ジャズピアニストでありメタラーでもある西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第82回は2024年12月20日(金)に公開される映画「ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一髪!」について。前作が評判になった〈北欧メタル映画〉の続編、その見どころは? なお「ヘヴィ・トリップⅡ」は、intoxicate試写会への応募が受付中。締め切りは本日11月26日ですので、あわせてチェックしてください。 *Mikiki編集部
2019年公開で話題になった北欧メタル映画「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!」の続編、「ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一髪!」が、12月20日より劇場公開です。
インペイルド・レクタムが帰ってきた!
1作目は2019年の公開、もう5年も経ったんですね。
「ボヘミアン・ラプソディ」が2018年に大ヒットし、音楽映画が盛り上がっている中で〈「ボヘミアン・ラプソディ」へのファイナルアンサー〉という謎なキャッチコピーで公開された「ヘヴィ・トリップ」。〈北欧メタル映画〉なんて、そんな狭いジャンル、日本で何人観に行くんだ?と思いましたが、これが蓋を開けてみると、とっても楽しいメタルコメディ映画で、大きく話題になりました。
ライブをするために奮闘する、メタラーたち。その真面目さが可愛くて、本当に楽しい映画でした。コメディといっても、茶化しているような目線はなく、メタラーのとってしまう行動をよくわかっている人が、その真面目さを愛し、描いているので、とても楽しめました。こちらの連載でも記事にしましたし、黒Tをこれ以上買うのを控えているのにバンドTシャツも買ってしまった!(第23回の扉になっている写真)
ボーカルのトゥロ、ベースのクシュトラックス、ギターのロットヴォネン、ドラムスのユンキで始まったこのバンドは、〈終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル〉を標榜していますが、とても優しくて真面目で、チャーミングなメンバーです。
〈自分はメタル、よくわからないし〉と思う方でも、音楽映画としてお薦めします。〈本人はいたって真面目〉が荒唐無稽に進んでいき、大きく飛躍していく様は、一本の映画としてとても面白い。
また、〈初めて自分たちの音を見つけた!〉という瞬間の高揚感は、内面の話ですし特に大きなアクションもないにもかかわらず、観ているこちらもとても興奮します。
音楽映画において、演奏しながら自分自身の道を発見した瞬間、あるいは、バンドや誰かとのアンサンブルで他者と共鳴した瞬間は、音楽と人生に魂が入る大事な瞬間ですが、映画で描くのは本当に難しいでしょうね。見た目、演奏しているだけですからね。楽器を演奏したり、バンドをしている人はわかる、あの手応えを得た時の言い様もない快感と興奮。「ヘヴィ・トリップ」1作目の個人的なハイライトは、わりと最初のうちにバンドに訪れたその瞬間でした。
今回の続編の公開に合わせて1作目の再上映も決定し、12月13日からシネマート新宿ほかで公開。ぜひこの機会に、1作目も劇場で観て欲しいです。