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『6 Japanese Covers』は肉体的なレコーディングから生まれた

――では続いて、EP『6 Japanese Covers』のお話を。

LEO「〈大都会ツアー〉をプランニングするうえで、対バンする相手の曲をどれかカヴァーしてみようか、となって。だったらそれをレコーディングしてみて、ライヴ会場限定で売るのはどうか?って最初に考えていたんです。そこから対バン相手全員の曲をやることになり、それだったらEPの形にするのもいいな、というふうにどんどん話が発展し、作品のイメージが膨らんでいった。

そういう遊び感覚も強い作品なんですが、大元には、現在のLEO IMAIバンドを見てください、というアピールする狙いがありました」

『6 Japanese Covers』試聴動画

――それにしても、ツアーの予告編としても機能するという画期的な作品ですよね。

LEO「そうですね。それに加えて、私の根本にある音楽性や趣味、テイストをわかってもらえれば、って気持ちもあります」

――ある意味で、LEOさんのルーツを紐解く作品という側面もこのEPは持っているといっていいのでしょうか?

LEO「アレンジの部分からそういうところが垣間見えてくるかもしれませんね」

――曲を料理するうえでさまざまな試行錯誤があったと思うのですが、どういうことが思い出されますか?

LEO「そうだなぁ、例えばZAZEN BOYSの“ポテトサラダ”はシゲクニが、これしかないだろう、って推していて」

シゲクニ「大変だったことといえば、長い曲が多いんですよ。もう一回ってなったとき、心が折れそうになる(笑)。やっぱり体力勝負なところがあったんです。そこはいままででいちばんだったかな。

これまではシーケンスが入っていることも多かったから、パートパートで録ることもあったけど、今回は誰かがやり直すとノリが変わっちゃうから、じゃあもう一回、っていうその繰り返し。それが新鮮だった」

LEO「レコーディング期間が2日しかなかったんですよ。だからけっこうピリついてましたね。でもトンネルの向こう側には良いものがちゃんと出来てたから、良かったと思ってます」

――その勢いがどの曲にもしっかりと張り付いてますもんね。

岡村「張り付いてますね。というか、勢いしかねえな」

Photo by Jun Tsuneda

――だとすれば、あのときこういう出来事があってどうのこうの、と振り返るのもちょっと難しい?

岡村「うん、とにかく弾いてた(笑)。弾いて弾いて、そして聴いて、の繰り返し」

シゲクニ「『VLP』(2018年)のときもこの状態に近かったんですけど、これほどまでに肉体的なレコーディングじゃなかったかもしれない。今回は特にその印象が強い」

――しかし爽快なまでにヘヴィーな作品ですよね。

シゲクニ「ライヴ・テイクに近いのかもしれない。LEOも横でずっとシャウトしてたから」

LEO「そうね、そういうのも部分的に使ったりしている。アレンジは私がある程度決めてましたが、プレイ・スタイルや音色は注文しないので、そこにはそれぞれの個性が滲んでいるんじゃないかなと思いますね」

 

徹頭徹尾ヘヴィーな人間椅子“どだればち”
LEO今井のルーツであるeastern youth“夏の日の午後”

――カヴァー集ということもあって必然的に曲調がヴァラエティーに富む結果となっているのも聴きどころですね。では収録曲について順にお話してもらいたいのですが、まずは人間椅子の“どだればち”から。このうえなくインパクトのあるオープニングになりましたね。

LEO「録っているときはまだ彼らと面識なかったんです。この曲、最高ですよね。アレンジも個人的には気に入っています」

『6 Japanese Covers』収録曲“どだればち”

――オリジナルはもう少しコミカルな味がありますが、こちらのヴァージョンは徹頭徹尾ヘヴィー。LEOさんのヴォーカルも魂の叫びと形容するのが似合うものだし。

LEO「うん、そうね。滑稽な感じとかまったく意識せずやろうとしましたけど、やっぱりビデオとか観ると笑えるんですよね、どうしても。それはなんでだろ? 一所懸命だからかなぁ。まぁ、メンバー全員どっかで笑いを取ろうというヘンなクセも働いていると思います」

――あぁ(笑)。この曲自体かなりドメスティックな世界が展開しますけど、LEO IMAIバンドらしいエキゾ感があるといいますか、街の中華屋で食べるチキンライスのような無国籍感が素晴らしいと思いました。で、2曲目のeastern youth“夏の日の午後”のカヴァーにもどこかそんな感触があって、ベースにある和のテイストをどう料理するかが重要なポイントとなっている。

LEO「そうなんですよ。彼らは高校生のとき、大発見したと思えるぐらいすごく好きになったバンドなんですが、好きになったきっかけがこの曲だった。彼らの曲はどれも私に沁みついているから、選曲は迷いましたね。でもやるんだったら、自分にとって畏れ多いこの曲にチャレンジしてみようと思って」

――間違いなくLEOさんのルーツの一曲といえる“夏の日の午後”の良さってどういうものだと?

LEO「原曲のいちばんの良さは、吉野(寿)さんの歌だと思う。あんな嘆きのあるシャウトは、私には出せないから。なので曲のスピードを半分以下にして、メタルっぽいアレンジでカヴァーしたんです」