世界中のポップ・パンク・ラヴァーに愛されてきた4人が原点回帰のプロセスを経て世に問う進化の一撃! 眩しい陽光に照らされて新しい息吹が目を覚ました!
原点に立ち戻ってみた
グリーン・デイよりも、ブリンク182よりも、さらに言えば、ニュー・ファウンド・グローリーよりも新しい世代のポップ・パンク・ヒーロー、オール・タイム・ロウ(以下ATL)が2017年に発表した『Last Young Renegade』は、新世代ならではの感性が存分に発揮された極めてチャレンジングなアルバムだった。バンドにとっては2度目のメジャー挑戦となる、ある意味での勝負作。R&B、トロピカル・ハウス、エレポップも採り入れ、メインストリームのポップ・サウンドにぐぐっと接近するというチャレンジは、売れ線を狙ったと言うよりもむしろ、女性ファンに悲鳴に近い黄色い歓声を上げさせることも楽しみながら、多くのポップスターたちと同じ土俵で戦ってきたバンドらしい向こう意気の発露であると同時に、ミュージシャンとしてさらに成長したいという向上心を追求した結果だったと受け止めるべきなのだと思う。
当時、アレックス・ガスカース(ヴォーカル)も言っていた。「ATLを始めてから間もなく15年になる。しかも、今年(2017年)はメンバーにとって20代最後の年だ。だから新しいことにトライして、自分たちの可能性をもっと広げたかった」と。
そんな『Last Young Renegade』のリリースから2年10か月。北米、アジア、ヨーロッパを回る大規模なツアーを成功させたATLがそれに続く8枚目のアルバム『Wake Up, Sunshine』を、前作と同じフェルド・バイ・ラーメンからリリースした。
ALL TIME LOW Wake Up, Sunshine Fueled By Ramen/ワーナー(2020)
「僕らは原点に立ち戻ってみたんだよ」とアレックスも語っている通り、今回は、前作のベクトルとは180度逆の原点回帰を思わせるものになっているところが興味深い。『Last Young Renegade』における挑戦がメンバーたちにとって、いかに大きなものであったかが、その反動の大きさから窺えるが、原点回帰のきっかけは、実はもうひとつある。それは彼らがブレイクするきっかけとなったサード・アルバム『Nothing Personal』(2009年)がリリース10周年を迎えたことを記念して、アニヴァーサリー・ライヴを開催したことに加え、セルフ・トリビュート・アルバム『It's Still Nothing Personal: A 10 Year Tribute』を配信リリースしたことだ。
ちなみに『Nothing Personal』はその前作にあたる『So Wrong, It's Right』(2007年)の全米62位を58ポイントも上回る全米4位を、チャート初登場で記録。そんなブレイクをステップにメジャー・デビューを果たしたATLは、ぐいぐいとメインストリームに食い込んでいったわけだが、『Nothing Personal』の曲を改めてレコーディングしながら、メンバーたちが人気急上昇を含む当時のバンドの勢いや、メインストリームに殴り込んでやる、と燃やしていたであろう闘志を思い出したことは想像に難くない。そして、じゃあ今度、アルバムを作るなら!と一気に『Last Young Renegade』の時とは逆方向に気持ちが向いていった――ということなんだと思う。