©Scottie Cameron

稀代のロックンロール・バンドの一員たるギタリストはソロも絶好調! 19曲入りの大作となったニュー・アルバムでメロディーの才はさらに花開いていて……

ストロークスには勝てやしない

 ストロークスと並行して精力的に課外活動を続けているアルバート・ハモンドJr(以下AHJ)の通算5作目となるソロ・アルバム『Melodies On Hiatus』が到着。前作『Francis Trouble』(2018年)がバンド編成のライヴ感溢れる作品だったのに対し、新作は打ち込みも積極的に使い、多種多様な19曲を詰め込んだ大作だ。

ALBERT HAMMOND Jr. 『Melodies On Hiatus』 Red Bull(2023)

 前作を聴いたとき、〈ここまでストレートにロックしてストロークスに寄っちゃうと、AHJのサイド・プロジェクトとしての意味合いはどうなるの?〉と疑問に思ったものだが。そこの差別化については彼も考えたようで、「今回はバンドと一緒にスタジオに入りたくないって気持ちがあったね。どちらかと言うと、バンドという編成を崩したかったんだ」と、その意図を説明してくれた。

 「前作がライヴ・バンドと一緒に制作したアルバムだったから、今回は違うことがしたいと思った。4作目のアルバムを作ってやっと、もうバンドはいいんじゃないか?って思うようになって。俺はもうすでにバンド(ストロークス)にいるんだから、他のバンドを作らなくてもいいのかも、ってね。他のどんなバンドをやっても、常に比較されるし、ストロークスという最高のバンドにはなかなか勝てやしない。だから、そうじゃないことをやったほうが自分自身ももっとエンジョイできるんじゃないかと思ってさ。今回は、バンドとは違う方法で曲を作ったんだ」。

 意外だったのは、“100-99”にラッパーのゴールドリンクが客演していること。ソロ・パートにラップを入れてみたいというアイデアから、このコラボに繋がったそうだ。

 「俺は昔から、ソロでもストロークスでも、多くの楽曲にループのビートとラップを乗せられる気がしてたんだよね。たぶんそれは、俺が90年代初期のLAのヒップホップを聴いて育ったから。あの時代のLAのラップはすごくメロディアスで、俺の知らないクールな昔の曲がたくさんサンプリングされていた。俺も自分の音楽でそういうことをやってみたいとずっと思ってたんだ。ドクター・ドレーのフックみたいなやつを」。

 “Thoughtful Distress”では、アークティック・モンキーズのマット・ヘルダーズと、ビリー・アイドルなどで知られるギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスを組み合わせるという、常人では思いつきそうがない共演も実現させている。

 「特別な理由はないよ(笑)。まずマットは俺の友達。その曲は前作の残り物なんだけど、最初はあまり出来が良くなかったから、マットと一緒により良いものにしようとしたのが始まりだったと思う。スティーヴを招くアイデアは……俺とガス(・オーバーグ、プロデューサー)でスティーヴの話をしてたのかも。俺はずっと彼のギターの大ファンなんだ」。