時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。いろいろ動きはありますが、まずは2019年の収穫を総決算しておきましょう。さまざまなリイシューや発掘盤など膨大なリリースの宝の山から、いま拾い上げて聴いておきたい作品とは!?
前年はその年のうちに掲載したソウル復刻&発掘の振り返りですが、2019年は通常通り翌年明けのご紹介となりました。2019年のソウル界ではワン・ウェイやフィリップ・ベイリー、チャカ・カーンといったレジェンドたちが素晴らしい新作を発表する一方、エドウィン・バードソングやフローターズのラリー・カニンガム、ジャッキー・ムーア、ジェイムズ・イングラム、アフター7のメルヴィン・エドモンズらがこの世を去るという悲報も届きました。周辺人物としては悪名高いプロデューサーのロニー・シモンズや、Pファンク作品のジャケで著名なイラストレーターのペドロ・ベルも忘れられません。
リイシューは時代の時間軸から切り離されたタイムレスなものではありますが、その作品に初めて立ち会うリスナーには、そこがその人のリアルタイムなわけで……なんて当然のことを前提とするなら、やはり2019年も注目すべき復刻や発掘作品は多かったはずです。マニア向けでも入門編でも、いま扉の前に立ったリスナーにとっては、そこが入口なのですから。 *bounce編集部
2019年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

創立60周年と言いつつモータウンの再発や発掘はわずかだったが、エドウィン・スターとの共演作で知られる歌姫のソロ曲を大量の未発表音源(29曲!)と共に収めたこの編集盤には本気を見た。既出曲を含む未発表ソロ・アルバムが可視化されたのも喜ばしい。楽曲には60年代後半から70年代前半にクロスオーヴァー化が進んだモータウンの洗練志向も反映されているが、ゴスペルのルーツを隠さないヴォーカルにプライドを感じられる。その歌唱は特にアシュフォード&シンプソンやフランク・ウィルソンのプロデュース曲で活きる。

75年作『Bubble Gum』で名高い西海岸のファンク・バンドが80~81年に録音するもお蔵入りしたアルバムに、レアな既発シングルやデモなどを加えた発掘&再発盤。70年代ファンク/ディスコの延長線上にあるアルバムは、没収されたマスターをメンバーのひとりが密かにカセットに録音していたことが音盤化に繋がったという逸話も込みで評価したい。82年のアーバンなスロウ“Mellow Music”、シンセ・サウンドが際立つブラコン~クワイエット・ストーム路線の曲を収録した86年の12インチEP『Love Crime』も快挙の復刻だ。

ガーナのシンガー/打楽器奏者がディスコ絶頂期に放ったカルトなアルバム。元アスリートらしくスポーツ・ダンスの提唱も目的としていて、ステレオタイプなアフロ感は抜きに、一連のサルソウル作品やシルヴァー・コンヴェンション路線の疾走ファンキー・ディスコ/ソウルで駆け抜ける。“African Hustle”も〈アフリカ〉ではなく〈ハッスル〉に重点が置かれている。ブレッカー・ブラザーズやサルソウル・オーケストラのパーカッショニストであるクラッシャー・ベネットも参加。ディスコが正当に評価されるいまこそ真価が伝わる一枚。

VARIOUS ARTISTS Greg Belson's Divine Disco Volume 2: Obscure Gospel Disco 1979 To 1987 Cultures Of Soul(2019)
2016年の本企画で私的ベスト1に選んだゴスペル・ディスコ・コンピの続編。79~87年と音が若干新しくなった今作は表題通りレア度を増し、ポスト・ディスコ期らしいエレクトロニックな音も混在している。LA、アトランタ、メンフィス、フェニックスなど米国ローカルの曲に加えて英国勢も登場。サウス・ロンドンのパラダイスによる“Keep The Fire”のような、マイケル・ジャクソン『Off The Wall』以降のブギー感覚を持ったパーカッシヴなダンサーも目立つ。軽快な音に乗る、ゴスペル然とした圧の強い歌声がたまらない。

2016年にはアセンズ・オブ・ザ・ノース(AOTN)から幻のアルバムが発掘されていたシカゴのファンク・バンドだが、またまた未発表アルバムが登場。76年に地元で録音した作品ながら、サウンドはブラック・ロック風でもあったコティリオン盤(71年)に通じるグリッティーな質感にスピリチュアルなムードが加わった印象だ。“Paradise”や“Sex Freak”といったダンサブルな曲もあるが全体を通して密室ファンク感が強く、ややディスコに近づいたAOTN盤との違いを楽しめた。“Children Of The Lord”はグルーヴィー・ファンクの傑作。

VARIOUS ARTISTS Jazz Fest! The New Orleans Jazz & Heritage Festival Smithsonian Folkways(2019)
世界的に有名なニューオーリンズのジャズ・フェス、その50周年を記念したCD5枚組+豪華ブックは、ディキシー・カップスからビッグ・フリーダまで新旧アーティストの貴重なライヴ音源を故人のパフォーマンスも含めて収録したメモリアルな逸品だった。〈ジャズ〉〈R&B〉〈ブラスバンドとゴスペル〉〈ザディコ/ケイジャン〉〈ロックとヒップホップ〉とざっくり区分されたCDには、現地気分を盛り立てるSEも挿入。ハリケーン・カトリーナ翌年の一体感、2019年に他界したドクター・ジョンのメドレーなど、感涙ポイントも多い。

72年に発表する予定だったが、制作が頓挫。その幻を形にすべく、当時のシングルや未発表音源で組み立てられた仮想アルバムは、サラーム・レミらによるリミックスを除けばこれまで小出しに公開されてきた曲ばかりで目新しさには欠けるも、楽曲のクォリティーは文句なしのトップ。マイゼル兄弟も絡んだ社会派ソング、ウィリー・ハッチの60sノーザン感覚が活きたラヴソングがそれぞれコンセプト性を持って並べられ、アルバムとして新たな命が吹き込まれた。単体で復刻された故郷ワシントンDCでの凱旋ライヴ盤『What's Going On Live』も同位としたい。

VARIOUS ARTISTS Lamp Records - It Glowed Like The Sun: The Story Of Naptown's Motown 1969-1972 Now-Again(2019)
ナウ・アゲインがインディアナポリスのソウル・レーベルの全貌を明らかにした編集盤(CD4枚組)。街の愛称から〈ナップタウンのモータウン〉と称されるランプは69~72年までと短命だったが、そのぶんレアな良曲が凝縮されている。うち2枚は、それぞれヴォーカル・グループ、ファンク・バンドを中心にコンパイルされ、前者には珠玉のバラードが並ぶ。Disc-4はゴスペル・グループのアルバムだが、目玉はヴァンガーズの編集盤となるDisc-3。モダンからスウィートまで、テナーやバリトンのせめぎ合いを聴かせる必殺の内容だ。

C.J. & CO. Ain't It Amazing(The Unreleased Westbound Masters) Westbound/Solid(2019)
創立50周年を迎え、記念コンピも登場したウェストバウンド。デトロイトの名門が誇る男女混声グループの本作は、79年に発表予定だった幻のサード・アルバムから未公開曲のみを収録し、代表曲“Devil's Gun”のオリジナル・ミックスも追加した歴史的にも価値のある一枚に。デニス・コフィとマイク・セオドアがサルソウルの向こうを張って作り上げたディスコ・ファンクは、表題となったダンサーからゴージャス極まりない。シーケンス・ベースラインが脈打つミュンヘン・サウンド風の“Get Lucky”にはダフト・パンクも降参か?

何度も復刻されているブラック・ムーヴィーのサントラだが、本編にフィルム・スコア(22曲)を加えた2枚組セットとしてリイシューされるのは今回が初めてとなる。演奏陣は共にバーケイズやムーヴメントが中心ながら、スコア版はMGMスタジオで録音され、ミックスも劇場仕様。映画のストーリー順に曲が並んでいるのもリアルで、サントラには未収録のナンバーも入っている。劇中でシャフトが捜査に出向いたアパートからかすかに流れてくる女性リードのアップ・チューン“I Can't Get Over Losin' You”を聴けるのが収穫。
2019年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/出嶌孝次

ローライダーの愛したスウィート・ソウルの数々を、ヴァイナル・コレクター/DJのルーベン・モリーナ(サザン・ソウル・スピナーズ)がコンパイルした一枚。バーバラ・メイソンやウイリアム・ベル、近年もリサイクルの多いチャーメルズ“As Long As I've Got You”などの著名曲も交えながら、後のチカーノ・ソウルの美意識を紡ぎ上げていった甘味や旨味成分の源泉を堪能できる。とはいえ、レアリティーもある楽曲が単純に粒揃いで、ラヴァーズ“When You're Poor”、メルヴィン・ヒックス&ザ・ヴァーサタイルズ“I'm Just Passing Time”という未発表曲も素晴らしい。

スライらを意識した名匠ノーマン・ホイットフィールドが、サイケデリック・ソウル開眼後にモータウンから送り出した……という文章は2017年の本企画で彼らの『Nothing But The Truth』を挙げた際のコピペだが、2019年はモータウン期のアルバムで放置されていた75年の2タイトルが2in1でやっとCD化! Pファンクに否応なく感化された“Lil' Red Ridin' Hood”とニール・ヤングのカヴァー“Down By The River”が混在する『Cosmic Truth』にも、ポール・ライザーのアレンジでディスコ前夜の空気を吸引した『Higher Than High』にも、時代の混沌が渦巻いていて何とも言えない味わいがある。天下を獲れなかった作品ならではの良さ。

ワン・ウェイの名を掲げた新作『#New Old School』というサプライズもあった2019年は、それに呼応して前身グループのABC音源4タイトルが2in1で復刻されたのも喜ばしかった。こちらは77年の2品をまとめたもので、ソウル・グループ然とした初作『Especially For You』も、ギャリー・グレン編曲の表題曲や“Tripped, Slipped, Stumbled And Fell”などの甘さがたまらない2作目『Cherish』も最高すぎる。洗練されてワン・ウェイ化していく時期の78~79年作を収めた『Spreading Love/Happy Feet』も当然オススメ。

ローカル~カレッジ~プライヴェート盤と未踏のファンクが追いつけないスピードでどんどん掘られてきてなお、こんなものが埋もれていた。前年にはマークIVの『Signs Of A Dying Love』を編んでいた英コーディアルから登場したこちらの発掘音源集は、スタックスなどにシングルを残していたシカゴのファンク・バンド、サンズ・オブ・スラムが解散前の77年頃に録音していたとされる9曲をまとめた一枚。当時に出てたら古めかしく思われたかもしれないロッキッシュな意匠が特徴的で、グルーヴィーでドス黒い疾走感が恐ろしくかっこいい。この時代らしいジャケの写真も良し。

LATOYA JACKSON My Special Love: Deluxe Edition Polydor/Cherry Pop(1981)
ポップ音楽史やソウル史における重要性などは関係なく、普通に出て普通に消えていった作品が普通に聴けるようになるのが良い。こちらはジャクソン兄弟姉妹の中で音楽的評価がもっとも低そうなラトーヤの2作目。弟マイケルも関与していた前作に続いてオリーE・ブラウンが大半をプロデュースし、ビリー・オーシャンのカヴァー“Stay The Night”の南国情緒や、兄弟たちの手によるダイアナ・ロス風味の軽いディスコ“Special Love”、彼女自身が妹ジャネットと共作した“Camp Kuchi Kaiai”のリゾート風情なんかはそれとなく2019年的だったかもしれない。

PRINCE 1999: Super Deluxe Edition Warner Bros./NPG/Rhino(Rhino)
外部提供曲の本人歌唱音源集『Originals』がコンパイルされ、NPG設立後の諸作が順次リイシューを開始するなど、ニュー・タイトルの相次いだプリンスの2019年、やはり最大の目玉はCD5枚組+DVDから成るこちらの〈Super Deluxe Edition〉だったはず。リマスターされた本編やシングルB面曲集、デトロイトでのライヴ録音などももちろん価値のあるものだが、ほぼ全曲がオフィシャルでは初出となるCD2枚分の未発表音源集が予想以上の素晴らしさだった。後に別の形で完成を見た楽曲のプロトタイプやヴァージョン違いなどもあって、生々しい息吹が伝わってくるのが楽しい。

VARIOUS ARTISTS Space Funk -Afro Futurist Electro Funk In Space 1976-84 Soul Jazz(2019)
未来志向のブギー/エレクトロ・ファンクをまとめたソウル・ジャズのいい仕事。サンティアゴのP風な“Bionic Funk”からビームを無駄撃ちするアーネスト・フリッピン2世の“Supersonic Space Lady”まで時代によって宇宙/未来観が変わるのも楽しく、中身は表題が連想させる以上に多様だ。エジプシャン・ラヴァーによるデイムなファンク“Computer Power”などはソウルの美意識から外れそうだが、現在では体系化されているディスコもヒップホップもエレクトロも未分化だった頃の大らかさで楽しみたい。このノリが好きな人なら未来に連れていきたくなるはずの名コンピ。

前年からのソーラー復刻の流れも各国で継続された2019年。シャラマーやウィスパーズのような大物はともかく、コラージュやキャリー・ルーカスらあまり光の当たってこなかった人たちのアルバムも改めて再評価の機会を得たはずで、なかでも快挙だったのはキャット・ミラーの唯一作となった本作の復刻。ベイビーフェイスやバーナデット・クーパーら敏腕レーベルメイトたちの采配で電化ファンク~ブラコン時代の作法をたっぷり含み、メロウな名曲“Be For Real”、リオン・ウェア自身の手による“I Want You”などが楽しめる。シリーズもこの調子で続いてほしい。

以上、ここまで大まかに年代順に並べてみたが、呼称が〈ソウル〉から〈ブラック・コンテンポラリー〉を経て〈R&B〉となるかならないかの時代に生まれたのが本作。近年のメインストリームで盛んな90年代リヴァイヴァル/オマージュに乗るには少し昔の作品となるが、メアリーJ・ブライジがちょうど『Herstory Vol.1』でキャリア初期をまとめていたように、ヒップホップ的なトラックメイクにソウルフルな歌唱を組み合わせる作法の先駆者となった本作ももう30年前のアルバムなのだ。そんな感慨込みで選出しつつ、単純に当時のレア音源などをまとめた編集盤としても秀逸。

59年に設立されたモータウンが60周年を迎え、節目に相応しくいろいろな企画盤なども登場した2019年だが、ここでは60年をCD3枚組に集約するという無理難題を形にしたこちらの日本産コンピを紹介。デトロイト時代のDisc-1、LA移転後のDisc-2、そしてメジャー傘下に入った88年以降の楽曲を集めたDisc-3という構成で、Disc-1~2には問答無用な名曲の数々が詰め込まれているのだが、Disc-3にてボーイズやシャニース、バイ・オール・ミーンズからネオ・ソウル時代のレミー・シャンド、ケム、BJ・ザ・シカゴ・キッドまでの系譜が一本に繋がれる様が美しい。
リイシューは甘い真冬の舌先で踊る
アナログ景気によってまた同じ作品がもう一周してLPリイシューされてたりすることもあって、ひと頃よりは山ほどCDリイシューが出ているわけではないですが、それでも気を抜くと見逃してしまう程度にいろいろ出ています。

まずはリヴァプールが生んだブリティッシュ・ソウル・グループの先駆者、リアル・シングのベスト盤『Best Of The Real Thing』(Sanctuary/BMG)から。全英1位を記録してUSのソウル・チャートにも飛び火した代表曲“You To Me Are Everything”(76年)を筆頭に“Can't Get By Without You”(76年)、“Can You Feel The Force?”(79年)など当時のディスコや後年のフリー・ソウル文脈で愛されたヤング&メロディアスな名演が2枚組30曲以上のヴォリュームで一気に楽しめます。初CD化音源もいくつかあり、さらには70年代の素晴らしい未発表曲“Someone Oughta' Write A Song(About You Baby)”も収録。あまり優先して語られないUKモノだけにこの機会に聴いてみるのもいいかもしれません。

で、続いては米南部に飛んで……コンスタントに続いているマラコの復刻シリーズから、まずはドロシー・ムーアの80年作『Talk To Me』(Malaco/Solid)を推薦。たぶん80年代にCD化されて以来の復刻だと思われますが、これは彼女がレーベルを離れる前に残した作品で(後に復帰)、ウェットでディープながらも可憐な歌声の魅力がたっぷり味わえます。同シリーズからはもう一枚、デニス・ラサールの85年作『Love Talkin'』(Malaco/Solid)も良品です。いかにも80年代ノリな派手さのあるザディコ風のアップ“My Tu-Tu”や“Someone Else Is Steppin' In”などパワフルなエナジーを浴びせられますよ。

JAMES REESE & THE PROGRESSIONS Wait For Me: The Complete Works(1967-1972) Now-Again(2020)
最後はまた何の流れもなく、ナウ・アゲインからとんでもない大皿、ジェイムズ・リース&ザ・プログレッションズの編集盤『Wait For Me: The Complete Works(1967-1972)』(Now-Again)が到着です。サウスキャロライナでナジマを主宰していたジェイムズ・リースといえば、ストーンズ・スロウの『The Funky 16 Corners』など2000年代初頭の発掘シーンで脚光を浴びたプロデューサー/トロンボーン奏者。これは彼が67~72年に残したリーダー音源などをコンプリートしたもので、もちろん資料価値を超える興奮があります! *出嶌孝次