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ブクガとサクライケンタの蒼い世界

 プロデューサーのサクライケンタとコショージメグミが出会って2014年に結成されたMaison book girl。当時のサクライはいずこねこのプロジェクトを終了する頃であり、変拍子を多用した現代音楽マナーのポップスを作るという彼の試みは、そのままブクガに託されることとなった。初の全国流通盤となる初作『bath room』(2015年)はそんなデリケートな揺れを反映したもので(だから新作の“opening”には驚いた!)、いずこねこの代表曲“rainy irony”を思わせる“snow irony”をはじめ、部屋など空間への美意識、歌詞の世界観を継承しつつ、ブクガはそんな部分も固有のノスタルジーへと転換し、コショージの朗読でも個性を確立していく。翌2016年にはEP『summer continue』を経て『river』でメジャー入りするも、リード曲“cloudy irony”はアルバム未収録なので注意が必要だ。

 そんなサクライの才を高く買ったのが大森靖子で、いくつかの自曲で彼に編曲を委ねたほか、ライヴ・バンドの一員としても起用。ずんね from JC-WCの“14才のおしえて”や吉川友の“歯をくいしばれっっ!”といった大森の提供曲でアレンジを担当することも多い。それ以外のサクライ仕事では、少女グループであるクマリデパートの制作や、振付師のミキティー本物(ブクガの振付けもすべて担当)率いる二丁ハロへの楽曲提供も忘れちゃいけない。また、サクライと共作歴もあるラッパー・GOMESSの『情景 -後篇-』にコショージが客演するなど、ファミリー的な繋がりにも注目しておきたい。 *出嶌孝次