シャムキャッツが本日12月13日(水)0時、予告なしで新曲“このままがいいね”を発表した。同楽曲は、Apple MusicとSpotifyでの配信と、iTunes storeでのダウンロード販売となっており、現在のところパッケージでのリリースは未定。最新アルバム『Friends Again』(2017年)の作風ともまた異なり、バンドが新たな表情を見せている同曲について、Mikiki編集部の天野龍太郎と田中亮太がレヴューした。

シャムキャッツ このままがいいね TETRA(2017)

 

 

日常のなかから永遠の一瞬を掬い上げること

焼尽した少女
彼女がつくった計画から
彼女の願望を知っていた
君の輝きのなかにぼくを沈めてよ
そう約束した
これがそうなんだ
たったひとつの
そう、まさにこれが
ああ、そうだ、これこそが
彼女が、ぼくがずっと待ち望んでいたもの

ストーン・ローゼス “This Is The One”

シャムキャッツの新曲、“このままがいいね”を聴いて、ストーン・ローゼズの “This Is The One”をふと思い出した。シンプルなラヴソングの前者と、破滅願望に満ちた後者。対照的とも言えるが、その陶酔の感覚はどこか似通っている。もっと同時代的な音楽で言えば、リアル・エステイトの奇妙な質感を持つ緻密なアンサンブルやウォー・オン・ドラッグスの反復するモトリックなビートも “このままがいいね”とは無関係じゃないはず。いずれのバンドも、サイケデリアを現代的に再定義することの答えとなるサウンドを探っている。

でも、シャムキャッツの音楽がサイケデリックな、現実逃避的なものではないことは、あの素晴らしい“マイガール”や『Friends Again』を聴いたあなたは知っているはずだ。シャムキャッツは日常や現実に寄り添うような音楽をやろうとしているし、それについて歌おうとしている。“このままがいいね”のコーラスで夏目知幸は歌う。〈このままずっと/二人でずっと/一緒にいれたらいいね〉。その陶酔を、次のヴァースの〈繰り返すいつもの日曜〉というフレーズで断ち切ってみせ、〈止まらないキスで埋めようよ〉と続ける。その〈キス〉とは、よどみなく続く日常のなかから永遠を感じさせる一瞬を掬い上げる行為だ。“このままがいいね”には〈このままではいられない〉という影が差し込んでいる。だからこそかけがえなく響くのだろう。

世界の終わりを待ち望んだり、なにかを〈取り戻そう〉〈再び偉大にしよう〉と息巻いたりするのでもない。音楽の世界では特に忌み嫌われる停滞や保守を想起させるような〈このままがいい〉というフレーズを、シャムキャッツはあえて挑戦的に歌っている。 *天野龍太郎