音楽愛好家の為のゲーム音楽への誘い、Hyperdubが贈る至高のコンピ!

 〈電子音楽〉、と一口に言ってもその姿は様々にして歴史は極めて深い。19世紀末に電子楽器が産声を上げたことから始まり、その萌芽は1940-50年代に現代音楽のフィールドで芽吹き、60年代にはシンセサイザーが生まれ商業音楽の世界にも入り込んでいく。そこからは様々なフィールドでコンピュータが入り込み多種多様な進化を指数関数的に促してきたわけだが、その中でもとりわけ異質ながらも彩やかな発展を遂げた音がある。〈ゲーム音楽〉だ。

VARIOUS ARTISTS 『Diggin In The Carts』 Hyperdub/BEAT(2017)

 2017年11月17日に開催されたゲーム音楽だらけの祭典、ライヴイヴェント〈DIGGIN’ IN THE CARTS 電子遊戯音楽祭〉。それに際し製作されたのが本盤『DIGGIN IN THE CARTS』。34曲もの楽曲を収録した、ゲーム音楽の歴史を振り返るに相応しい内容のコンピレーションアルバムだ。

 〈ゲーム〉音楽と呼ばれるくらいなのだから〈テレビゲーム〉という要素・側面の存在は看過できないが単に〈音楽として〉もただならぬ魅力を秘めているのもまた事実。にも関わらず〈音楽作品〉としてゲーム音楽が振り返られることは残念ながらあまりなかった。ゲーム音楽史/ゲーム史研究家、hally曰く〈ゲーム音楽に批評が存在しないから〉であり、それはつまり音楽ファンにとってのガイドが存在しないことを意味する。だからこそ本盤に存在意義がある。エレクトロ・ミュージックシーン隆盛に大きく貢献してきたHyperdubレーベルが研究に研究を重ね監修した珠玉の楽曲群。コナミ矩形波倶楽部“グラディウス2”や細井聡司“The麻雀・闘牌伝”など優れた名曲が詰まった、ゲーム音楽鑑賞の道標。

 1984年に細野晴臣『VIDEO GAME MUSIC』が発表され全世界に衝撃を与えたが、本盤は現代のそれである。往年の名機のピープ音によって編まれた電子音楽の歴史、その深みと味わいを堪能できること間違いない。