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エラの音楽的な背景

 カリードやカマイヤがカメオ出演したMVも話題の“Boo'd Up”は〈恋仲になる〉といった内容の曲だが、そもそもこれはクリス・ブラウンのCBEと契約していた女性シンガー/ソングライターのジョエル・ジェイムズがジョニー・ギル“There U Go”(92年)を引用して2014年に作ったデモがオリジナルとされる。それがマスタードの手に渡り、ブラッシュアップされてエラの曲となった。コ・プロデューサーとしてランスことラーランス・ダプソン(LAの音楽集団1500 Or Nothin'に所属)が名を連ねているが、同曲のメロウなセンスは、ケンドリック・ラマーの“These Walls”(2015年)をテラス・マーティンと手掛け、ジャスティン・ティンバーレイク“Filthy”(2018年)を共作したランスの仕業でもあるのだろう。

 滲み出る90s R&Bのムードということでは、ダ・インターンズの片割れであるマルコス・パラシオスが制作に関与した“Own It”もそのひとつ。アディナ・ハワード feat. ジェイミー・フォックス“T Shirt And Panties”(98年)を引用したスロウ・ジャムで、ここではデスティニーズ・チャイルド“No,No,No”(97年)風のフレーズも歌ってみせる。また、マスタードが手掛けた“Shot Clock”ではジニュワイン“So Anxious”(99年)使いだったドレイク“Legend”(2015年)を引用。他にも、“Close”を作る前にトニ・ブラクストンを聴いていたというエピソードや、“Dangerous”をブライアン・マイケル・コックスが手掛けていることも含めて、アルバムではレイト90sのR&Bに親しんでいたエラの音楽的背景が浮き彫りにされる。