ドラマティックに重なり合う3人の歌声が、彼らの“今”を映し出す

 平均年齢24歳の若さながら、10年ものキャリアを誇るイタリア出身のトリオ、イル・ヴォーロ。ソロ歌手志望だったジャンルカ、イニャツィオ、ピエロの3人がイタリアの人気オーディション番組で出会い、番組プロデューサーのアドバイスからユニットを結成することになった。目標とするのはヨーロッパの誇りである三大テノール。海外ではすでに大人気で、プラシド・ドミンゴをはじめとする大物スターとの共演も多数ある。

 そんな彼らの魅力は、伸びやかにまっすぐ天に向けて響いていくようなヴォーカルだ。テクニックや知識に頼らない、素直な歌唱から瑞々しい感性が伝わってくる。そして、最大の強みは、母国語がイタリア語ということ。あらためてイタリア語がいかに音楽的な言語かと、その豊かな表現力を実感させられる。

IL VOLO MUSICA~愛する人よ ソニー(2019)

 4作目のアルバム『MUSICA~愛する人よ』は、オリジナル楽曲の《愛する人よ》から始まり、カヴァー曲が8曲ある。その選曲に彼らの特徴のひとつがある。イル・ヴォーロは、クラシカル・クロスオーヴァーのトリオで、優美なオーケストラの伴奏で歌うけれど、世界的に有名なクラシックやオペラの楽曲は選ばず、カンツォーネなどイタリアのポップソングを多く取り上げている。《アリヴェデルチ・ローマ》、《瞳はるかに》、《静けさの声》、《素晴らしき君》など、これらの選曲に多国籍ユニットではない、イタリア人としてのアイデンティティが表れている。

 もちろんイタリア語以外に、共演経験のあるバーブラ・ストライサンドの《ピープル》、イタリア系アメリカ人の俳優マリオ・ランツァが映画で歌った《僕の恋人でいて欲しい》は英語で。ユニークなところではUKのボーイズグループ、ブルーが自らのヒット曲《ブリーズ・イージー》をイタリア語でセルフカヴァーした《そう言うけれど》がある。さらにボーナストラックとして羽生結弦選手が2シーズン(2016-17、2017-18)エキシビションで起用した楽曲《ノッテ・ステラータ》の新録ヴァージョンを収録している。

 複雑なアレンジで懲りすぎることなく、基本的にそれぞれソロで歌いつなぎ、3人の声がドラマティックに重なり合うなかでクライマックスを迎える。そのシンプルさがイル・ヴォーロの音楽の気持ち良さを生み、リスナーが自然に歌に身を委ねることが出来るのだと思う。新作でも存分にその魅力を堪能させてくれる。

 


LIVE INFORMATION

IL VOLO IN CONCERT
○5月13日(月) 横浜みなとみらいホール 開場17:30 開演18:30
○5月15日(水) 東京文化会館大ホール 開場17:30 開演18:30
○5月17日(金) 横浜みなとみらいホール 開場17:30 開演18:30
○5月18日(土) Bunkamuraオーチャードホール 開場13:00 開演14:00
○5月21日(火) 東京文化会館大ホール 開場13:00 開演14:00
○5月22日(水) 大阪フェスティバルホール 開場17:30 開演18:30

曲目(予定):「グランデ・アモーレ」「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」「オー・ソレ・ミオ」「星は光りぬ」「グラナダ」「アヴェ・マリア」「誰も寝てはならぬ」ほか

www.sonymusic.co.jp/artist/ilvolo/