数多くのロック・レジェンドたちを撮影してきたカメラマンにして、ウェブ・マガジン〈久保憲司のロック・エンサイクロペディア〉を運営するなど音楽ライターとしても人気を博すクボケンこと久保憲司さん。Mikikiにもたびたび原稿を提供いただいております。そんなクボケンさんによる連載が、こちら〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉。動画配信サーヴィス全盛の現代、クボケンさんも音楽そっちのけで観まくっているというNetflixなどの作品を中心に、視聴することで浮き上がってくる〈いま〉を考えます。

今回は、去る7月31日よりDisney+ (ディズニープラス)で世界同時配信されているビヨンセのヴィジュアル・アルバム『ブラック・イズ・キング』を紹介。稀代のディーヴァが監督・脚本・製作総指揮を務めた同作は、ビヨンセが昨年リリースしたアルバム『The Lion King: The Gift』の音楽をベースに製作されました。黒人の歴史や文化を圧巻の映像美に紡いだ『ブラック・イズ・キング』で、ビヨンセが伝えたかったこととは? *Mikiki編集部

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ディズニーは動画配信も制すのか?

動画配信サービスというのはNetflixの一人勝ちになるんだろうと思っていたら、エンターテインメントの王者ディズニーの参入によって、これからどうなっていくのか全く分からない時代になったなと思っている久保憲司です。

僕が子供の頃、70年代のディズニーってあかん会社でした。その前は画期的なアニメーション映画を作っている凄い会社で、日本のアニメもディズニーの模倣から始まったのです。会社ってジェットコースターみたいですね。そして、84年にマイケル・アイズナーがCEOに就任してからの劇的な売り上げアップ、彼の豪腕ぶりは伝説ですが、一番の功績がディズニーランドのチケットを1,000円上げたことというのが笑ってしまいます。彼以外誰も〈入場料安すぎるやろ〉と気づいてなかったって。それによって得られた資金力で一大総合企業になったのです。もちろんこれだけじゃないですけどね。

そんなマイケル・アイズナーだから、制作、配給をやっていたピクサーのスティーヴ・ジョブズとはうまくいってなかったのですが、アイズナーとは正反対にソフトなロバート・A・アイガーが次のCEOになると、ピクサーを買収するという形で関係を修復。その後はマーベル・コミック、ルーカス・フイルム、21世紀フォックスを買収、とにかくディズニーはとんでもないことになっていったのです。

そんなディズニーがストリーミングというかプラットフォームというか、サブスクリプションというのかそんなのに乗り出すんだから目が離せないわけです。画質もNetflixより立体感があるように感じられます。この辺の技術の違いがどうなっているのかとっても知りたいです。ディズニーだから子供にも安心して観せられる。しかもヴァーチャルだけじゃなく、〈ランド〉も持っている究極のプラットフォーム、今後の展開が予想できません。

日本もサンリオ、バンダイ、ジブリ、円谷プロ、東宝、東映など、ディズニーみたいなことをできる会社がたくさんあるんですから、やり方をパクって、ディズニーに負けないプラットフォーム会社を作ってもらいたいものです。