コラム

映画「劇場版 SHIROBAKO」仕事とは悪あがきだ。アニメ制作についてのアニメが教えてくれる〈働くこと〉の哲学

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仕事とは最後まで悪あがきをすること

映画の後半で繰り返し登場するキーワードは、〈悪あがき〉だ。「劇場版 SHIROBAKO」で大人たちは、締め切り=タイム・リミットがやってくるまで、〈仕事〉という枠組みのなかで、必死に悪あがきをしている。ああでもない、こうでもない、いや、これだ、ちょっと待て、こっちかもしれない、う~ん、しかし……。迷いと決断との間を揺れ動きながら苦悶し、〈仕事〉をこなし、〈万策尽きる〉一歩手前で踏み留まり、〈作品〉というゴールへと牛歩で、だがジリジリと漸進していく。

なぜ、悪あがきをするのか。それは、あきらめられないからだ。現状に満足せず、この先に〈より良いもの〉があるはずだという確信を持っていることが、みっともない悪あがきに尽きないエネルギーを供給している。

思うに、TV版と劇場版を通して「SHIROBAKO」が語ったことは、仕事とは最後の最後まで悪あがきをすることなのだ、ということではないだろうか。美しくなくても、かっこよくなくても、悪あがきをすること。終わりなき〈俺たたエンド〉を生きざるをえない私たちの労働とその日々を、「SHIROBAKO」は褒め称えてはくれないまでも、〈かっこわるくても、汗まみれでも、それでいいんだ〉と優しく包み込んでくれる。

 

これほどスタッフ・ロールが尊く感じられる映画もない

そんなふうに「SHIROBAKO」の泥臭い側面についてばかり語ってしまったものの、この映画の魅力は、もちろんそれだけではない。

現実の仕事は重力に縛りつけられているが、アニメーションはいくらでも空想を広げて、自由に飛んでいけるのだ。ミュージカルにアクション、任侠モノ、宇宙でのSF冒険活劇……と、「劇場版 SHIROBAKO」は〈アニメ制作〉が主題であるにも関わらず、いや、だからこそ〈アニメ〉というアートの粋を集めた夢幻の映像が目まぐるしくスクリーンから飛び出してくる(P.A.WORKSファンにはおなじみの〈屈伸からのうさぎ跳び〉も!)。

欲を言えば、もうあと2時間、いや、4時間観たかった。宮森たち5人の葛藤を、〈仕事人〉たちが汗をかいて苦闘する姿を、もっと観たかった。というわけで、ぜひ続編を……! 宮森が〈島耕作〉シリーズのように、やり手プロデューサー、そして制作会社の社長へと成り上がって作品を生み出していく一代記を観たい(なんてことを考えていたら、P.A.WORKSの社長で「SHIROBAKO」のプロデューサーである堀川憲司がまったく同じことを言っていて驚いた)。

最後に、これほどスタッフ・ロールが尊く感じられる映画もない、ということを言っておきたい。fhánaの“星をあつめて”とともに下から上へと流れていく数えきれないほどの人々の名前を見ながら、思わずうるっときてしまった。

 


FILM INFORMATION
劇場版 SHIROBAKO

原作:武蔵野アニメーション
監督:水島努
シリーズ構成:横手美智子
キャラクター原案:ぽんかん⑧
キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味
美術監督:竹田悠介・垣堺司
色彩設計:井上佳津枝
3D監督:市川元成
撮影監督:梶原幸代
特殊効果:加藤千恵
編集:髙橋歩
音楽:浜口史郎
音楽制作:イマジン
主題歌:fhána “星をあつめて”(ランティス)
プロデュース:インフィニット
アニメーション制作:P.A.WORKS
配給:ショウゲート
製作:劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

■キャスト
宮森あおい CV:木村珠莉/安原絵麻 CV:佳村はるか/坂木しずか CV:千菅春香/藤堂美沙 CV:髙野麻美/今井みどり CV:大和田仁美/宮井楓 CV:佐倉綾音/矢野エリカ CV:山岡ゆり/安藤つばき CV:葉山いくみ/佐藤沙羅 CV:米澤円/久乃木愛 CV:井澤詩織/高橋球児 CV:田丸篤志/渡辺隼 CV:松風雅也/興津由佳 CV:中原麻衣/高梨太郎 CV:吉野裕行/平岡大輔 CV:小林裕介/木下誠一 CV:檜山修之/葛城剛太郎 CV:こぶしのぶゆき/山田昌志 CV:浜田賢二 ほか

http://shirobako-movie.com/
Twitter:@shirobako_anime(ハッシュタグ #musani)
©2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会
大ヒット上映中

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