©Mike Lawrie

エル・マイケルズ・アフェアの新作『24 Hr Sports』も話題のリオン・マイケルズ。前号に続いては、彼が主宰するビッグ・クラウンとその周辺からこの界隈の魅力を探っていきましょう!

 では、先月からの続きです。エル・マイケルズ・アフェアで待望の新作『24 Hr Sports』をリリースしたリオン・マイケルズですが、言うまでもなくその作品を織り成すまでの縦糸と横糸にはこれまで彼が関わったさまざまなバンドやプロデュース作品があり、所属してきたソウル・ファイアやダップトーン、運営してきたトゥルース&ソウルやビッグ・クラウンといったレーベルの歴史があります。

 そんなわけで今回はそうした縦横のなかから、リオンが深く関与した過去の作品を筆頭に、リオンとトーマス・ブレネック、ホーマー・スタインワイス、ニック・モヴションら〈ダイアモンド・マイン〉の面々による最近の関連作品、ダップトーンの近作、そしてリオンの直接タッチしたビッグ・クラウン作品のごく一部を紹介していきます。この鉱山はどこまでも掘り進められるわけで、今回はそのほんの入口ということで!

エル・マイケルズ・アフェアのニュー・アルバム『24 Hr Sports』(Big Crown)

ビッグ・クラウンの作品を一部紹介。
左から、ボビー・オロザの2022年作『Get On The Otherside』、バカオ・リズム・バンドの2024年作『BRSB』、マーローズの2024年作『Perak』、サプライズ・シェフの2025年作『Superb』(すべてBig Crown)

 

THE MIGHTY IMPERIALS 『Thunder Chicken』 Desco/Daptone(2001)

リオンがオルガン奏者として在籍し、99年に初シングルを出した4人組バンドがデスコに残した唯一のアルバム。ガブリエル・ロスのプロデュースでファンク・リヴァイヴァルの流れに則った内容だ。シンガーのジョセフ・ヘンリーを迎えた4曲も強力。

 

THE WHITEFIELD BROTHERS 『In The Raw』 Soul Fire/Now-Again(2001)

90年代にはポエツ・オブ・リズムとして活躍したミュンヘンの兄弟がソウル・ファイアに残した初作。ダップトーン組のシュガーマン&ロスも交えてサイケデリック・ファンクの世界が渦巻くなか、リオンもサックスとフルートの演奏に参加している。

 

SHARON JONES & THE DAP-KINGS 『Dap-Dippin’ With...』 Daptone(2002)

デスコから登場した歌姫シャロン・ジョーンズが、シュガーマン&ロス周辺の演奏陣を従えたダップトーン第1弾作品。この初作ではオーティス・ヤングブラッド名義でリオンがサックスを担当し、次作『Naturally』(2005年)まで在籍した。

 

EL MICHELS AFFAIR 『Sounding Out The City』 Truth & Soul/Big Crown(2005)

トゥルース&ソウルの設立第1弾となる初作。仲間のモヴション、ブレネック、スタインワイスがバックを固め、アイザック・ヘイズ曲も含む劇画的なジャズ・ファンクを鳴らす。ダップトーンのボスコ・マンもミックスやヴィブラフォン演奏で助力。

 

BRONX RIVER PARKWAY 『San Sebastian 152』 Truth & Soul(2008)

ソウル・ファイア傘下のラテン・エクスプレスに7インチを残していたラテン・ファンク集団がトゥルース&ソウルで形にした初作。実態はモヴションとブレネックを中心としたセッションで、プロデュースを務めたリオンもピアノやフルート、サックスを演奏。

 

EL MICHELS AFFAIR 『Enter The 37th Chamber』 Fat Beats(2009)

ファット・ビーツ発のセカンド・アルバムは、レイクォンとのコラボを経て実現したウータン・クラン(とメンバー)のインスト・カヴァー集。演奏の布陣は前作とほぼ同じながら、主題に合わせてリオンがオルガンも弾いているのがポイントだ。

 

ALOE BLACC 『Good Things』 Stones Throw(2010)

アヴィーチーと会う前のアロー・ブラックがトゥルース&ソウル勢にプロデュースを委ねて吹き込んだヴィンテージ・ソウル快作。当時マーク・ロンソンと組んで話題になっていたダップトーン勢と演奏陣はほぼ同じだが、リオンのセンスを見せつける。

 

CHARLES BRADLEY 『Changes』 Dunham/Daptone(2016)

リオンもメナハン・ストリート・バンドでバックを務めてきた遅咲きのソウルマンによる生前のラスト・アルバム。ブレネックが主導し、オルガンなどを弾くリオンもブラック・サバスのカヴァー(!)となる表題曲などを除いて大半の作曲に参加した。

 

THE OLYMPIANS 『The Olympians』 Daptone(2016)

エル・マイケルズ・アフェアでも演奏したトビー・パズナー主導で、ダップ・キングス周辺メンツが演奏したバンドでの唯一のアルバム。シュガーマン&ロスやブレネック、モヴション、ガイらと並んでリオンはサックスで参加している。

 

EL MICHELS AFFAIR 『Return To The 37th Chamber』 Big Crown/Pヴァイン(2017)

トゥルース&ソウルの消滅後に立ち上げたビッグ・クラウンから放った3作目。今回もウータンのカヴァー集ながら初めてリー・フィールズのヴォーカルをフィーチャーしているのが大きな変化。“All I Need”ではレディ・レイが歌っている。

 

THE SHACKS 『Haze』 Big Crown(2018)

ビッグ・クラウン作品でお馴染みのマックス・シュラガーとシャノン・ワイズを中心とするグループの2作目。レーベルがインディー・ロック目線で注目される契機になった。マックスはその後セイ・シー・シーのプロデュースなどを手掛けている。