いろんな面を見てほしい

――横アリの後にサプライズで出た“NON TiE-UP”はいつから考えてたんですか?

「今年の1月1日ですね。DISH//がやった武道館公演の一部を僕と松隈ケンタでプロデュースさせてもらって、そのリハーサル後の待ち時間かな? 楽屋でゴハン食べながら松隈と喋ってた時に、その時点で決まってたのがタイアップばっかりだったので、〈逆タイアップとかないのかな?〉って笑いながら話してたんすけど。そこから〈キレイな言葉で〉とかいう制約のない曲を無料でもいいからやろうよってことになり、その日のうちにavexのディレクター陣に連絡したら〈いったん持ち帰らせてくれ〉って言われたんですけど(笑)」

――それでも押し切ったわけですね。

「やっぱりWACKって別に大手の事務所じゃないし、BiSHも別にキレイな子たちを集めて作ったグループではないし、欠点だらけでもいいし……っていうところを伝えたいわけですけど、そこが掻き消されていくとBiSHの寿命も縮まっちゃう気がして。松隈も僕も、もちろん曲自体はどれも自信を持って出してるから、もっといろんな面を見てほしいと思ったし、受け入れられなくてもいいから出してみようと。結果的にゲリラでやらせてもらって、みんな話題にしてくれたから良かったなと思って」

――そうやって人を動かして祭りにするというので言うと、渋谷109の謝罪広告と〈謝罪本〉の配布もありました。

「おもしろかったでしょ(笑)? あれで別に何かが許されるわけじゃないんですけど、もう30人以上メンバーがいて、誰が何を間違えるか、Twitterとかで何を言っちゃうかわかんないんで、先に謝っちゃおうっていう。最初は街頭広告出してあとはウェブでみたいな話だったんですけど、やっぱ手元に残るモノがあったほうがいいなと思って。CDショップで配布してもらいつつ、渋谷ではメンバーがゲリラで配ってたらおもしろいかな~みたいな(笑)。ただ、この規模になると、もともとグレー上等なスタイルだったはずが、それもやりづらい息苦しさはあるというか。だから最近のイケイケなアイドル運営の子たちが羨ましいというか、りな(苺りなはむ。元BiS結成メンバーのヨコヤマリナ)のCY8ERとか、がんばってほしいなって」

――CY8ERは何かコスッてて良いですね。

「そうっすよね、〈俺もこんなことばっかやってたな~〉って(笑)。りながいま僕がBiS始めたぐらいの時と同い年ぐらいなのかな。それを思うと、アイツはちゃんと考えて這い上がってきたな、と。逆にプー・ルイやカミヤサキ(GANG PARADE)には〈そろそろBiS解散した時の俺ぐらいの年齢だぞ〉って話はするんですけど。〈俺、もうちょっとやってたよね?〉って(笑)」

――そのプー・ルイさんですが、国技館のドキュメンタリー観てると、渡辺さんが普通に無念そうでおもしろかったです。

「そうっすね(笑)。お互い様なんですけど、やっぱりあの時のパッションを求めちゃうんで、そこがどうしてもできなくなったのがデカいし、しかもそれをお互い喋りながら納得しちゃうっていうか、〈まあ、あん時には戻れないよね〉みたいな……」

――どこのカップルだよっていう(笑)

「ホントに(笑)。でも、彼女はそれぐらいの存在だし、BiSHに歌わせた“FOR HiM”こそがすべてなので。ずっと色褪せない初恋の人みたいな感覚ですよ。……気持ち悪いっすけど(笑)」

――原稿チェックで削らないですよ(笑)。で、BiSのチーム分けと〈BiS.LEAGUE〉がそこから始まって。最初のBiS1stはライヴが本当に良かったですね。

「僕も何となく分けたんですけど、最初の1stはゴ・ジーラのおかげかな。ライヴもスゲエ良かったっすね。ホントは、ももらんどもいたんですけどね~」

――けっこうな衝撃でした。

「ももらんど、僕はホントに凄い好きだったんで、〈マジか……〉って。もちろん単純にお客さんを置いて帰っちゃうのが許される世界ではないんですけど、本人も相当な覚悟だったんだろうなというか」

――ただ、少なくとも続けた人しか成功できないのは確かでしょうし。「SHAPE OF LOVE」でチッチさんが昔の沖縄の話をされてるのにも繋がりますけど。

「ねえ。あん時は本気で俺も辞めちまえって思ってましたもん(笑)。もしかしたらチッチも逃げようとしたかもしれないんですけど、辞めなくて良かったねというか、あそこで踏み止まったから現在があるっていうのもおもしろいところだし」

BiS1st

――ただ、BiS1stに関しては、4人になったことで謎の良さが生まれた気はします。

「そうっすね。今回〈BiS.LEAGUE〉をやって凄くピリッとはしたし、彼女たちも何をやってるのかわかったと思うんで、ひとまずもう1回は続行してみて。その後はどうするかわかんないですけどね。まあ、いまはBiSがいちばんお客さんを意識できてないっていうか、最終結果発表の時のスピーチとかも〈自分が、自分が〉みたいな感じになってて、投票してくれた人たちが何を聞きたいのか誰も考えられてないんじゃないかな? その意味だと、やっぱゴ・ジーラが1位だったのは順当というか、単純にTwitter追ってるだけでも、彼女の言動と効果はおもしろかったですよね」

――ゴ・ジーラさんがBiS1st、ムロさんが2ndのキャプテンになったのは?

「ムロはスピーチがいちばん良かったのもあるけど、たぶん役割を与えないと成長しないタイプかなって。頭がいいから抜きどころをわかっちゃう奴なんだけど、そういうことじゃないぞっていう。ゴ・ジーラはやっぱプー・ルイがいた頃とは比べものにならないくらい責任感が出てきたので。かなり悩んではいますけどね。彼女は冷めた言い方しながらも人のことを諦めてないんで、そこをどう吹っ切るかなって気はします。まあ、〈BiS.LEAGUE〉は去年の〈WACK総選挙〉より全然楽しかったっすね。あれはあんまり意味もなかったかな(笑)」

――いやいや、その意味は9月にリリースされるじゃないですか(笑)。

「そうでした(笑)。チッチとアイナのソロがようやく出ますね。あとユイ・ガ・ドクソンのソロも楽しかったですね」