、孤独と郷愁、そして、エキゾティシズムを感じさせるアルバムだ。
INFORMATION
DAVID BOWIE is |デヴィッド・ボウイ大回顧展
日程:2017/1/8(日)~4/9(日)
会場:寺田倉庫G1ビル
www.davidbowieis.jp/