インタビュー

トロイ・シヴァン『Bloom』 アリアナ・グランデのゲスト参加も話題のこの2作目で、若き才能が美しく花開く

トロイ・シヴァン『Bloom』 アリアナ・グランデのゲスト参加も話題のこの2作目で、若き才能が美しく花開く

 それは2年前の〈フジロック〉でのこと。初来日公演を終えたばかりのトロイ・シヴァンが会場をぶらぶらしているところに偶然出くわした。あきらかにスペシャルな輝きを纏っていながら、彼が何者なのか気付いて呼び止める人はごくわずかだったと記憶している。まあ、それも無理はない。トロイの傑作ファースト・アルバム『Blue Neighbourhood』は日本盤化されておらず、まだ名前も顔もさほど知られていなかったのだから。

TROYE SIVAN Bloom Capitol/ユニバーサル(2018)

 しかしこのような状況もセカンド・アルバム『Bloom』の登場で一変するだろう。変わらなければならないと思う。南アフリカ出身、2歳の時にオーストラリアへ移り住んでパースを故郷と呼ぶトロイは、現在LAを拠点に活動している23歳。まずは俳優/YouTuberとして知名度を上げるが、12歳にして自主制作のEP『Dare To Dream』を発表した彼が幼少期から何よりも愛していたのは音楽であり、長年シンガー・ソングライターを志していたとか。

 そして2015年に満を持して『Blue Neighbourhood』をリリース。オルタナティヴR&Bに通じるプロダクション、年齢に似合わぬ憂いを含んだセンシュアルな歌声、実体験をもとに郊外で暮らす少年の日常を赤裸々に描いた歌詞。すべてが淡いブルーに包まれているかのような同作は世界中で大ヒットし、地元オーストラリアの〈ARIAミュージック・アワード〉では7部門の候補に挙がったものだ。

 そんなトロイが注目を集めた理由は、音楽的才能のみならず、自身のセクシャリティーに関するオープンな姿勢にもあった。17歳の時にカムアウトした彼はデビュー当時から同性に宛てて愛を語り、性的少数者の主張を込めてMVを製作。一種のスポークスマンとして多くの若者をインスパイアしてきたが、自身も人々の反応から大いに刺激を受けたという。

 「僕は毎日のようにいろんな人と出会う。僕の音楽を聴いて辛い時期を乗り切ったと言ってくれる人、人生体験を話してくれる人……そういう人々と接することで本当に興奮させられるし、もっと努力をし続けなければと駆り立てられる。そして、自分がやっていることは間違っていないとわかるんだ」。

 それゆえに、前作で青春の痛みをドキュメントしたトロイはここへきてモードを切り替え、さらに挑発的で解放感を漲らせた楽曲の数々を完成させた。『Bloom』の主題は成長することであり、成長して愛を知ること――早い話が〈ラヴ〉だね」と彼が話す通りに。

 「そしてその延長で人間として自分を確立することや、自信を持つことについて歌っていて、ひとりの青年として世界のなかに居場所を探す僕を描写しているのさ。僕は曲作りのインスピレーションになる体験を数え切れないほど重ねてきた。だから新しいことを試す準備が整っていたし、本当に興奮していたんだよ」。

 実際、サウンドも塗り替えられている。フィル・コリンズからケイト・ブッシュまで80年代に活躍したミュージシャンの名前を幅広く影響源に挙げ、当時のメインストリームな音楽のキッチュさ、あるいはよりオルタナティヴなポスト・パンク系アーティストの美意識の高さを、独自の解釈でコンテンポラリーなポップに消化。前作よりも圧倒的に軽やかで、ダンサブルでセクシーに仕上がっており、時の人アリアナ・グランデの参加を得た“Dance To This”などはその好例だ。そして、トロイが「喜びに溢れている」と総括するそんな間口の広いサウンドを背景に、彼はラヴがもたらした歓喜、自分に与えたインパクト、愛するがこその葛藤を仔細に歌って聴き手と分かち合っている。

 「僕はただ正直な作品を作りたかったんだ。正直に曲を書けば、みんながそれぞれ自分の体験に重ねて感情移入できるはず。だから、このアルバムを聴きながら踊ってほしいし、聴きながら恋に落ちてほしい。みんなのさまざまな人生体験のサウンドトラックになったら嬉しいよ」。

 ちなみに〈Bloom〉とは〈花が開く〉を意味する言葉。「人生において僕がいま立っている場所を総括していて、僕が日々体験していることを表すのにぴったりだからタイトルに選んだ」との本人の説明は聞くまでもないか。まさに咲き誇る花のようなトロイ、次に日本に来る時には揉みくちゃにされたとしても仕方はない。

 


トロイ・シヴァン
95年6月3日生まれ、南アフリカ出身/オーストラリア育ちのシンガー・ソングライター。2006年にTVのオーディション番組「Australian Idol」へ出演し、翌年6月にファーストEP『Dare To Dream』を自主リリース。YouTubeへカヴァー動画を投稿しながら、並行して子役俳優としての活動をスタートさせ、2008年には「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」に出演する。2014年8月に通算3枚目のEP『TRXYE』でメジャー・デビューし、翌年12月に初のフル・アルバム『Blue Neighbourhood』を発表。ゼッド“Papercut”やマーティン・ギャリックス“There For You”への客演で知名度を上げるなか、8月31日にセカンド・アルバム『Bloom』(Capitol/ユニバーサル)をリリースする。

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