新作のエッセンスとなったサムシング・イン・コモン

 カニエの『Late Registration』とコモンの『Be』が重なった2005年に本誌では〈シカゴ特集〉をやっていて、そこで〈コモンの相棒だったノーIDはどうしているのだろう?〉と呑気なことを書いていたのだが、まさに隔世の感があるとはこのことだ。その2005年にソー・ソー・デフ入りしたノーIDは、ジャーメイン・デュプリの片腕としてジャネットらを手掛けて再浮上、地元ではライムフェストらを送り出してもいた。『808s & Heartbreak』(2008年)にて弟子のカニエと再会してからはジェイZの“D.O.A.(Death Of Auto-Tune)”やドレイク“Find Your Love”を手掛け、カディにJ・コール、ビッグ・ショーン、リアーナ、プッシャー・T……とG.O.O.D.やROC周辺の常連に。『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』に『Watch The Throne』、そして『Yeezus』『Magna Carta... Holy Grail』といった王様盤にも助力した。

 一方で2011年にはデフ・ジャムとのジョイント・ヴェンチャーでアーティウムを設立。ジェーン・アイコやイライジャ・ブレイク、盟友コモンらと契約していく傍ら、外部でもナズやメラニー・フィオナ、ロジックらと積極的に手合わせし、先日もヴィンス・ステイプルズの『Shyne Coldchain Vol II』に深く関与したばかり。今後もコモンと歩みを共にしながら、往年のヒップホップを知るシーンのメンターとして、真摯に力を発揮していくことだろう。

 

▼ノーIDのプロデュース参加した作品を一部紹介

左から、ジェイ・Zの2009年作『The Blueprint 3』(Roc Nation/Atlantic)、ドレイクの2010年作『Thank Me Later』(Young Money/Cash Money/Republic)、カニエ・ウェストの2010年作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』(Roc-A-Fella/Def Jam)、ナズの2012年作『Life Is Good』(Def Jam)、メラニー・フィオナの2012年作『The MF Life』(SRC/Republic)、ノーIDの97年作『Accept Your Own & Be Yourself (The Black Album)』(Relativity)
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