もっといろいろなところから声が掛かってもいいと思うし、実際に掛かっているのだろうけど、興味がないのか、慎重に選んでいるのか、アルバートの外部ワークはその評判に反し、決して多いとは言えない。現在、CDで入手可能な客演作品は『This Bird Has Flown: A 40th Anniversary Tribute To The Beatles' Rubber Soul』と『A Guide For The Perplexed』の2枚。前者はスフィアン・スティーヴンスらが顔を並べるビートルズ『Rubber Soul』のトリビュート盤だ。ここでアルバートはベン・クウェラーが挑んだ“Wait”にフィーチャリング参加。原曲に忠実なギター演奏とコーラスを披露してみせた。一方、後者はベイビーシャンブルズドリュー・マコーネル(ベース)によるソロ・ユニット、ヘルシンキの2作目。ムーディーな“The Batteries Weren't Dead”においてアルバートの緊張感溢れる鋭角ギターが異彩を放ち、ユニークな仕上がりとなっている。

【参考動画】アルバート・ハモンドJr.が参加したベン・クウェラーによる
ビートルズ“Wait”のカヴァー

 

 そんなわけで、外仕事に消極的とも思えたアルバートは、今後どうやらプロデュース仕事に力を入れていく模様。ちょっと前にポステルズの初作『The Postelles』やヴァクシーンズ“Tiger Blood”を手掛けていたが、まずは9月に登場するヴューの新作『Ropewalk』でプロデューサーとしての名を上げるはずだ。折しもアルバートの得意とするガレージーなロックが、英米を中心に元気を取り戻している昨今。ロックの伝統にモダンな感性を加えるセンスに長けた彼は、若手バンドにとって頼もしいアニキとなることだろう。諸々の依存症も克服したようだし、これからは裏方としてもギター・ロックのリヴァイヴァル・ブームを支えていってほしい。

【参考動画】ヴューの2015年作『Ropewalk』収録曲“Marriage”