*2020年3月19日追記
〈ザ・クロス・トーク・プラス〉延期のおしらせ
2020年3月21日(土)に東京・赤坂サントリーホール ブルーローズで開催を予定されておりました〈JCCA PRESENTS ザ・クロス・トーク・プラス 音と言葉で振り返る二人の巨匠の昭和と平成〉は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため2020年9月18日(金)に延期となりました。詳細は主催者のオフィシャルサイトをご確認ください。
http://www.jcaa1970.com/images/notice_of_postponement_tctp_2.pdf
〈ザ・クロス・トーク・プラス〉
レジェンドからのコンテンポラリーなレガシーの贈り物
湯浅譲二は1929年8月12日、一柳慧は、1933年2月4日に生まれた。1929年には世界大恐慌が始まり、1933年にはドイツにヒトラー政権が誕生した。2020年の誕生日が来ると、湯浅は満91歳、一柳は満88歳になる。そして、二人とも、作曲歴は戦後初期からだから、約70年に及ぶ。
この二人のレジェンドが登壇し、70代の北爪道夫と、2020年に還暦を迎える猿谷紀郎を訊き役にして、来し方を振り返り、合わせて、二人の作品から、1950年代より2010年代までの幅広い時期に及ぶ7曲もが演奏される。ピアノ曲や尺八曲など、内容も多岐に及ぶ。しかも演奏者には作曲家本人の信頼する人たちばかりが揃う。待ってました! 快哉を叫びたくなる。
というか、こういう催事は、東京のような文化集積度の高い巨大都市においては、本当なら、毎週のように開かれていてもおかしくない。日本のクラシック・現代音楽の世界は、レジェンドから若手まで、綺羅星のごとき作曲家たちに恵まれ続けてきた。きちんと紹介し続けようとしたら、幾らコンサートをやっても、放送番組やCDを作っても、正直足りない。
ところが現状はまるでそうなっていない。以前よりもかえって悪いだろう。1960年代から90年代にかけては、政府、公共機関、放送局、レコード会社、演奏団体、音楽鑑賞団体等が、自国の文化の発展にはクラシック音楽の分野でも新しい創作が欠かせぬとの目的意識を、今よりは幅広く共有していた。でも、そういうコンセンサスは、もはやすっかり弱っている。現代美術なら、二年毎のビエンナーレや三年毎のトリエンナーレの企画運営を地方自治体が競っている。アニメやゲームの文化に対しては、クール・ジャパンだとか言って、公的資金がふんだんに投じられている。雅楽や能や狂言や歌舞伎もそれなりに守られている。クラシック音楽の演奏家も、十分ではないにしても様々な援助を受けているだろう。しかし、クラシック・現代音楽の作曲家は? ポピュラー・ミュージックと伝統音楽の谷間に堕ちて、存在意義を忘却され始めている気がする。
その意味で、今回の企画は注目に値する。湯浅と一柳という人間国宝的大作曲家を組み合わせて、この国の音楽史の財産を確認させようという趣旨はもちろん素晴らしい。が、それだけではない。催しを主催する団体が日本作編曲家協会なのだ。クラシック・現代音楽系の作曲家が長年集ってきた日本現代音楽協会でも日本作曲家協議会でもない。ポピュラー系やセミ・クラシック系の、大切な仕事をしながら世間から軽んじられがちだったアレンジャーが主体となって結成され、そこに、現代音楽の系統まで含む、いろんな畑の作曲家も加わって、組織を大きく強くしてきたのが、日本作編曲家協会である。実績に対し評価の不十分だった編曲家たちの思いが基にある団体だから、常識に異議申し立てをしたり、大切なことを社会に発信しなければいけないという、組織としてのカルチャーを持っているのだろう。現在の会長は服部克久、副会長は小六禮次郎と三枝成彰。そして常任理事のひとりに猿谷紀郎、理事のひとりに北爪道夫が入っている。
クラシック・現代音楽の作曲家は生きていくのが大変。でもポピュラー系の人たちなら、相応に大金も転がり込む。そんな時代ではなくなりつつある。ネット環境を中心として、ストレートな物言いをすれば、お金を払わないで音楽を楽しむ習慣が広がる中、作曲家団体も料簡を変えていくことが求められているだろう。元はポピュラー系主体の日本作編曲家協会が湯浅と一柳を顕彰する催事を開くのは、ポピュラーとクラシック・現代音楽の区別に拘らず、大同団結して音楽文化を考え直そうという、新しい機運を齎すのではないか。
何だかとても希望を感じる。
湯浅譲二(Joji Yuasa)
1929年福島県郡山市生まれ。独学で作曲を始める。49年慶応義塾大学教養学部医学部進学コースに入学。在学中より秋山邦晴、武満徹らと親交を結び、51年〈実験工房〉に参加、作曲に専念する。以来、オーケストラ、室内楽、合唱、劇場用音楽、インターメディア、電子音楽、コンピュータ音楽など、幅広い作曲活動を行っており、国内はもとより、世界の主要オーケストラ、フェスティバルなどから多数の委嘱を受けている。
一柳慧 (Toshi Ichiyanagi)
神戸出身。作曲家、ピアニスト。10代で毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位を2度受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し、1961年に帰国。偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。作品は国内のオーケストラはもとより、フランス国立管弦楽団、BBC交響楽団、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロフィルなどにより世界各国で演奏されている。
LIVE INFORMATION
JCCA PRESENTS ザ・クロス・トーク・プラス
音と言葉で振り返る二人の巨匠の昭和と平成
2020年3月21日(土)13:30開場/14:00開演 ※延期
2020年9月18日(金)東京・赤坂 サントリーホール ブルーローズ
開場/開演:18:00/18:30
出演:湯浅譲二/一柳 慧/北爪道夫(聞き手)/猿谷紀郎(聞き手)
演奏:三橋貴風(尺八)/吉村七重(二十絃箏)/松原勝也(ヴァイオリン)/三宅依子(チェロ)/篠田昌伸(ピアノ)/藤原亜美(ピアノ)
曲目
■湯浅譲二
プロジェクト・トポジク(59年)ピアノのための
内触覚的宇宙III(90年)-虚空-二十弦箏と尺八のための
芭蕉の句による四つ心象風景(2007-2010年)ヴァイオリンとピアノのための
■一柳慧
ソナタ(54年)ヴァイオリンとピアノのための
タイム・シークエンス(76年)ピアノのための
イン・メモリー・オヴ・ジョン・ケージ(92-93年)
尺八とピアノのための「ミラージュ」(1998)
デュオ インターチェジ(2011年)ヴァイオリンとチェロのための
※曲目は都合により変更なる場がございます。 予め了承ください。