未完成な6人の現在進行形を感情豊かに響かせた、高らかなる帝国のシンフォニー
自分たちで作り上げてる感
去る5月1日にマイナビBLITZ赤坂で初ワンマン〈THE EMPiRE STRiKES START!!〉を行い、オリジナル5名での11曲+新メンバーお披露目となる新体制6名での11曲という2部構成でパフォーマンスを披露したEMPiRE。7月からは6人で全国6都市を回る〈EMPiRE NEXT EDiTiON TOUR〉も始まり、ソールドアウト続きの堅調な足取りを見せています。まだ数か月で飛躍的な進化を遂げつつある彼女たちに話を訊いてみました(MiDORiKO EMPiREは欠席)。
MAYU EMPiRE「5月1日はメンバー編成が変わるっていう状況もあって、心の中が凄い混沌としてたんですよ。いまは6人になって、それぞれ考えられるようになったり、互いを見られるようになって、6人の空気感とかもわかるようになりました」
YU-Ki EMPiRE「グループとしての在り方がわかってきた感じですかね。前は〈私が、私が〉っていうところもあったんですけど、みんなで新メンバーをサポートしようっていう気持ちが芽生えたところから、気持ちがひとつになりはじめたかなって思いました」
MAYU「みんなちょっとずつ大人になったのかな(笑)? 集団でやるということが何となく板に付いてきたっていう感じです」
——新メンバーの2人ももう馴染んでるようですね。
MAHO EMPiRE「傍から見てた印象では、EMPiREって何かプライドが高そうというか(笑)、可愛い女の子が集まるとギスギスしてそうでキツいなって思ってたんですけど、入ってみたら全然そうじゃなかった」
MiKiNA EMPiRE「私もカースト上位っていうイメージしかなくて、最初は怖かった(笑)。でも、みんな放っとかないでくれるし、絶対気にかけてくれるし、仲は良いと思います」
MAYU「何だろうな、MAHOさんはしっかりしてて、みんなに気を遣える優しい人です。最近はYU-Kiさんにイジられてちょっと変なところも出てきてますけど」
YUKA EMPiRE「YU-Kiは偏差値の低いことばかりしてて、私たちはもう右から左へと流すんですけど、MAHOさんは優しさなのか本質なのかわかんないけど一緒に遊んでるので、もっと凄い真面目な感じかと思ったら、そういうネジの外れた面もあるのかな?って。MiKiNAさんは顔立ちとかもキリッとしてるので、最初はツンとしてる印象だったんですけど、わりとアホでしたね(笑)。天然って言うの?」
MAYU「なんかドジだよね。迷子になるとか(笑)」
YUKA「だから、2人とも最初の印象と違うんですよ。そういう意外な面があったのはどっちも愛すべきポイントで、凄く好きな部分です」
——実際にツアーを回っててどうですか。
MAYU「ライヴ後にスタッフさんからいただくアドヴァイスがどんどん深く難しくなっているので、そこは〈ああ、何か成長できてはいるのかな?〉って思える部分です。前はもう〈全力を出せ〉みたいな話だったのが、それはもう大前提なので」
MAHO「そうですね、最初はホントにすべて〈初めてだから〉〈初めてにしては、まあ良くできてるね〉みたいな甘めの評価をもらえてたんですけど、やっぱ回を重ねていくと〈ちょっとここが雑だね〉とか、ちゃんと一曲一曲を見られるようになって」
MiKiNA「ファイナルに向かって、メンバー全体の意識がEMPiREだけに集中してるのを凄い感じてます。みんなどんどん変わっていってるんですよ。そのなかで私も自分と向き合わなきゃいけない意識が強まってきて、昔からけっこう諦めちゃうことが多かったんですけど、いまはプレッシャーも凄いけど前向きになれてます」
YUKA「それまでワンマンを1回しかやったことがなかったわけじゃないですか? しかもそのワンマンはいろんなストーリーが生まれる大事な日でもあったので、こわばってた部分もあったけど、ツアーは単純に楽しいっていうのが感想としてあります。お客さん全員が自分たちだけを観に来てくれてるから、ちょっと自信を持てる部分もあって。まあ、パフォーマンスに遠慮がいるステージなんて別にないとは思うけど……出演者がたくさんいるフェスとかに比べて〈全員、オレたちのことを観てるんだ〉って気持ちになれるし、好き勝手に暴れられたり、初めて長めの自由なMCがあったりするので、ちょっと個性を出してみたりもしてて。自分たちで作り上げてる感が少しずつ出てきました」
ツアー・ファイナルは序章で助走
そんな好調を踏まえて完成した新作が『EMPiRE originals』。MVも公開済みの表題曲を筆頭に、松隈ケンタ率いるSCRAMBLES軍団が初作とはまた違うテイストのナンバーを用意し、力の入った5曲入りのミニ・アルバムになっています。
MAYU「前のアルバムは、松隈さんが個々のことをよく知る前に作られた曲たちだったんですけど、今回は私たちと関わって、人柄とかをわかったうえで作ってくださった曲なので、何か凄いEMPiREっぽいです」
YU-Ki「“EMPiRE originals”は初めて曲を聴いた時にみんなで話して一致した感想が、最初に出した“EMPiRE is COMiNG”の第2章っていうか続編みたいな感じの歌だねっていうことで。〈未完成〉っていう楽曲のテーマに合わせてBiSHのアイナ(・ジ・エンド)さんが振付けを手掛けてくださって、これから完成していくための勢いをつける曲になったと思います」
——〈未完成〉なので、衣装も穴が開いたり欠けたみたいな模様なんですね。
MAYU「そうです。MVも身体の一部しか見えてないとか、そういう作りになってて。で、歌詞も〈満ち足りない、でも必死の未来を〉っていう感じなんで、EMPiREはまだ完成してないけど、これからやっていくぞ!っていう」
YU-Ki「6人での再スタートに相応しい曲」
——幕開け感がありますね。続く“S.O.S”はもうツアーで披露されていて。
MiKiNA「はい。お客さんからは〈凄い爽やかだね〉とか言ってもらえます。歌詞は〈何回かやり直して 僕は何してんのかな...〉って苦しんでるんですけど、曲自体は凄いポップで明るい元気の出る曲。振り付けにソロ・ダンスとか2人組のペア・ダンスが入ってて、ライヴの観どころになってます」
MAYU「ね、楽しい。ダンスがちょっと可愛いんだよね。確かに歌詞は前向きではないけど、爽やかなメロディーに乗ることでスッと入ってくる」
——他の3曲はメンバー作詞になります。まず“Dope”はMAYUさん担当で。
MAYU「はい。これはデモを聴いてインドっぽいなと思って」
YUKA「シタールが使われてるので」
MAYU「そうそう、で、インドといえば暑そうだし、そこから砂漠を連想して、魔法のランプとかファンタジーな感じで書いてるんですけど、砂漠ってめちゃ乾いてるじゃないですか? それを人間の感情の乾きということにして、砂漠で喉が渇いて、もう魔法を使ってでも水が飲みたいっていう気持ちを、現実的にした結果……こうなりました」
——魔法というか、違法な(笑)。
MAYU「イメージですよ」
YUKA「じゃなかったらヤバイだろ」
——クセのある歌い方も、いままでのEMPiREになかったヘンテコな感じですね。
YU-Ki「アゴしゃくれて歌ってたよね」
MAYU「そうだ。レコーディングは私が最初に歌うことが多いんですけど、普通に歌ったら松隈さんが〈何かつまんないからアゴをしゃくれさせて歌ってみて〉って」
MAHO「たぶん、私とMAYUちゃんがしゃくれた感じ。実験的な感じです」
——はい、一方でMAHOさん作詞の“SO i YA”は“Buttocks beat! beat!”系の威勢のいい曲です。
MAHO「まず音源を聴いた時から〈これは絶対ライヴ曲だな〉って思って、みんなで盛り上がる歌詞にしたいなっていうのが1つあって。それと、この春に合格したばかりの私が書いて、届く内容がいいなって思ったので、〈夢〉をテーマにしました。あとは、ちょっとEMPiREのことを思って書いた歌詞でもあって……先輩たちと比べられたりしてどこに向かえばいいかわかんない感じもあるけど、〈でも、そんなの相手にしないで行こう〉とか、メンバーに向けたメッセージみたいな部分もあります」
MAYU「この曲はDORiちゃんのシャウトがカッコイイよね」
MAHO「そうそう。“Buttocks beat! beat!”で〈五月雨かませ!〉って叫んでる系の感じで、お客さんも楽しいんじゃないかなって思います」
——そして、ラストが“Talk about”です。
YUKA「えっと、これはプロポーズしたいけど、なかなかできない人の歌です。作詞してた時期が個人的に学校のテストとかもあって忙しかったので現実逃避して完全妄想で書きました。こういう仕事をしてると、なかなか恋愛とは遠くなりがちじゃないですか? だから、あえて〈もう、結婚したい〉とか妄想して書いたっていうか。音源をもらった時に、凄いポップで可愛いと思って、とびきり可愛い歌詞を書いてみたら採用されて嬉しかったです」
——前作で作詞した“LiTTLE BOY”と“コノ世界ノ片隅デ”は暗い内容でしたね。
YUKA「そう、採用されたのが暗い曲だっただけで、暗い歌詞を書く人みたいになっちゃったんですけど、別にそういうわけではないよって言っておきたいです(笑)」
MAYU「あと、初回生産限定盤とMUSIC盤には『THE EMPiRE STRiKES START!!』の6人ヴァージョンが付くんですよ。それはミックスとマスタリングが違って、ちょっと5人ヴァージョンと違って聴こえる音作りなので、私的にはそこも注目して聴いてほしいなって思います」
——はい、本作のフラゲ日にはBLITZでのファイナルが控えてますけど、そこでまたこの先に向けての発表もありそうですね。
YUKA「まあ、ありそうですよね(笑)」
YU-Ki「え、何があるんですか?」
MAYU「何で訊くんだよ(笑)」
——(笑)まあ、そんなファイナルにどう向かっていきますでしょう。
YUKA「EMPiRE=初々しいみたいなイメージはまだあると思うし、前回のBLITZも新しい2人が入った初々しさを見守られてたと思うんですよ。今回のツアーを通して自信をつけてきたので、ファイナルは5月1日とは違って、私たちからその空間を呑み込めるぐらい圧倒したいです」
MiKiNA「今回の『EMPiRE originals』も凄い全曲好きだし、こういういままでにない新しさも自分たちのものにして表現していけたら……って思ってるんで、怠らず、がんばります」
MAHO「BLITZに立った時に今後のEMPiREを期待させるような出来になれてないと、そこから伸びれないかなって思ってるので、ファイナルはこの先の私たちがどう活躍できるかっていう、物差しみたいなものだと思ってます」
YU-Ki「1公演ずつで学んだことを全部ぶつけて、いまできる最高点を観せたいです。ツアーはファイナルだけど、EMPiREとしてはまだ序章、助走の段階なので」
MAYU「未完成なEMPiREに自分たちの色を付けていきたい気持ちなので、いまの6人を観てほしいですね」