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コラム

ザ・クロマニヨンズ『MUD SHAKES』ただ純粋にかっこいいロックンロールが実を結んだ15年目のアルバム

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2020年のザ・クロマニヨンズ

 ヘビを描いたジャケットに包まれたニュー・アルバム『MUD SHAKES』は、いつものようにヒロトとマーシーが6曲ずつを作詞作曲した12曲、そしてモノラル録音。いきなりキース・リチャーズ風のかっこいいリフで〈おっ!〉と思わせるオープニングの“VIVA! 自由!!”は、間奏にザ・フーを思わせるフレーズをぶち込んだり、遊び心いっぱいの明るいシンガロング・チューン。2曲目の“暴動チャイル(BO CHILE)”でぐっとスピードを上げ、“浅葱色”“新オオカミロック”と、明快なロックンロールを連ねて痛快にぶっ飛ばす。“浅葱色”の♪パダン、パダン(と聴こえる)コーラスは、シャンソンの〈パダンパダン〉と関係あるのだろうかと、突拍子もないことを考える。マーシー作の“カーセイダーZ”は、ネタばらしをしてしまうと〈稼いだぜ〉の言葉遊びで、金が欲しくて働いて眠るだけの日々を送る我らへの(たぶん)応援歌。言葉遊びの裏側に人生のユーモアとペーソスをそっと張り付ける、そんな歌作りがマーシーもヒロトも相変わらず抜群にうまい。

 中盤はちょっと曲調を変えて。ヒロト作の“ドンパンロック”は、どことなく60sポップスやマージー・ビートを思わせるノスタルジックなムードが魅力的で、マーシーの“妖怪山エレキ”は、モータウン調の弾むベースラインにドゥワップ・コーラスを混ぜ込み、ヴィブラスラップのとぼけた音色が大活躍する楽しい一曲。なぜか演歌のイメージが強いヴィブラスラップだが、10曲目の“新人”にも出てくるし、前作の“長い赤信号”でも使われていた。なんであの妙な音が好きなのか、今度会ったら訊いてみよう。

 ザ・クロマニヨンズのライヴにおいては必ず1曲はヒロトがハーモニカを吹きまくる見せ場があるが、このアルバムでは“暴動チャイル(BO CHILE)”、そして終盤の“メタリックサマー”“空き家”の3曲でたっぷり聴ける。きっとライヴで吹きたいんだろう。ヒロトのハーモニカは、ブギ連の相棒・内田勘太郎もべた褒めだった。そのブギ連のインタヴュー時にヒロトは、シュガー・ブルーが吹くローリング・ストーンズ“Miss You”のハーモニカを死ぬほど練習して、ベンドとフェイクを学んだと語ってくれた。ヒロトにとって初の別バンド活動は、たぶん今回の『MUD SHAKES』にも、良い意味で有形無形の影響があるように思う。

 アルバムは、マーシー作の2曲で何とも言えない余韻を残して終わる。“ふみきりうどん”は、どことなくフリーを思わせる粘っこいロックンロールで、踏切の音を模した(たぶん)カウベルの音が可笑しい。“かまわないでくださいブルース”はスライド・ギターが絶品で、〈ほっといてください、かまわないでください〉と繰り返すだけの、反抗というよりはぐうたらな歌詞、ドゥワップ・コーラス、怠いブルース・フィーリングの組み合わせがいい。という全12曲。ああ今回も楽しいアルバムだった。最高のアルバムだった。

 先行き不透明なリリース・ツアーの代わりに、今回は12月11日に〈ザ・クロマニヨンズ『MUD SHAKES』全曲配信ライブ〉の開催が発表されている。生の迫力には替えがたいものの、それは2020年のいましか体験できない、貴重なライヴになるだろう。15年目のザ・クロマニヨンズ、これからもキープ・オン・ロッキンでよろしく。 *宮本英夫

ザ・クロマニヨンズの2020年の作品。

 


【LIVE INFO】
ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 全曲配信ライブ 実施決定!
2020年12月11日(金)21:00~
詳細はオフィシャルHPをチェック!

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