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『Temporary』と併せて聴きたいポップ作品たち

bird 波形 ソニー(2019)

現行のジャズ~ソウルに強くインスパイアされたサウンドをポップスに落とし込んでいるという点で、本作のプロデューサーである冨田恵一とCRCK/LCKSには共通項が見い出せるだろう。“記憶のソリテュード”あたりのグルーヴ探求は、まさにCRCK/LCKSのそれと拮抗する。 *澤田

 

大貫妙子 Grey Skies クラウン(1976)

都会的な日本のポップスとしてのルーツを辿れば、行き当たるのはやはりこの作品か。シュガー・ベイブ解散後の大貫を、山下達郎、坂本龍一、細野晴臣といった個性豊かな才能がバックアップし、ジャズとクラシックが見事に溶け合わせた作風は、クラクラの原点のようにも思える。 *金子

 

EPO DOWN TOWN RIOLA JAPAN(1980)

 〈それなら街に出てみない?〉と歌う『Tem­porary』の実質的なオープニング曲“KISS”は堂々たるシティー・ポップ的な作風で、いわば現代版の“DOWN TOWN”。となれば、シュガー・ベイブからこの曲を歌い継いだEPOの存在が自然と浮かび上がり、その風通しのいいポップセンスが改めて光る。 *金子

 

DADARAY DADABABY TACO/ワーナー(2019)

結成当初はユニット的な印象が強かったが、作品を重ねるごとにバンドとしてのまとまりを強め、プログレッシヴな色合いの濃かった作風が洗練されたポップスへと変化していったりと、CRCK/LCKSの歩みともシンクロする部分が多い3人組。楽曲に登場する主人公のややメンヘラな雰囲気も近いか。 *金子

 

RAMMELLS Mirrors CROWN STONES(2019)

ブラック・ミュージックを基調とした音楽性と、〈-Pop〉と表現するに相応しいキャッチーなメロディー、さらにはメンバーのなかに複数のソングライターが存在し、曲調の幅が生まれていることも共通点。“Lalala - Birdsong”の歪んだギターは、ときおり暴走する真田徹のプレイを連想させる。 *金子

 

WONK Moon Dance Caroline International(2019)

CRCK/LCKSが日本語ポップスのフォーマットの中で開陳している現在進行形のジャズからのフィードバックを、よりストレートに表出させているのが彼らと言えるかもしれない。スムースなハーモニーと複雑なリズム・アプローチとのレイヤーに美を映す様が重なる。 *澤田

 

ペンギンラッシュ 七情舞 Penguinrush(2019)

テクニカルな演奏力をベースにして昨今のジャズ~ソウルを咀嚼し、日本語のポップスを作り上げている……というアプローチにおいて、このフレッシュなアクトはCRCK/LCKSと近しい。メタ視点で楽曲を構築しながら、すこぶるエモーショナルなところも似ている。 *澤田

 

東郷清丸 Q曲 ALLRIGHT(2019)

ファンキーなグルーヴを持ち味としつつ、歌詞やヴォーカルのどこかとぼけたような、ファニーな雰囲気も特徴で、曲によってSFチックな雰囲気を漂わせるのもよく似ている。ベースの厚海義朗とパーカッションの角銅真実はceroで小田と共演し、角銅は石若のソロにも参加と、人脈も近い。 *金子

 

クラムボン triology コロムビア(2015)

CRCK/LCKSが新作で手にした自然体でプリミティヴなポップ感覚は、どこか、このトリオ・バンドを想起させる風合いが。とりわけ、『Temporary』のラストに配された“病室でハミング”のライヴ・ヴァージョンの持つスケール感とドラマ性に相通じるものが感じられるはず。 *澤田