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確固たるオリジナリティーを貫くiriのディスコグラフィー

 自身の作品のほか、近年は楽曲提供などで外部作品へも活動の場を広げているiri。ここでは、それらの主だったものを振り返ってみよう。まずは、2016年に発表されたデビュー・アルバム『Groove it』。スモーキーな存在感を放つ歌声と、ラップも交えたスムースなメロディーは得難い個性としてすでに確立しており、ソウル/R&B/ヒップホップがスタイリッシュに連なるアレンジにはmabanuaやSTUTSらが参加。ライヴのセットリストでは要所に置かれることも多い定番曲“rhythm”は本作のオープニングを飾っている。

 そして、新作の“SUMMER END”でもタッグを組んだTAARのメロウ・チューン“Come Together”に歌唱で参加、そしてケンモチヒデフミとの初顔合わせとなったシングル“Watashi”、5lackとのコラボを果たしたEP『life ep』を経て、2018年にはYaffleとOBKR(Tokyo Recordings)、ケンモチヒデフミ、yahyel、ESME MORI、%C、高橋海(LUCKY TAPES)セカンド・アルバム『Juice』をリリース。〈リスナーに活力を与えられたら〉という思いで制作されたこの作品は生音の比重が増え、全体的にオーガニックなクロスオーヴァー感覚に満ちた仕上がりに。WONKとの“Dramatic Love”ではファルセットを用いた抜けのある歌唱を披露するなど、表現者としての新たな一面も開拓した。

 そこから約1年を空け、翌2019年には3作目『Shade』が登場。ピアノと歌のみで幕開ける大沢伸一が編曲を手掛けた表題曲でオープニングから聴き手に新鮮さをもたらす同作では、tofubeatsやgrooveman Spotとの初コンビ曲や、SANABAGUN.やペトロールズのメンバーとKan Sanoが集結したコラボ曲なども収録。洗練されたアーバン・グルーヴは保持しつつも肩の力を抜いたサウンドには、原点に立ち返った言葉――自身の影の部分もそのまま曝け出したリリックをマッチアップ。自身らしさを改めて見つめ直した。

 以降は、トーンを押さえたハウス版の“東へ西へ”(アレンジはYaffle)で『井上陽水トリビュート』に参加。さらにはESME MORIと組んで私立恵比寿中学には“I'll be here”、Sexy Zoneには“make me bright”を提供している。こちらはいずれもiri特有のリズミックなメロディーが各グループの耳新しい歌唱を引き出したR&Bベースのアプローチで、iri自身がそのままセルフ・カヴァーしてもハマりそうなナンバー。いつか実現することを期待したい。 *bounce編集部