『ブラック・イズ・キング』は親から子へのメッセージ

そんなすごいエンタープライズとビヨンセがガッチリ組んで『Beyoncé』(2013年)、『Lemonade』(2016年)に次ぐ3本目の〈ヴィジュアル・アルバム〉を作るのだから、その期待と不安はすごいものだったのですが、ちゃんと『Lemonade』の延長線上にある作品でした。

Beyoncé from “Black Is King” photo by Travis Matthews © 2020 PARKWOOD ENTERTAINMENT
​ディズニープラスで配信中
 

今回のプロジェクトにはファレル・ウィリアムス、そして夫のジェイ・Zと娘ブルー・アイヴィーちゃんにビヨンセのお母さん(ティナ・ノウルズ)など豪華ゲストが参加、このヴィジュアル・アルバムの元となっているアルバム『The Lion King: The Gift』(2020年)に参加していたケンドリック・ラマーらが登場しなかったのは残念ですが(もちろん音では登場します)、そんなの気にならないファッション、イメージで楽しませてくれます。一体予算はどれくらいで作っているんですかね。

ディズニーだから子供向けになるのかなと思っていたりもしたのですが、『Lemonade』のエグさ(失礼)、エロ(またまた失礼)、セクシーさとアーティーな部分は何一つ変わってなかったです。『Lemonade』を超える部分がなかったのは残念ですが、三部作と考えれば完璧な仕上がりでしょう。『Beyoncé』が自分とは何かの探究、『Lemonade』が全ての女性に向けたエンパワーメント、そして今作『ブラック・イズ・キング』が子供たちへのメッセージ。子供には難解かもしれませんが、親が子供たちへ伝えるメッセージと考えれば、これでいいのかと。

 

自分はどう生きるのかを考えるための神話

『Lemonade』『ブラック・イズ・キング』とブラックすぎるのではという批判もあるかもしれませんが、自分が何ものかということを語れない人は、普遍的なことを語れないと思います。僕は『ブラック・イズ・キング』のアフリカンな感じ、かっこいいなと思いました。『ブラック・イズ・キング』の黒さに惹かれるのは、北欧神話、ギリシャ神話、もちろんアフリカの神話などに魅了されるのと一緒ですよ。僕らと違った人たちの文化、美しさに触れながら、同じ人間として共通している部分に感動を覚えながら、自分たちはどうやって生きていこうかと考えるきっかけになればいいんです。それが僕らが神話に魅力される一番の理由ですよね。

ビヨンセは最新の技術、音楽、ファッションなどを駆使しながら、未来に伝える自分たちの神話を作ろうとしているんだから、すごいアーティストだなと平伏してしまいます。

しかし、ビヨンセさん、次はどうするんですかね。ディズニー共々、目が離せません。