マリア・シュナイダーが挾間美帆プロデュース〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇〉に登場!
二人が語るコンサートへの意気込み

 ジャズ作曲家の挾間美帆がプロデュースする〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇〉、6回目となる2024年は、挾間が敬愛するジャズ作曲家・コンダクターのマリア・シュナイダーが主役だ。コンサートを前に、挾間美帆とマリア・シュナイダーに話を伺った。


 

――今年、ついにマリア・シュナイダーが〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇〉に登場します。これは大事件と言ってもいい、歴史的なことですね。

挾間美帆(以下挾間)「私は〈シンフォニック・ジャズ〉というものにとても魅了されていて、私の人生をかけてのミッションはオーケストラとジャズ音楽の架け橋になることだと思っているんです。なぜなら、マリアさんのような素晴らしい作曲家、他にもジム・マクニーリー、ヴィンス・メンドーサ、ギル・エヴァンスもたくさんの素晴らしい作品を残していますし、ガンサー・シュラー、ボブ・ブルックマイヤーなどが、シンフォニック・ジャズを書いたことを知っていましたから。でも、クラシックのオーケストラの方とお話しすると、みなさん『ジャズも演奏しますよ』というのですが、それはほとんどが“ラプソディー・イン・ブルー”だったりするんですね」

マリア・シュナイダー(以下マリア)「そうね」

挾間「でもそれは1924年に書かれた作品で、100年前の曲なんですよ。でもその他に素晴らしい作品はいっぱいあるのです。そうした作品を紹介するためにも、毎年夏に〈ネオ・シンフォニック・ジャズ〉というコンサートシリーズを始めました。私が毎年作品選びを担当し、ここ3年ほどは私自身が指揮をしてきました。今回のように特集する作曲家をお招きするのも初めてですし、その方ご自身が指揮をするというのも初めてです。プロデューサーとしてこれを実現させるのは、私にとっても非常に大きなことなんです。というのも、あなたは私の人生のヒーローと言ってもいい方ですし、ビッグバンドを演奏する若い世代にとっても、あなたはとても大きな、アイコン的な存在です」

マリア「お尋ねしてもいいかしら? それは私の音楽が、あなたや若い人たちが繋がって欲しいと望んでいた領域をつなぐ橋となったから?」

挾間「そうですね、日本にはクラシック音楽ファンもジャズ・ファンもたくさんいて、ビッグバンドで演奏する方たちはカウント・ベイシーやエリントンから演奏し始めるのですが、彼らはもっと新しいジャズも好きで、もっと難しいものを演奏したいと思ったり、上手になりたいと思っていたりするのです。そういう時にマリアさんの音楽がいつも一番に挙がってきます。マリアさんはご自分の音楽はパズルのようだとおっしゃいますけど、例えばバンドの中で自分の役割を理解して演奏しないといけない。そうでなければちゃんと響かないんです。それが、楽しいゲーム、といいますか……」

マリア「挑戦なのね。普通のビッグバンドの曲を演奏するよりももっと難しいチャレンジになりますね」

挾間「その通りです。そうしてみんなマリアさんの音楽にのめり込んでいく。そういう意味で私もそんな時間を過ごしてのめり込みました。だから私もいちマリア・シュナイダー音楽ファンとして育ったので、今回マリアさんをお招きするのが私にとっても大きなことなんです」

マリア「ありがとう。とても光栄です。嬉しい!」

――挾間さん、マリアさんの音楽を初めて聴いた時の印象は覚えていますか。

挾間「私が大学のビッグバンドで初めて演奏したマリアさんの曲は“Last Season”でした。はじめに感じたのは、なんと美しいメロディなんだろうということでした。そして、ピアノのイントロ。私はビッグバンドでピアノを演奏していたのですが、そのハーモニーがとても複雑で。どうしてこんなにも美しくありながら、同時に複雑でいられるんだろうと思いました。そこでアナリーゼして、ただただ驚きました。そのようにあなたの作ったパズルのアンサンブルの一部となって、そのことが私の作曲家としての価値観にとても大きな影響を与えています。そして今、私の曲を演奏する方には、私が目指していることを理解するにはスコアを見ないとわからないと言われています」

マリア「次の世代に、あなたがそうやって同じようにバトンを渡しているのね。興味深いと思わない?」

挾間「そうですね。私がちゃんとマリアさんからバトンを受け取っていれば、ですが……」

マリア「もちろん、もちろん。あなたも大勢の人に影響を与えるわよ。あなたも弦楽器を使って独自のことをやっているし。素晴らしいわ」

――そして、挾間さんがマリアさんの曲をオーケストラ用に編曲するのですね。

マリア「“Hang Gliding”と“Sanzenin”の編曲をやってくれるのだけど、彼女はオーケストラの音楽をかなり手掛けていて、私が考えたこともなかったようなチョイスをして、そこから私もたくさん勉強すると思うのでそれがとても楽しみです」

――挾間さんはマリアさんの曲を編曲するときに、どういう点に気をつけて書くのですか?

挾間「私が室内オーケストラ用に選んだマリアの曲は、ビッグバンドで演奏してもビッグバンドに聴こえない、まるで室内オーケストラのように聴こえる曲なんです」

マリア「ということは、室内オーケストラで演奏したら実はもっとよく聴こえるかもしれませんね。なぜなら、あの曲をビッグバンド用にするのは本当に大変だったから」

挾間「だから実はこれらの作品を、オーケストラ側からみたかったのです。もし、もっと違う楽器を使ったらどうなるだろうとか、どんな解釈になるだろうとか」

――今回のコンサートは3つの大きなパートからできていますね。

挾間「そうですね。池本茂貴さんたちのビッグバンドをマリアが指揮する部分、マリアのビッグバンドの曲をオーケストレーションする部分、そして歌が入ったマリアの大作“Carlos Drummond de Andrade Stories”と」

――マリアさんは今回のような、ご自分の音楽を異なる編成で見せるような大規模なコンサートの経験はあったのでしょうか?

マリア「同じコンサートでジャズ・バンドの音楽とオーケストラの音楽を演奏するというのは初めてです。そして私にとって、両方を指揮するというのがとてもユニークな挑戦になっています。なぜなら指揮をする上で求められるものがとても異なると思いますし、クラシック音楽のオーケストラの指揮はまだまだ学ぶことがたくさんあります。ですから、自分自身についてたくさん知ることにもなると思います」

――最後に、コンサートの観客の方に向けてのメッセージをお願いします。

マリア「私はとにかくコラボレーションが大好きです。このコンサートは本当にすごいコラボレーションですよね。美帆さんはとてもクリエイティブな方法とアイディアでコンサートをキュレートしてくれて、私が会うのが楽しみでワクワクするようなミュージシャンたちと一緒に仕事させてくれる。ある種の文化交流といってもいいわね。そして、美帆さん曰く、みんな私の音楽のファンでいてくれて、だから私も彼らのファンになれるようにみんなのことを知りたいと思っています。こういったことは全て私にとって意味があることなんです。だから観客の方々も、そういう特別なことが起きているということを感じると思います」

この対談に基づく村井氏の別記事がJaz.in 009号に掲載されます。そちらも要チェック!

 


挾間美帆(はざま・みほ)
2012年、『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』リリースによりジャズ作曲家として世界デビュー。2017年よりシエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンス、2019年からDRBB首席指揮者、2020年にはオランダのメトロポール・オーケストラ常任客演指揮者に就任。

 

MARIA SCHNEIDER(マリア・シュナイダー)
作編曲家・指揮者。1993年に自身が率いるジャズ・オーケストラを結成。ビッグバンド音楽の最先端を切り拓くスーパースター。2014年のデヴィッド・ボウイとのコラボレーションなどジャンルを跨いでグラミー賞を多数受賞している稀有な存在。

 


LIVE INFORMATION
NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇 マリア・シュナイダー plays マリア・シュナイダー

2024年7月27日 (土) 東京芸術劇場 コンサートホール
開場/開演:16:00/17:00

■曲目
作曲:マリア・シュナイダー
Carlos Drummond de Andrade Stories *日本初演
Hang Gliding(挾間美帆 編曲)
Dance You Monster to My Soft Song
Sky Blue ほか

出演:マリア・シュナイダー(指揮・作曲)/森谷真理(ソプラノ)

特別編成チェンバー・オーケストラ:斎藤和志、石田彩子(フルート)/最上峰行、大植圭太郎(オーボエ)/中ヒデヒト(クラリネット)/石川 晃、竹下未来菜(ファトット)/谷 あかね、豊田実加(ホルン)/東野匡訓、奥村 晶(トランペット)/佐藤浩一(ピアノ)/マレー飛鳥、矢野晴子、石井智大、梶谷裕子、岩井真美、黒木 薫、吉田 篤、沖増菜摘、地行美穂、西原史織、銘苅麻野、杉山由紀(ヴァイオリン)/吉田篤貴、志賀恵子、角谷奈緒子、藤原歌花(ヴィオラ)/多井智紀、島津由美、ロビン・デュプイ、稲本有彩(チェロ)/吉野弘志、一本茂樹(コントラバス)

池本茂貴isles(ラージ・アンサンブル):土井徳浩、デイビッド・ネグレテ、西口明宏、陸 悠、宮木謙介(サックス)/ジョー・モッター、広瀬未来、鈴木雄太郎、佐瀬悠輔(トランペット)/池本茂貴、高井天音、和田充弘、笹栗良太(トロンボーン)/海堀弘太(ピアノ)/小川晋平(ベース)/苗代尚寛(ギター)/小田桐和寛(ドラムス)/岡本健太(パーカッション)
※挾間美帆は出演いたしません

https://www.geigeki.jp/performance/concert292/