終わりが始まって、始まりが終わる。窓は開いている。扉はいま開いた。錆びた鉄の色とフィルムの青、夏、朝、水、夢、工場、カーテン、風景、猫、罪──部屋の中をイメージで満たして、それからどうする?
〈隙間〉も美学とするサウンド、現代音楽やクラシックに由来する弦や体鳴楽器の響き、文芸的な歌詞など独特の個性を楽曲から放ちながら、アイドルとしてのチャームもバッチリと備えた〈ニュー・エイジ・ポップ・ユニット〉、Maison book girl(通称:ブクガ)。昨年11月にメジャー・デビューを果たした彼女たちが、このたびニュー・アルバム『image』を完成させた。確立してきた〈ブクガらしさ〉をさらに深めたこの作品には、10分以上にも及ぶインスト曲やポエトリー・リーディングを含む11曲を収録。お馴染みの人も初めての人も、ブクガの世界にどっぷりと浸れるこの50分間に、さあ、イメージの扉を開けてみて!
──『bath room』から1年半ぶりのアルバムですが、ブクガのサウンドは聴いてそれとわかる個性がすでにあるので、どう新しさを出してくるのかな?と。
井上唯「確かにそうですね」
──事前にプロデューサーのサクライケンタさんと話し合ったり?
矢川葵「サクライさんが曲を作って詞を書いて、完成した状態で私たちの手元に届くので、それ以前での話し合いっていうのは全然ないんです」
コショージメグミ「でも、前に〈ほぼインストの曲みたいなのがあったら良くないですか?〉っていうのをサクライさんに話したら、サクライさんも〈そういうのやりたいと思ってた〉みたいなことを言ってて。今回、サクライさんがやりたいと思ってることのひとつが着実に形になってるのかなって思います」
──6曲目の“int”ですよね。その他の曲も含めて、レコーディング前に新曲を聴いたときの印象はどんな感じでした?
和田輪「“townscape”はすごく難解だと思って、なかなかしっくり来なかったので、ずっと繰り返し聴いてたんです。そしたら今度は頭から離れなくなっちゃって。この曲に限らず、一回しっくり来たら耳から離れないというか、じわじわ系の曲が多いかなって思いました」
井上「去年のシングル『river』は、メジャー1発目ということもあってわかりやすさを重視したところがあると思うんですけど、やっぱりアルバムは深い部分というか、ブクガにもっと深く斬り込んだ曲が多いのかなって」
──多くの曲がまとまることによって、歌詞の世界からも独特の寂寥感みたいなものが際立ちますね。どう解釈しながら歌っているんでしょう。
井上「ストーリー性がないから覚えにくかったりもして」
和田「そう、具体的に何が起こったとかじゃなくて、心情的な部分にフォーカスしたものなので、そこはメンバー個々の感じ方で補うしかなくて」
コショージ「それぞれが感じたままで表現していて。例えば、寂しい曲を歌いながら誰かひとりがすごく笑ってたとするじゃないですか。それもその曲の表現というか、悲しすぎて笑っちゃうことがあるように、表現のひとつとしてそれもアリで」
和田「いろんな受け取り方があってもいいんじゃないかっていう」
──そういうところが歌の生命力、血の通った感覚に繋がっているとも言えそうですね。アルバムのタイトルにもかかっている話ですし。
矢川「サクライさんも言ってました。私たちが曲を受け取ったときに、タイトル通り〈イメージ〉してくださいって」
井上「うまいこと言ってきたよね(笑)」
コショージ「1曲目の“ending”の最後にドアの開く音が入っていて、だけど、開けた人が外へ出ていくのか、中に入って来るのかっていうのは、聴く人の感じ方次第なんですよ。その時の気分によっても感覚が変わるかもしれないし。最初が“ending”、最後の曲が“opening”っていうところも含め、アルバム全体を通してイメージで楽しむものかなって思いました」
──なかでもこれは新鮮だなって思えた感覚はありました?
矢川「いままでのシングルやアルバムは、わたしのなかでなんとなく〈家の中〉のイメージだったんですけど、このアルバムには外を歩いてるイメージの曲もあって。すごく天気がいい日に歩いてるというより、夜道を散歩してるイメージで」
コショージ「あっ、逆に私は天気のいい日だった。帰り道というより、これからどこかへ出かけるときに聴きたいなっていう感覚で。外は外でも受け手によってイメージが違うのはおもしろい」
──歌詞から興味を持つ人もいそうです。
和田「そう言われれば、ステージをじっと見つめる文系っぽい人が増えてきたかも。前はワーッと沸いたりする人のほうが明らかに多かったけど」
井上「見つめる系の人たちは、いままで現場にあまり来たことがなかった人たちなのかな」
和田「そうかも」
井上「ということは、聴いてくれる人の幅が広がったっていうこと……ですかね?」
──そうでしょう。さて、アルバムを引っ提げてのツアーも始まります。
コショージ「とにかくライヴのパフォーマンスを上げて」
井上「いまに始まったわけではないんですけど、そこに尽きると思います」
──ライヴの質を高めるために、なにか具体的にしていることは?
コショージ「いろんなライヴを観るようにしてますね。プロすぎる人だと参考にならないので、ダンスのレヴェルとかも私たちと近いような人たちを観て、自分たちのライヴに反映させたり」
和田「私は、自分たちの音源をよく聴くようにしてます。よーく聴かないと気づかないようなリズムとか音が入ってたりするので、それを踊ったり歌ったりした人が自覚していれば、観てる人にも気付いてもらえるかなって」
──なるほど! では、我々もまずは心してアルバムを楽しみたいと思います!
BD+CDシングル「Solitude HOTEL 2F + faithlessness」(徳間ジャパン)