普遍的なグッド・ミュージックを作りたい――根本に抱えた想いとモノ作りへのリスペクトが目には見えない煌めきを具現化するニュー・シングルが到着!

モノ作りへの想い

 2018年末にメジャー・デビュー5周年を記念したベスト・アルバム『STORIES』を発表し、2019年は1月に中野サンプラザにおいて初のホール・ライヴを開催。その後も、TVアニメ「ナカノヒトゲノム【実況中】」のエンディング・テーマとなったシングル“僕を見つけて”のリリースや、各公演で異なるテーマを掲げた全国ツアー〈fhána where you are Tour 2019〉の開催、〈COWNTDOWN JAPAN〉ほかのフェスへの出演など、精力的な活動を続けてきたfhána。そんな4人は、新たな目標に向かって着実に進みはじめているようだ。

 「改めて〈アーティスト活動の基盤を作っていきたい〉という話はしています。もちろんアニソンは大事にしていますが、アニメのタイアップ曲をリリースして、それに紐付いたライヴがあって……というだけでは、アーティストとして活動を継続していくのは難しいと思っていて。そのためにはfhána自体のファンになってもらいたいですし、ファンになってくれる人たちを大事にしていきたいと思っています。昨年末のツアーでも〈(観客が)アニソン・ファンかどうかということと関係なく、自分たちの世界観を表現することができた〉という実感があって。この方向性をさらに突き詰めたいですね」(佐藤純一)。

 「もちろん〈まだまだ、これからだな〉という感じはありますが、例えばフェスに出たときなどに、〈アニソン畑じゃない場所でも、いいパフォーマンスができている〉という手応えはあって。少しずつ自信みたいなものも付いてきました」(towana)。

 「望んでいる方向に進めている感覚は確かにありますね。フェスやイヴェントへの出演も増えているし、回数を重ねれば重ねるほど、経験値は増すので」(kevin mitsunaga)。

 劇場版「SHIROBAKO」の主題歌となった今回のニュー・シングル“星をあつめて”からも、メンバー4人の〈このバンドにしか表現できない音楽を追求したい〉という意思が伝わってくる。軽快なシャッフルのリズムと朗らかで解放的なメロディーライン、〈たとえ遠く離れたとしても、散らばった星をあつめて光を紡ごう〉という思いを込めた歌詞を軸にしたこの曲には、いま現在のアニソン/J-Popのフォーマットでは珍しい音楽的な要素が散りばめられているという。

fhána 星をあつめて ランティス(2020)

 「トレンド的にはシャッフルのリズムの歌モノの曲ってアニソンにもJ-Popにも少ないんですよね。メジャー・コードから転調してマイナー・コードから始まるサビもいまどきでは珍しいです。この曲を『SHIROBAKO』というビッグ・タイトルにぶつけるのは、なかなかのチャレンジだと思います。マーチングっぽい雰囲気やブラスから始まるアレンジなど、ビートルズの“All You Need Is Love”あたりのテイストもありますね。前回の“僕を見つけて”にもビートルズ的なストリングスを入れていたんですが、最近の自分の流行りなのかもしれないです(笑)。根本にあるのは、普遍的なグッド・ミュージックを作りたいということなんですけどね。いろいろな要素を織り交ぜていますが、完成した曲はポップに聴こえると思います」(佐藤)。

 「ギターの機材選びやフレーズにも、往年の名曲感はあると思います。あえてレンジを狭めて録っているし、音色を含めて、そこは狙った部分でもあります。音楽好きの人に〈こういう曲でモダンな音色にするなんて、わかってねえな〉と思われるのもイヤだし(笑)、モノ作りに対するリスペクトも込めたかったんです」(yuxuki waga)。

 アニメ制作の現場を舞台にした「SHI­ROBAKO」のストーリーと寄り添った歌詞のメイン・テーマは、〈モノ作りに関わる人たちの思い〉。それはもちろん、〈音楽〉という表現に真摯に向き合うfhánaの心情とも結び付いている。また、シリアスな状況を乗り越え、温かさ、大らかさを感じさせてくれるヴォーカルも、この楽曲のメッセージ性を際立たせていると思う。

 「歌詞に関しては〈創作の煌めき〉というイメージですね。芸術というのは、作り手のなかで生まれた煌めきや、この世界にもともと存在しているけど普通は見えない煌めきを集めて、みんなに届くように形にすることかなと。それは『SHIROBAKO』のテーマでもあり、僕が普段から考えていることでもあります」(佐藤)。

 「歌詞は基本的に林(英樹)さんと佐藤さんが考えているんですが、ここ最近の作品は、〈失ってしまった大切なものへの祈りと、その経験を経て創作を続けていくこと〉というてテーマが続いていて。“星をあつめて”もその流れにある曲だなと。『SHIROBAKO』の登場人物たちのモノ作りに対する思いともリンクしているし、それを星に例えることでナーバスになりすぎず、ポップに表現しているのもいいなって。レコーディングは緊張しましたね。私は以前から『SHIROBAKO』が大好きで、〈いちファンとして、いい歌にしたい〉という思いが強すぎてレコーディングでは緊張したんですが、劇場で曲を聴いた人に温かくてホッとした気持ちになってもらえたらという思いで歌いました」(towana)。

 

次に進むためには

 そして、カップリング曲にも4人の現在のモードが的確に反映されている。まず“Code“Genius”(English Ver.)”は、『ナカノヒトゲノム【実況中】』の挿入歌“Code Genius?”の英語詞ヴァージョン。原曲を亜咲花が歌唱した同曲は、作曲を佐藤、作詞を田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が手掛けたアッパー・チューンだ。

 「セカンド・アルバムに入っている“Re­lief”という曲があるんですが、ライヴですごく盛り上がるし、演奏していても楽しくて。そういうタイプの曲をセトリのなかに増やしたいと思ってたときに“Code “Genius”?”を英語詞ヴァージョンにしてfhánaの持ち曲にしたいと考えたんです。もともと気に入っていた曲だったし、年末のツアーのセトリに入れてみたら、やっぱりすごく楽しかったですね。この曲だけ撮影OKにしたので、SNSに投稿してくれる人も多かったです」(佐藤)。

 「(ライヴで披露した時点では)音源化してなかったので、お客さんは初めて聴くわけじゃないですか。ジッと聴いてくれてる人、kevin君の動きをマネして盛り上がっている人、写真を撮るのに一生懸命な人もいたりして(笑)。ライヴは自由に楽しんでほしいと思っているので、いろんな反応があったのは嬉しかったですね」(towana)。

 また、“世界を変える夢を見て”は、作曲を担当したyuxuki wagaいわく「久しぶりにアコギと歌で作った、日本のロックの流れにある曲」。切なさと力強さを併せ持ったメロディー、出会いと別れをリリカルに綴った歌詞は、幅広い層のリスナーにリーチしそうだ。

 「シングルが出る時期に合わせて卒業ソングにしたいと思っていたんですが、(林が手掛けた歌詞の)切り取り方がすごく良くて。〈次に進むためには、いま持っているものを何か手放さないといけない〉という、実は別れの歌でもあるんですよね」(yuxuki)。

 「歌詞の内容も曲調も、若い人から大人のリスナーの方まで聴いてもらえる仕上がりだと思います。歌は自由に歌わせてもらいました。yuxuki君はいつも〈好きに歌っていいよ〉と言ってくれるので」(towana)。

 「(yuxukiから)パートごとに〈リバースさせた音を入れて〉〈ここはリフっぽいシーケンスを〉とリクエストがあったので、自分のアイデアを入れつつ提案しました。たくさん使ってくれて嬉しかったです(笑)」(kevin)。

 サウンドメイクや歌詞のメッセージ性を含め、現在の方向性を明確に示した本作と共に2020年をスタートさせたfhána。バンドとしての個性をさらに発揮しはじめた4人の、今後の展開が楽しみでしょうがない。

 「ライヴで映える曲を増やしたい気持ちはありますね。そのためには音数を少なくして、ひとつひとつの音を立たせるサウンド作りがいいのかなと」(佐藤)。

 「もともとfhánaは、音源とライヴのギャップがあるバンドだと思っていて。そこを際立たせるのもおもしろいでしょうね」(towana)。

 「やりたいことはいろいろありますね。4人でガチのエレクトロニカをやってたらどうなるかな?とか」(kevin)。

 「自分たちのやりたい方向の曲で活動できるようになってますからね、徐々に。(30分近く轟音ノイズを鳴らし続ける)マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの“You Made Me Realise”みたいな曲もいいかも……冗談です(笑)」(yuxuki)。