(左から)尾崎雄貴、岩井郁人

2022年10月11日、突如発表されたGalileo Galileiの〈始動〉。2016年の終了から、実に7年が経とうしていた時のことだった。ファンは驚いたのと同時に、当然、歓喜にわいた。そんな中、ここについに届けられた新しいGalileo Galileiの〈ファーストアルバム〉である『Bee and The Whales』は、尾崎雄貴(ボーカル/ギター)、岩井郁人(ギター)、尾崎和樹(ドラムス)、岡崎真輝(ベース)の4人だけで音楽を奏でることの喜び、ピュアネスに満ち満ちている。しかし、コインの表と裏のように、そこにはシンプルな喜びに留まらないものも、アルバムには刻まれているのだった。バンドの始動と7年ぶりの新作について、雄貴と岩井に聞いた。

Galileo Galilei 『Bee and The Whales』 Ouchi Daisuki Club/Suzume Studios/Virgin Music(2023)

 

改めて、こんにちは

――Galileo Galileiが始動するというニュースを聞いて、とても嬉しかったです。この7年間、BBHFなどでの活動はもちろんあったのですが、Galileo Galileiの不在を感じる瞬間が多かったんですね。雄貴さんや岩井さんと同世代や下の世代のミュージシャン、リスナーと話していると、頻繁に名前が挙がったんです。そういう声や影響力を意識したことはありますか?

尾崎雄貴「〈他人に影響を与えよう〉というより、〈自分を知ってほしい、理解してほしい〉という思いで音楽をやっていたので、当時は考えていませんでした。

でも今回、色々と取材を受けていて、〈最近、若いアーティストにインタビューすると、Galileo Galileiがルーツだという人が増えている〉とライターさんから聞くんです。それに、〈ラジオ局の誰々さんが好きだった〉とか、〈北海道のテレビ局の方が応援してくれていた〉とか、そういう声も耳に入ってくるようになった。それは、単純に嬉しいですね。その人たちをこれからどう楽しませられるかなと思っているので、〈改めて、こんにちは〉という感じです」

岩井郁人「昔は、むしろ孤独感があったよね」

雄貴「目の前にいるファン以外は僕らに興味ないだろう、知らないだろうと思っていました。ぶっちゃけ、それは今も変わっていない。バンドを終了させるまで、Galileo Galileiは他のアーティストとの交流は少なかったし。BBHFで、やっとそういうことを始めました」

――バンドを始動させても、その感覚は変わらないんですね。

雄貴「たとえば、Hump BackのベースのぴかさんはGalileo Galileiのファンとしてライブに来てくれるのですが、僕は他のファンに対するのと同じ感覚で、いいライブを見せよう、いいアルバムを聴いてほしいとしか思っていないんです。

僕が影響を受けて憧れているBUMP OF CHICKENのライブに先日行き、やっとお会いできたんですけど、BUMP OF CHICKENが音楽を始めるきっかけをくれた事実は、僕の中でずっと生き続けている。それと同じで、Galileo Galileiを好きだと言ってくれる人の顔が見えるようになってきても、特別何かを投げかけたいと思わないし、僕らは僕らであり続けたい、もっといい音楽を作りたいだけ、というのが正直なところですね。

でも、〈Galileo Galileiをきっかけに洋楽を聴くようになった〉と聞くことが増えて、それは意図的に種蒔きをしていたことなので嬉しいんです。〈きっと実らないだろう〉と思ったけど頑張ったことなので、芽吹いてきたのが見られてよかった」

――クリストファー・チュウさん(POP ETC)との友情に限らず、Galileo Galileiは海外のアーティストやシーンへのゲートウェイになっていますよね。

岩井「最近、SNSでは以前から繋がっていたとある海外のアーティストと直接会うことができたんです。僕たちのアルバム制作中に、セッションが実現したんですね。東京のスタジオに集まって僕たちの楽曲をアレンジして一緒に演奏したり、彼の曲たちとマッシュアップしたり」

雄貴「一緒にアレンジしてね。〈どんな感じにしようか〉って話しながら音を出していたら、〈その音、warbearのあの曲のやつだよね〉〈そのサンプル、BBHFのあの曲で使っていたよね〉って、めっちゃ嬉しそうに言ってくるんですよ」

――オタクだ(笑)!

雄貴「僕の歌詞にもめちゃめちゃ詳しくて(笑)。セッションが終わったあとにインタビューを受けたんですけど、感極まって彼が涙を流す場面があって、驚きました。そんなふうに思ってもらっていたなんて、会えてよかったなって。彼と一緒にセッションした曲もいずれ発表できるといいですね。

一方で、僕らの曲がYouTubeで爆発的に聴かれたり、TikTokでバイラルヒットしたりすることはないので、数字には表れないんですよね。みんな密かにGalileo Galileiが好きで、表立って発信してくれないのかなって(笑)。発信してほしいとも思っていないんですけど」