Page 2 / 4 1ページ目から読む

同じ時代に生まれていたら友達になれたかもしれない

――あとで『Blue & Lonesome』の魅力により深く迫ろうと思いますが、その前に2人のストーンズとの出会いについてお訊きしたいです。

ショウ「中学に入ったら軽音楽部があって、当時普通に友達だったウチのギターのコウキが入部するということで俺も一緒に入って。〈ストーンズやろう!〉と言うので、最初に“Jumpin’ Jack Flash”をコピーしました。ただ、俺はそのときドラム担当でしたが。それと同時期にファーストを聴いて、そこからどんどん聴いていきました」

“Jumpin’ Jack Flash”の72年のライヴ映像

64年作『The Rolling Stones』収録曲“I Just Want To Make Love To You”のライヴ映像

――初めにファースト・アルバムを聴いたのは、ブルースのカヴァーが入っていたから?

ショウ「というか、俺が生まれたのが90年なので、(代表作が)もう出揃ったあとで。そこで中途半端なものを聴いたら好きになれないんじゃないかという恐れがあって、きちんと1枚目から順を追って聴いていくのがいいかなと。マンガを1巻から揃えたいというのと一緒です」

――なるほど。で、そのファーストで好きになれた。

ショウ「はい。同世代であんなことをやっているバンドがいなかったので。ちょうど(当時の)俺らの少しお兄さんぐらいの歳で、ストーンズはファーストを作っているわけで。その感じが良かったのかもしれないです」

――同じ時代に生まれていたら友達になれたかもしれない、みたいな。

ショウ「そんな感じです」

――OKAMOTO’Sはハマくん以外の3人とも、どっぷり影響を受けてますよね。

ショウ「受けてますね。ただ、俺らもオリジナリティーを求めている時期でもあるので、最近も〈ストーンズばっかり聴いてちゃダメなんだよ!〉と急にレイジが言い出したりして、〈いや、いいと思うよ~〉とコウキが返していたり。かと思えばその2日後に、〈モノラルのやつを聴いたけど、“悪魔を憐れむ歌”はやっぱり最高だよね〉とレイジが言っていたり。結局好きなんだな、という(笑)」

OKAMOTO’Sの2015年作『OPERA』収録曲“Dance With Me”

――Reiちゃんがビートルズ好きだという話は以前にも聞きましたけど、ストーンズ好きだというのはあまり公言してなかったですよね?

Rei「そうですね。好きなのがデフォルトみたいになっているので、あえてわざわざ語らない感じがあったと思うんですけど」

ショウ「わかる(笑)」

Rei「私は4歳からクラシック・ギターを始めて、アメリカに住んでいた経験を経て、小学3~4年のときにロック・バンドを組んで。それでストーンズの“Honky Tonk Women”とか、キーボードの子がいたので“She’s A Rainbow”を演奏したりしていたんです。その頃からエリック・クラプトンをよく聴くようになって、さらにクリームから辿って戦前のブルースを聴くようになったりしました。で、ガッツリとブルースを好きになってから改めてストーンズを聴くと、ブルースを知らずにカヴァーしていたときよりもいろんなことが理解できたんです。彼らのブルースに対するリスペクトもひしひしと感じたし」

Reiのロバート・ジョンソン“Love In Vain”のカヴァー

ストーンズのロバート・ジョンソン“Love In Vain”のカヴァー。69年作『Let It Bleed』や70年のライヴ盤『Get Yer Ya-Ya’s Out』などに収録されている

――なるほど。

Rei「あと、ビートルズが好きだった私としては、〈サタニック・マジェスティーズ〉を聴いて『Magical Mystery Tour』に通じるサイケな音作りを感じたり。ストーンズはバンドとしても好きですけど、それ以上に作品が好きだっていうのが大きいんです。それこそ〈サタニック・マジェスティーズ〉だったりとか」

※ストーンズの67年作『Their Satanic Majesties Request』のこと。同作は当時のサイケデリック・カルチャーを大きく反映したアルバムで、〈ビートルズ『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の二番煎じ〉など当時は酷評が多かった

ショウ「〈サタニック・マジェスティーズ〉が好きという人に初めて会ったかもしれない。俺も大好きなんです。でもそれを言うと〈なんで?〉と言われることが多くて」

67年作『Their Satanic Majesties Request』収録曲“She’s A Rainbow”

Rei「ストーンズにはいろんな側面があるのがいいですよね。バキバキのシングル・チューンが入ったアルバムもポップで格好良いし、片や今回の新作みたいに演奏に重きを置いたアルバムも出せるという。歌モノだけじゃないというのは、特にミュージシャンなら心をくすぐられるんじゃないかと思います」

ショウ「今回は何より演奏を楽しめる久々のアルバムだなと思いましたし。そういうのっていまは貴重ですよね」

――ブルースの背景があって、演奏を重視しているところが2人に共通する〈好きポイント〉であると。

ショウ「いや、もちろん不良っぽさや、ロックのイメージを作った人たちだということもありきで好きですよ。ブライアン・ジョーンズが10代で女教師を妊娠させたり、そういう……」

Rei「そうなんだ!?」

ショウ「そう。何人子供がいるんだよ、というようなロックっぽい逸話も魅力のひとつ」

Rei「ファッションもアートワークも素晴らしいし、総合点の高いバンドだよね」

ショウ「本当に。総合点で言ったら敵うバンドはいないと思うな」

Rei「あとはブルースという、3コードで12小節のシンプルなジャンルに惹かれてるバンドだから、どのアルバムを聴いても〈キープ・イット・シンプル〉の姿勢を感じるんですよ。ビートルズと比較されることもよくありますけど、ストーンズは衝動やシンプルな音楽性に基づいているところが、とても格好良く感じる」

――じゃあ、そんな2人にとっては今回のアルバムはドンピシャですね。〈こんなアルバムを待っていた!〉という感じでしょ。

ショウ「いや、本当にそう思います。〈いいんだ、これで〉と思わせてくれるというか。俺たちが10代でデビューしたときに、最初にカヴァー・アルバムを作りたいと言ったら、〈そんなのダメだ〉と言われてしまって。でも、いまなら〈ストーンズがやっているんだから、いいじゃん〉と言える。ただ、憧れの感覚を上手く表現することは確かに難しい。古い新しいは関係ないにしても、好きだからやっているんだという気持ちは、伝わらない人には伝わらなくて。〈パクリじゃん〉の一言で済まされてしまううこともある。なので、ストーンズがこういうことをやってくれると、俺は間違ってなかったんだと励まされます」

――前に言ってましたもんね。OKAMOTOSは初作~3作目までカヴァー曲をそれぞれ入れていて、4作目の『OKAMOTO’S』(2013年)でそろそろオリジナル曲だけでフル・アルバムを作ろうとなったときに、ストーンズの4作目『Aftermath』(66年)がまさにそうだったから、それを参考にしたって。

ショウ「そうです。そんな例え話をしている時点で、どうかしていますね(笑)」

66年作『Aftermath』(USヴァージョン)収録曲“Paint It, Black”