誰が呼んだか〈God's Favorite Band〉――グリーン・デイはなぜここまで愛されるのか?

GREEN DAY Greatest Hits: God's Favorite Band Reprise/ワーナー(2017)

 昨年10月のアルバム『Revolution Radio』で見事全米1位に返り咲き、その国民的バンドとしての威信を知らしめたグリーン・デイ。大統領選挙のタイミングという時勢に合致した部分も当然あるとして、混迷の状況下で彼らが多くのリスナーの支持を勝ち得たということは、逆に言うとこのバンドの歌うべきことがまだあるという事実の証明でもあったのかもしれない。もちろん、彼らの人気は米国のみならず全世界に渡るもので、ワールドワイドでのアルバム・セールスは7,500万枚以上を誇る。そして、そんな大衆の、世界のフェイヴァリット・バンドが新たなベスト盤『Greatest Hits: God's Favorite Band』をリリースした……。

 ビリー・ジョー・アームストロング(ヴォーカル/ギター)、マイク・ダーント(ベース)、トレ・クール(ドラムス)から成るグリーン・デイは、カリフォルニア州バークレーはギルマン・ストリート発祥のパンク・ロック・バンド。86年に結成され、インディー・レーベルのルックアウト!からEPやアルバムなど数作をリリースした後、リプリーズとメジャー契約を結ぶ。94年のファースト・シングル“Longview”がUSオルタナ・チャートで首位を奪ったのに続き、ロブ・カヴァロがプロデュースにあたったメジャーでの初作『Dookie』は大ヒットを記録。全米2位まで浮上した勢いは世界に飛び火し、最終的にワールドワイドで2,000万枚以上のセールスを上げて彼らを一気にブレイクさせることとなった。グランジ・ブームが収束した後のロック・シーンにあって、彼らの存在がパンクを一気にメインストリームの音へと押し上げたのは言うまでもない。

 それに続く『Insomniac』(95年)、『Nimrod』(97年)も引き続きヒットを記録。その間の96年には初来日を敢行(この時オープニング・アクトを務めたHi-STANDARDが昨年10月にサプライズ・リリースで話題を呼んだのも素敵な偶然だった!)し、日本でも単独公演や大型フェスのヘッドライナーなどを次々に経験していくことになる。こうした長きに渡る関係の深さが、現在にまで至る日本での絶大なグリーン・デイ人気を着実に積み上げてきたのは間違いないだろう。本国では2000年代最初のアルバム『Warning』まで緩やかに勢いを失っていったように見えたが、その頃はバンドの側でもパンクのレッテルを嫌って試行錯誤を繰り返していた時期だったとかもしれない。

 そんな状況を引っくり返したのが、2000年代のアメリカン・ロックを代表する名盤と評される2004年の『American Idiot』だ。〈9.11〉からのイラク戦争を受けて空気を変えていった時代の気分も吸収したかのようなこの名作で、彼らは初の全米チャート首位を獲得。ロック・オペラ作品として高い評価を受ける一方、シンプルでキャッチーな表題曲などで原点回帰的なパワーも表現した本作は、グリーン・デイの存在を一回り大きなピープルズ・バンドへと押し上げたのだった。

 膨れ上がった期待を受け、2009年にはコンセプチュアルな『21st Century Breakdown』でまたまた全米1位を獲得。ただ、2012年の3部作をリリースした後は、約4年の活動休止を選んでいる(その間の2015年には〈ロックの殿堂〉入りも果たした)。そこからの復活作こそ、冒頭で触れたセルフ・プロデュース作品『Revolution Radio』だったのだ。このようにして、シンプルにしてキャッチーな多くの耳を惹き付けるサウンドは世代や国境を越えて世界中のパンク~メロコア・バンドたちに影響を与え、楽曲そのものの親しみやすさはそれ以上の広いフィールドへ彼らのナンバーを届けることになったのである。

 そんな現代アメリカを代表する〈神様のお気に入りバンド〉のオールタイム・ベストだからして、『Greatest Hits: God's Favorite Band』が問答無用なのは言うまでもない。30年の歴史から厳選された20曲に加え、“Ordinary World”は新たにミランダ・ランバートとデュエットしたヴァージョンで収録、さらには完全な新曲“Back In The U.S.A.”も用意されている。入門編としてはもちろん、これは面倒な日々を過ごす多くの人がシンプルにもう一度燃えるための起爆剤となるはずだ。必聴!

 

グリーン・デイの作品。