ストロークスで課外活動を行っていなかった唯一の男、ニック・ヴァレンシがついに動いた。みずからがリード・ギターとヴォーカルを務める5人組バンド、というガチな編成に並々ならぬ気合いを感じるが、開陳された楽曲はより雄弁にその本気ぶりを物語っている。本隊譲りのガレージ要素も覗かせつつ、カーズを彷彿とさせるニューウェイヴ色、チープ・トリックめいたパワー・ポップ、そしてモーターヘッドばりのメタル味が、並列というよりも1曲のなかで渾然一体となって展開されているのだ。ニックの脳内に渦巻く〈俺の思うロックンロール〉をこねくり回して10曲分の団子に丸めたような、強烈なまでの自己発露を感じる。それでいてきっちり整合感があるあたり、プロデュースを手掛けたジョシュ・オムの第三者視点による采配も大きいのだろう。ともあれ、他のストロークス・メンバーのサイド・プロジェクトと比べて、もっとも自身の音楽的パーソナリティーを忠実かつ大胆にアウトプットした、魅力溢れる快作だ。