コラム

ビラルをいま観る/聴くべき4つの理由―グラスパーやケンドリック・ラマーらに愛されるオルタナティヴな感性を紐解く

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3. 拡張するジャズのキーパーソン

『A Love Surreal』からの第1弾シングル“Back To Love”ではウェザー・リポートの音楽からヒントを得たというビラルだが、全方位に目を向けるなかで彼がもっとも大切にしてきたルーツがジャズだ。4歳から聖歌隊にする一方で、ムスリムの父に連れられて地元のジャズ・クラブで音楽に親しんでおり、フィラデルフィアでの高校生活を終えるとジャズを学ぶためにNYのニュースクール大学へ進学。作曲・編曲技法を学んで本格的なミュージシャンになろうと決意したビラルは、在学中にビッグバンドのアレンジも手掛けていたようだが、そこで出会ったのが、後に互いの作品に参加し合うことになるロバート・グラスパーだった。

ビラル『A Love Surreal』収録曲“Back To Love”
 

グラスパーはビラルのデビュー作から『A Love Surreal』までのアルバムに参加し、ビラルはロバート・グラスパー・エクスペリメントの〈Black Radio〉シリーズにフィーチャーされる以前からグラスパーの全作品で歌声を聴かせているなど、2人の絆は強い。2010年代にはグラスパー側の商業的な成功もあり、相乗効果でビラルにもふたたび光が当たるようになった。

グラスパー絡みでは、マイルス・デイヴィスのトリビュート作品『Everything's Beautiful』(2016年)での“Ghetto Walkin’”における悩ましい歌唱も記憶に新しいところだが、ドラマーのオーティス・ブラウン3世ブルー・ノートから発表した初作『The Thought Of You』(2014年)でも3パートある表題曲でジャズ・シンガーを気取っていた。また、自身のバンドで活躍したプレイヤーのリーダー作にも顔を出しており、ニュースクール大学出身のトランペッター、レロン・トーマスの『Cliquish』(2015年)で見せたエフェクトの掛かった声での怪演、日本人鍵盤奏者・BIGYUKIのデビュー作『Greek Fire』(2015年)に収録された“John Connor”におけるアンニュイな表情のヴォーカルも高評を得ている。

『Everything's Beautiful』収録曲“Ghetto Walkin'”
 
レロン・トーマス『Cliquish』収録曲、ビラルが参加した“Role Play”
 

他にも、テレンス・ブランチャード・グループの2009年作『Choices』での客演やボニー・ジェイムズとの共演などがあるが、デビュー間もない頃に参加したグールーの『Jazzmatazz: Streetsoul』(2000年)も含め、ジャズがヒップホップなどと結び付いて革新/拡張されていく重要な現場にはビラルがいたのだと気付かされる。

グールー『Jazzmatazz: Streetsoul』収録曲、ビラルが参加した“Certified”

 

4. 時にヘッドバンギングしたくなる強烈なライヴ・パフォーマンス

来日は今度のライヴで3度目となる。前回はロイ・エアーズのライヴにおけるゲストで、最初の来日は2001年の〈SUMMER SONIC〉のステージだった。〈サマソニ〉ではデビュー直後で客もまばらだったが、もともとルーツ周辺と繋がっていただけにライヴには定評があり、感情が昂ぶってくるとステージに這いつくばって悶え歌う奇怪なパフォーマンスは、視覚・聴覚の両面で強烈なインパクトを与えていた。そのどこかナルシスティックな佇まいは〈狂ったプリンス〉とでも言おうか。

これは本国においても同様で、時にヘッドバンギングしたくなるステージはパンク・ロックのライヴにも近い。スティーヴ・マッキーがドラマーを務めていた時期のライヴでは、鍵盤でBIGYUKIこと平野雅之、そしてフィラデルフィア在住の日本人ギタリストでタイ・トリベットのグラミー受賞作『Greater Than』(2013年)にも名を連ねた宮崎大という2人の日本人もバンド・メンバーとして活躍し、カメレオンのように変化していくビラルを柔軟なプレイで支えていた。

ビラルの2013年のライヴ映像
 

そして今回は、初めて自身の名を冠して行う来日公演となる。現在アナウンスされているバック・メンバーは、BIGYUKIのアルバム及び過日の凱旋公演にも同行したランディ・ルニオン(ギター)、これまでもビラルのレコーディングに参加してプロデュースも手掛けていたコンリー“トーン”ウィットフィールド(ベース)、ニュースクール大学出身でローラ・イジボアの公演でも来日経験があるジョー・ブラックス(ドラムス)、NYを拠点にするフューチャー・ソウル・バンドのラヴ・エクスペリメントに参加していたデヴォン・ディクソンJr(キーボード)、そして2012年のシングル“Clarity”などがアンダーグラウンドのR&Bシーンで支持を集めたマイカー・ロビンソン(バック・ヴォーカル)といった腕利きたち。日本での人気も含め、ここにきて勢い付いているビラルだけに観応えは十分なはず。新進気鋭のアーティストに初めて接するような気持ちでライヴ観戦に臨みたい。

 ビラルの2016年のスタジオ・ライヴ映像
 
ビラル『In Another Life』収録曲“Pleasure Toy”

 

BIGYUKIが語る、ビラルの魅力

――ビラルの作品やライヴには、どういうきっかけで参加することになったのでしょうか?

「きっかけは自閉症啓発のためのコンサートで、ハウス・バンドとして演奏した時に出演していたゲスト・シンガーの一人がビラルでした。そこで一緒に演奏して、何か繋がるものを感じてくれたと思います。ルイス・ケイトも同じハウス・バンドでベースを弾いていて、ビラルのバンドには彼と同時期に参加しました」

――演奏面/創作面において、ビラルからは何か指示があるのでしょうか? もしくは話し合いが持たれるのですか?

「彼のバンドに入って間もない頃、俺が弾きすぎだと言われたことがあります。まぁはしゃぎすぎて、思いついたもの全部弾いてましたからね(笑)。それからは弾くことすべてが音楽的になるよう心掛けるようになりました。基本的にはバンド放任主義です。彼のなかでは歌と楽器が同列なんじゃないかと思います。というか、彼ほど自分のヴォイスを楽器のように扱うシンガーはあまりいない気がします」

――ビラルがアーティスト(ヴォーカリスト/ソングライター)としてスペシャルな部分は何でしょう?

「自分の世界観がありながら、それでいてどんなものにでもなれる自由さを持っているところですかね。濃ゆいのに透明、みたいな。それを可能にしているのが、ジャズをはじめ音楽全般への深い造詣と、自分の発想をなんら犠牲にすることなくそのまま表現できる、広すぎるヴォーカル・レンジやヴォイス・コントロールの凄まじいテクニックだと思います」

――ビラルのライヴはどんな部分がユニークだと思いますか? 演奏者から見て、ライヴの見どころはどんな部分でしょうか?

「たぶん彼のライヴは2つとして同じものがないと思います。現在のバンド・メンバーはランディとベーシスト以外わかりませんが、ステージ上のミュージシャン各々が瞬間瞬間で作り上げる、誰も聴いたことのない音楽を体験できるのではないかと。俺がバンドにいた時は、毎回スリリングでした」

ビラルをフィーチャーしたBIGYUKI“John Connor”の2016年のライヴ映像

 


ビラル来日公演

2017年1月23日(月)、1月24日(火)@Billboard-LIVE Tokyo
1stステージ:開場17:30/開演19:00
2ndステージ:開場20:45/開演21:30
サービスエリア 8,500円/カジュアルエリア 7,000円
★詳細はこちら

 


ビラル来日公演 2組4名様ご招待

 

1月24日(火)にBillboard-LIVE Tokyoで開催される1stステージのチケットを、Mikiki読者2組4名様にプレゼントします。応募締め切りは1月17日(火)。どうぞふるってご応募ください。応募方法は以下をチェック!

★メールでの応募方法
件名に「Mikikiビラル公演招待希望」、本文に(1)お名前(ふりがな含む)(2)お電話番号(3)メールアドレスをご記入の上、下記のアドレスまでお送りください。

mikiki@tower.co.jp

当選者には、ご記入いただいたメールアドレスへ当選通知メールを送信いたします。
※応募情報が未記入の場合は無効とさせて頂きます。
 

 

★Twitterでの応募方法
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当選者にはDMにてご連絡させて頂き、上記必要事項の確認をさせて頂きます。
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