And yet BiSH moves.
大阪城ホールの熱狂とドラマが待望の映像作品化!

 年を重ねるごとにグングン上昇を続けているBiSHだけに、ちょっとやそっとのことで驚かされはしないが、結成から5年目を数えた2019年の活躍ぶりは、彼女たちを長年追いかけている人の目にもひときわ眩しく映ったはずだ。

 ツアーと先行EP配信を両軸に話題を大きくした久々のフル・アルバム『CARROTS and STiCKS』やシングル『KiND PEOPLE/リズム』のヒットはもちろん、人気番組「アメトーーク!」で〈BiSHドハマり芸人〉が放送されるなど、一般メディアへの露出も急増。そうやってマスへ進出する一方で〈お遍路〉などのユニークな企画に力を入れていたのも彼女たちらしかった。

 それ以外の音楽活動だけで見ても……アユニ・Dはソロ・プロジェクト=PEDROのフル・アルバム『THUMB SUCKER』で独自の世界を描き、ハシヤスメ・アツコは快曲“ア・ラ・モード”で賑々しくソロ・デビュー、アイナ・ジ・エンドはSUGIZO“光の涯”やジェニーハイ“不便な可愛げ”などの客演で成果を上げ、セントチヒロ・チッチは自身がキュレーションするイヴェント〈THAT is YOUTH!!!!FES〉を開催。BiSHとしても東京スカパラダイスオーケストラのトリビュート盤や香取慎吾“FUTURE WORLD”に参加している。

 これまで音楽シーン~アイドル・シーンにおけるオルタナティヴとしてカウンター的な異彩を放ってきた彼女たちではあるものの、これはもう純粋にトップ・アーティストの仲間入りを果たしたと言ってもいいだろう。そして、そんなBiSHの華々しい広がりをシンプルに担保してくれるのが、いつだって6人の繰り広げる情熱的なライヴ・パフォーマンスそのものであるのは言うまでもない。

 

特別な場所でのライヴ

 〈BiSHはライヴが良い〉という共通認識を裏付けるかのように、これまでも彼女たちは節目の単独公演などを映像作品として記録してきた。躍進のきっかけとなった2016年10月の日比谷野外大音楽堂における〈Less Than SEX TOUR FiNAL "帝王切開"〉をはじめ、幕張イベントホールで迎えた2017年7月の〈BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL "REVOLUTiONS"〉、初代BiS解散の地でもある横浜アリーナに辿り着いた2018年5月の〈BiSH "TO THE END"〉、同年12月の幕張メッセ9~11ホールで過去最高キャパの1万7000人を動員した〈BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL "THE NUDE"〉といった節目の大規模公演はそれぞれ単体でソフト化されているし、それ以外にもキャリアの折々を彩ったライヴの模様はアルバム/シングルに付属したBlu-ray/DVDで追体験することができる。彼女たちが雪だるま式に新たなリスナーを増やし、ファン歴の長さを問わず多くの受け手の熱量を高め続けている背景には、こうしてグループの歴史や物語にアクセスできる映像作品の充実ぶりも大きな要因としてあるはずだ。

BiSH 『『And yet BiSH moves.』 avex trax(2020)

 そして、そんなライヴ・ディスコグラフィーの最新作としてこのたび登場したのが、昨日9月23日に大阪城ホールで開催された単独公演「And yet BiSH moves.」である。

 BiSHにとって初の首都圏以外でのアリーナ公演となったこの日のチケットは、一般発売と同時に立ち見席も含めて即完。その開催を記念して公開されたドキュメンタリー仕立てのMV“GRUNGE WORLD”でも語られていたように、大阪出身のアイナにとって大阪城ホールは長年の夢だったという会場でもある。そんな特別な場所でのライヴとあって、〈THE NUDE〉の映像演出も務めた山田健人(yahyel)が引き続きVJを担当し、5面のLEDモニターにレーザーや火柱などを用いたド派手な演出とパワフルなバンド・セットが1万2000人の観客を迎え入れるに相応しいスケールを生み出すこととなった。

 

最高を更新していく

 本編のオープニングを飾ったのは、インディー時代の『FAKE METAL JACKET』(2016年)に収められているエモーショナルな“BUDOKANかもしくはTAMANEGI”。渡辺淳之介にとっての永遠の夢のシンボルをモチーフにしたこの曲は、これまでも〈REVOLUTiONS〉ではアンコールの初め、〈THE NUDE〉では本編ラストといった大事な局面で歌われてきた重要曲だが、それを冒頭でいきなり披露する様子に深い意味を感じることもできるのではないだろうか。

 そこからは鉄板の“GiANT KiLLERS”~“MONSTERS”でブラストし、序盤から満場のオーディエンスを熱狂の坩堝へと導く。詳細は作品を実際に観ていただくとして……“MORE THAN LiKE”や“HiDE the BLUE”“I am me.”を畳み掛けるメロディックなパート、白装束から赤い衣装への早替えを見せる“SHARR”、2度目のハシヤスメ・チャレンジを含む恒例のコント、そこからの“DiSTANCE”、鬼気迫る“FREEZE DRY THE PASTS”など、『CARROTS and STiCKS』でも追求されたBiSHの多面性が怒濤のクライマックスを何度も作り出していく様子に圧倒されるはずだ。

 美しい代表曲“オーケストラ”“プロミスザスター”からの“beautifulさ”で本編を締め括り、アンコールではこの日がライヴ初披露となる“GRUNGE WORLD”をパフォーマンス。“BiSH-星が瞬く夜に-”後のダブル・アンコールでは、地元への想いや感謝、この先への決意を述べるアイナのMCがもちろん最大の観どころだろう。“ALL YOU NEED IS LOVE”を泥臭く高らかに歌い上げて、全24曲2時間超の熱いライヴは大団円を迎える。

 なお、Blu-rayと2枚組ライヴCD、フォトブックをセットにした豪華な初回限定盤ではメンバーの副音声が楽しめるほか、先述したMV“GRUNGE WORLD”のロング・ヴァージョンも必見。縁深い人物たちとの再会を通じてアイナのルーツを辿るドキュメンタリーの、ライヴ当日の模様も含めた〈完全版〉をたっぷり堪能することができる。

 ここでヒストリーに新たなストーリーを刻んだ彼女たちは……昨年10月からキャリア最長の24公演を行ってきたホールツアー〈NEW HATEFUL KiND TOUR〉のファイナルを1月23日のNHKホールで迎えたばかり。さまざまな夢を叶えて最高を更新するべく、2020年もBiSHはやってくれるに違いない。

関連盤を紹介。
左から、PEDROの2019年作『THUMB SUCKER』(ユニバーサル)、アイナ・ジ・エンドが客演したDISH//の2019年作『Junkfood Junction』(ソニー)、ジェニーハイの2019年作『ジェニーハイストーリー』(ワーナー)、山田健人が在籍するyahyelの2018年作『HUMAN』(BEAT)、“カナリヤ鳴く空”で参加したトリビュート盤『東京スカパラダイスオーケストラトリビュート集 楽園十三景』、共演ステージの映像を収めた東京スカパラダイスオーケストラの2019年作『ツギハギカラフル』(共にJUSTA/cutting edge)、香取慎吾の2020年作『20200101』(ワーナー)

 

映像作品とアルバム/シングルの映像パートから駆け足で振り返るBiSHのライヴ・ヒストリー

99秒の尺でドギモを抜いたメジャーでの初シングル。DVDには同年1月19日にLIQUIDROOMで開催された〈Eden of Sorrow Tour  Final "IDOL is SHiT"〉の模様が収められ、客席の大暴れも激しい時代の記録と共にメジャー・デビュー発表の様子も収録。

 

アユニ・D加入後の初音源となるメジャー初アルバム。DVDには同年3月に品川ステラボールで開催された〈IDOL SWINDLE TOUR FINAL〉を収録。ハグ・ミィ在籍時の貴重な記録で、リンリンやアイナのダイヴも含む衝動的なステージングが熱い。

 

BiSH 『Less Than SEX TOUR FiNAL “帝王切開” 日比谷野外大音楽堂』 avex trax(2017)

BDとDVDの2形態でリリースされた初の単独映像作品。当時最長だったツアーのファイナルとして2016年10月8日に行った日比谷野音でのパフォーマンスが楽しめる。ストリングスを従えて感涙に咽ぶ“オーケストラ”が見どころ。

 

BiSH 『プロミスザスター』 avex trax(2017)

さらなる飛躍を掴んだヒット・シングル。DVDには、喉を手術するアイナの活動休止前最後のステージとして2016年12月1日に開催した無料ライヴ〈iN THE END〉の模様を収録。刹那的に暴れ狂う客席に飛び出して歌うチッチの勇姿が頼もしい。

 

〈次の決戦〉を見据えたミニ・アルバムで、BD付きの豪華限定盤も初めてリリースされた。BD/DVDには松隈ケンタらを従えた初のバンド帯同ツアー〈BiSH NEVERMiND TOUR〉のZepp Tokyoでのファイナルを収録。粗削りな奮闘ぶりが光る。

 

BiSH 『BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS”』 avex trax(2017)

同年7月22日に幕張イベントホールで開催された、過去最大規模ワンマンの模様が堪能できるBD/DVD。7000人の観客に向かっても臆することなく、シンプルに通常運転のパフォーマンスを披露。いつもより長めのMCも珍しい。

 

BiSH 『THE GUERRiLLA BiSH』 avex trax(2017)

ゲリラ販売や道頓堀ゲリラ・ライヴも話題になったメジャーで2枚目のアルバム。BD/DVDには、代々木公園にて同年6月に開催した〈YOYOGi GiANT KiLLERS〉、8月の〈TBS3〉というフリー・ライヴの模様を2本収録。過去曲多めな後者が逆に新鮮だ。

 

初めてオリコンでウィークリー1位を獲得したメジャー3枚目のシングル。BD/DVDには前年11月の『THE GUERRiLLA BiSH』リリース時に六本木ヒルズアリーナで行った無料ライヴ〈THE けやき坂 GUERRiLLA BiSH〉の模様を収録。

 

BiSH 『Life is beautiful / HiDE the BLUE』 avex trax(2018)

初の両A面シングル。BD/DVDには同年4月22日に開催された中野サンプラザ公演〈BiSH pUBLic imAGE LiMiTEd TOUR FiNAL〉の模様を収録。自身にとっての聖地でのパフォーマンスとあって、人間味を溢れさせたリンリンのMCも見どころ。

 

BiSH 『BiSH “TO THE END”』 avex trax(2018)

同年5月22日に1万2000人を動員した横浜アリーナ公演が楽しめるライヴBD/DVD。ここに至るまでのツアー全公演に密着して舞台裏を収めたエリザベス宮地のドキュメンタリー「BiSH Documentary Movie SHAPE OF LOVE」と併せて観るべし。

 

幕張公演を控えてリリースされたヒット・シングル。BD/DVDには毎夏恒例のZepp Tokyoでの無料ライヴ〈TOKYO BiSH SHiNE 4〉の模様を収録。冒頭の“NO THANK YOU”や“Lonely girl”などめったにやらない曲も含むサーヴィス精神が楽しい。

 

BiSH 『BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL “THE NUDE”』 avex trax(2019)

2018年12月22日に幕張メッセ9~11ホールで行った過去最大規模のワンマンの模様を収めたライヴBD/DVD。バンド演奏と映像の演出も交えた豪華な仕上がりで、アユニのダッシュからコントまで良い場面が多々あり。

 

BiSH 『CARROTS and STiCKS』 avex trax(2019)

大阪城ホール公演でもキーになる曲を収めた、メジャーでのサード・アルバム。BD/DVDには、前年12月9日に横浜赤レンガ倉庫にて行った過去最大規模のフリー・ライヴ〈stereoなfutureにしないYOKOHAMA〉のパフォーマンスが収録されている。

 

BiSH 『KiND PEOPLE/リズム』 avex trax(2019)

現時点での最新シングル。BD/DVDには同年7月3日にZepp Tokyoで行われた〈LiFE is COMEDY TOUR FiNAL〉の模様を収録。ハシヤスメのソロ曲“ア・ラ・モード”の完成披露に始まり、アメとムチを配して表現力を磨いたステージがかっこいい。