北から南へと旅する青年の物語を〈上〉と〈下〉のCD2枚組で表現したニュー・アルバム。共に大作だった1975とヴァンパイア・ウィークエンドの最新作と並べても決して違和感のない、堂々たる傑作だ。ここで鳴らされているのはジャンルがブレンドされ、生楽器とエレクトロニクスが溶け合う現代のバンド・ミュージック。聴き心地はロックだが、音響はDAWで微細に構築されていて、80年代ポップスの昂揚感を今に蘇らせた楽曲はどれも力強い。クラップがプリミティヴな熱量を感じさせる“流氷”に始まり、映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」におけるマット・デーモンの吹替え担当によるナレーションを挿んでポスト・パンクなリズムが躍動する“太陽”に至るまで、この旅を存分に堪能してほしい。