トレイシー・ソーンや初期のアンテナといった、初期のチェリーレッドやクレプスキュールの諸作のような儚い音楽が頭をよぎる山形出身、東京在住の音楽家んミィの最新作ゆめであいましょうとのスプリット・シングルに続くリリースだ。

音楽活動歴は決して短くなく、評者がんミィの音楽をはじめて聴いたのは5年以上前のことであり、Bandcampでは別名義を含めて10を超える作品がリリースされている。

初期と比べるとだいぶブラジル音楽の影響が強くなっていて、ミニマルな曲でも譜割りがユニークだ。また本作はほとんど一人で録音しているからだろう、ブラジル的なドラムやパーカッションが生ではなくドラムマシーン(のプラグインだろう)で構築されている。そのリズムがまるで一時期のエグベルト・ジスモンチのようなとても面白い響きを獲得している。

評者はこのアルバムのリズムの響きにブラジルの電子音楽を集成した近年の最重要コンピレーション・アルバム〈アウトロ・テンポ〉をふと思い出したが、この響きが活きるのは、んミィの作る曲自体にオーセンティックな魅力があるからだろう。そう、つまりこれは〈アウトロ・テンポ〉以降の時代のニュー・スタンダードとでも呼ぶべき作品なのだ。

ちなみにんミィは近々もう一枚作品をリリースするらしく、それはバンド編成(その名も〈んミィバンド〉)で録音されたもののようだ。SNS上で発表された曲目を見ると本作と6曲収録曲が被っているので、本作とは姉妹作のような関係の作品だと推測しているが、はたして。

なお残念なことに近年んミィバンドで主にサックスを担当していた山田光は10月5日(土)に予定されている〈tiny pop fes〉でのライヴをもって、しばらくバンドから離れるようだ。近年のんミィバンドの集大成となるに違いない10月5日のライヴには駆けつけねばならない。

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