前作『リトル・ブロークン・ハーツ』から4年ぶりの新作は、彼女のホームBlue Note75周年を祝うイベントでJAZZの巨匠たちと共演し、触発されうまれた作品。デビュー作『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』以降ピアノから少し距離を置き、ギターで曲作りをしていたという彼女。しかし、今作ではキッチンの近くに置いてあるピアノを弾きながら作曲を行い完成させたという。私生活では母となり、環境が変わったことで、渋く暖かい、甘い歌声が深みを増している。ウェイン・ショーターやドクター・ロニー・スミスなど巨匠がレコーディングに参加。ピアノと歌声に酔いしれる事間違いない作品。
初作の音楽性に回帰したと言われているけど、全然違う。あれはジャジーな逸品だったが、ウェイン・ショーターのソプラノ・サックスに含みがある冒頭曲ほか、ノラにとっては(自身の作品で)初めてのジャズ。昔のように甘みはなく、カサンドラ・ウィルソンみたいな苦みが表出している。とはいえ、ストレートなジャズ盤と言うわけでもなく、ファルセットで歌われる表題曲などは前2作の流れを汲んでもいる。歌も音も何しろ豊か。