ピアスを墓標に突き刺して帝国は喪に服す。彼女たちを待つのは痛い未来なのか、あるいは……行間を読んでいただきたい6人ラストのインタヴュー!

筋書きのないドラマ

 WACKとavexの共同プロジェクトとして始まって以来、話題性を伴うリリースや ツアー、節目のワンマンも成功させ、メンバー移籍も増員もグループ総体の勢いに転換してきたEMPiRE。その機運に乗って送り出す初のシングル“ピアス”は勝負作に相応しい出来映えながら……去る1月29日、結成メンバーのYUKA EMPiREが3月での脱退を発表しました。そんな動かせない分岐点へ向かう6人に行った最後のインタヴューをどうぞ(なお、取材日は1月29日!)。

EMPiRE ピアス avex trax(2019)

 

——そもそも脱退が決まった時期は?

YU-Ki EMPiRE「11月の中旬、終わりぐらいですかね」

MAHO EMPiRE「〈EMPiREと学業の両立が難しい〉みたいなところから、みんなで話し合いになって」

——結論ありきの話ではなかった?

YU-Ki「う~ん、話していくなかでそうなった感じですね」

——その時はどう受け止めましたか。

MAYU EMPiRE「最初に聞いた時は、意識の違いを感じたというか。何を優先させるかは個人の人生なんで全然いいんですけど、その時は仕事とか仲間に対して誠実じゃない部分を感じることもあって……」

MiDORiKO EMPiRE「どうしてこうなっちゃうんだろう……って思いました。私には両立がどれだけ難しいのかわからなくて」

——それぞれ事情や環境は違いますしね。

YU-Ki「私自身はこの仕事をやるために別の道を蹴って、自分で選んで入ってきたので。両立するって決めたならYUKA自身も責任を持ってできたら良かったし、もっと私たちもうまく支えられたら良かったなって思いました」

MiKiNA EMPiRE「両立が辛いのは何となくわかって、私もなり得るかもしれない状況だなとは思ったんですけど、でも、そういうことがあった時に、その状態のYUKAちゃんと一緒にいるヴィジョンが見えなくなって。だから、本音はもうちょっと強くあってほしかった。でも気持ちも凄くわかる。複雑な気持ちでした」

——こうなるまでの過程で、予感はあった?

YU-Ki「思い返してみれば、ですかね……。ずっと自分のことで精一杯っていう部分もあったので。後から思い返せば、確かにそういうフシはあったかなって」

MAHO「あと、みんなが遠慮してたのもあって、学校がある/ないで溝があったり、踏み込んでいいのか躊躇して、そういうことも言い合える関係にまだなれてなかった」

——どこからプライヴェートなのかって。

MAYU「そう。うまく伝わらなくて〈そこは関係ないでしょ〉みたいになって、〈ああ、やっぱ言っちゃいけないんだ〉って感じたこともあったりして」

——YUKAさんも周りに相談しなかった?

YUKA EMPiRE「そうですね、しなかったです」

——はい。

YUKA「はい、以上です」

 

いまの自分たちに刺さる

——はい(笑)。では、ニュー・シングルの話です。、去年“ピアス”の音源を聴かせてもらった際は、クリスマス感というか、壮観なイルミネーション感があるめっちゃ良い曲だなと思ってたんですが……。

YU-Ki「確かにそうですね。鐘の音とか入ってるから(笑)」

——いま聴くとYUKAさんを送り出すようなニュアンスも感じられるし、現実が曲に乗っかってきた格好ですけど、実際は今回の話になる前にレコーディングされてたんですよね。

YU-Ki「はい、それより前に録ってました」

MAYU「めっちゃ前ですね。これは〈行かなきゃ損さ〉って凄い力強い歌詞で背中を押される曲で、夢を見てる人とか、何かを成し遂げたくて生きてる人に刺さる曲じゃないかなって思うんですよ。だから……いまの自分たちにも凄く刺さってくる」

MiKiNA「前向きな曲なんです、うん。後ろ向きになっちゃう気持ちがあったとしても、ここで立たなきゃ後悔するんだよって、そういうのを教えてくれるような曲」

——個々もそうですし、EMPiREが〈こうありたい〉って歌ってる雰囲気もあります。

MAHO「仰った通り、EMPiREとリンクする部分が凄いあります。いまはまだ用意されてるものにがんばって追いつく感覚でしか行けてなくて、でももう、その時期は越えてなきゃいけない。そんな時に〈ビビりばっかの心が暴れ出していく〉とかのフレーズが自分に響く感じで」

MiDORiKO「絆の強い仲間と前に進んでる感じが『FAIRY TAIL』にぴったりだなって感じます」

——そうでした。今回はTVアニメ「FAIRY TAIL」のEDテーマで、そもそもは作品世界に通じる内容というわけですね。

YUKA「タイアップの話を聞いていたので、凄い作品に合った曲だなと思いました」

YU-Ki「簡単に言うと、仲間同士で敵と戦っていくみたいなお話なので」

MiKiNA「めちゃ簡単じゃん(笑)」

——喪服っぽい衣装も、MVも印象的です。

YU-Ki「はい。振付けも初めて自分たちで作ったんですよ。いままでは振付師の先生やBiSHのアイナ(・ジ・エンド)さんに付けていただいてたんですけど、今回は〈自分たちで考えてみて〉って言っていただいて。私とMAYUとMAHOちゃんが中心になって、〈ここどうしようか?〉ってところはメンバーみんなで相談して決めました」

MAYU「〈行け! 行け! 行け!〉って強く歌ってるんで、こう、ドアを叩いてるみたいに、自分の閉ざしてる心を強く叩く振りが多かったりするんです。そうやって何物でもない自分たちが強くなっていって」

YU-Ki「うん、殻を破って、何かを掴んでいこうっていうテーマで考えました」

——勇ましさは伝わります。一方でカップリングの“ERASER HEAD”は曲調もダークで、MAYUさんの書いた歌詞も……。

MAYU「はい、11月末、12月頭くらいに書いたので、マジちょうどぴったりですね(笑)。“ピアス”は明るくて前向きなのに、こっちは暗い感じで自問自答してて」

——曲名は映画から?

MAYU「いや、映画はまったく知らなくて後から調べました。曲名は渡辺(淳之介:WACK代表)さんが付けてくださったんですけど、ホントにぴったりだなって」

YU-Ki「歌詞が難しかったです。あの、私はちょっと読めない漢字があったり(笑)。でも最初からすっごいMAYUっぽい表現で、メンバーに向けての歌かなって感じましたね」

MAYU「やっぱ、その当時の状況ですね。自分の置かれてる状況とか、YUKAちゃんのこと、他のメンバーのこと、いろんな想像がゴチャ混ぜになってます。そしたら救いのない歌詞になってしまいました(笑)」

MAHO「もろMAYUちゃんの考えてることがズドーンって。歌詞の解釈とか意味を聞かなくても理解ができたというか」

YU-Ki「あえて女々しく書いたんだよね?」

MAYU「そう、女々しさを意識して」

MiKiNA「歌詞はMAYUちゃんの気持ちを感じて、くるものがあるんですけど、歌うのはレコーディングの時から凄い楽しかったです。ラップとかもあって、みんな声がエロいです、何か(笑)」

——けだるい感じの歌い方で。

MiKiNA「はい、レコーディングの時に言われて。MAHOちゃんのサビとかも凄い好きだし、全員の歌い方を聴くのが好きな曲ですね」

 

EMPiREは続いていくので

——はい。そして、このシングルを引っ提げて臨む3月3~4日の24時間耐久イヴェント〈EMPiRE presents TWENTY FOUR HOUR PARTY PEOPLE〉が、6人で最後の舞台となりますね。

MiDORiKO「体力的にめちゃくちゃキツいと思うんですけど、6人のEMPiREを後悔なく感じたいです。24時間経って最後の時に寝ちゃってたらイヤなので、意識だけは飛ばないようにがんばりたいです(笑)」

MiKiNA「やっぱりめちゃくちゃ怖いですけど、その日がホントに現体制の最後だし、ホントにいまから一瞬も止まってられないっていう気持ちがあって、3月4日を意味のある大きな日にするためにも止まらず行きたいです」

MAHO「意志があってこの6人が集まって、去年の5月からここまでやってきたのが無駄な時間じゃなかったことを示したいし、お客さんには来て良かったと思ってほしい。寂しい気持ちとかいろいろあるのは当たり前ですけど、総じて〈ここにいれて良かったな〉って思ってもらえるようなライヴを、この6人で最後にしたいなっていう気持ちですね、はい」

YUKA「後悔ないようにしたいなと思います。何か、そのライヴが楽しかったと思って終わっても、苦しくて凄いヤダなって思えてもいいんで、やりきったなって思えるように、後悔のないように、やりたいと思います」

——その日まで正直しんどい局面もあると思うんですけど、いまはどんな気持ちでいますか?

MAYU「ダメな部分をこのままにしたくないし、なあなあで終わらせたくなくて。実際、2か月ぐらい経って凄く話すようになって、メンバー間の空気感が良くなってきてるんです。これからの自分たちのためにも互いに歩み寄って、理解し合う努力をして、いままでできなかったことをちゃんと3月4日までにやって、6人を終わらせたいというか」

YU-Ki「6人の全力を尽くして、そこから先の勢いも作っていけるような最高のライヴにしたいです。YUKAが最後っていうのもあるけど、でも、EMPiREは続いていくので」

——もちろんですね。3月後半にはWACK恒例のオーディション合宿もありますし。

MAYU「ああ、誰か入るかもしれないってことですか?」

——そう見られてるのは感じますか?

MAYU「感じてますね。ただ、合宿までは5人の活動だし、〈誰か入ってくるっしょ〉みたいな感じじゃなくて、〈この5人が最高なんだ〉って自信持って言えるグループにしなきゃいけないって思ってますね。そのためにも6人でやり残したって後から思うことがないように、ひとつひとつ目を見張って、ちゃんと感じて、過ごしていきたいです」

——はい。では、YUKAさんから最後に一言ありますか?

YUKA「“ピアス”聴いてください」

——それはそうです(笑)。

YUKA「はい(笑)。ありがとうございました」