ニューヨーク・ドールズ(New York Dolls)のギタリストとして知られるシルヴェイン・シルヴェインが、2021年1月13日に亡くなった。享年70。死因は癌と報じられている。彼は、2019年から闘病を続けていた。
1951年にエジプト・カイロで生まれたシルヴェインは、幼少期に家族とともにニューヨークへと移住。71年、ニューヨーク・ドールズにギタリストとして加入し、猥雑なファッションとワイルドなギター・プレイで、バンドに艶と彩りを加えた。ドールズのプリミティヴなサウンドは、勃興期にあったロンドンのパンク・シーンに多大な影響を与えたと言われている。バンドは77年に解散(2004年に再結成)。以降もシルヴェインは、クリミナルズ(The Criminals)やソロ名義でご機嫌なロックを届けてくれた。
シルヴェインの逝去を受けて、日本でも中川敬(SOUL FLOWER UNION)やMAGUMI(LÄ-PPISCH)ら多くのミュージシャンが哀悼の意を込めたツイートを投稿していた。今回Mikikiは、ドレスコーズの志磨遼平に、シルヴェインの追悼コラムの執筆を依頼。毛皮のマリーズ時代に、再結成したニューヨーク・ドールズの来日ツアーで共演をはたした志磨が、不世出のロックンロール・アイコンの輝きを振り返る。 *Mikiki編集部
シルヴェイン・シルヴェインの訃報。
— 志磨遼平(ドレスコーズ) (@thedresscodes) January 15, 2021
まさかの共演が叶った夜、ぼくらのステージに誰よりも興奮してくれた事は一生の誇りです。ぼくのTシャツを奪っていったことも!
あなたにグレイト・ビッグ・キスを、どうか安らかに。 pic.twitter.com/YIqlF2zH4C
とびきり下品な格好でロックンロールをやる
くるくるの巻き毛に大きな瞳、たっぷりのチークと真っ赤なリップ。プラットフォーム・ブーツの踵を向けると、ハート型にくり抜かれたおしりから女性用の下着がのぞいている。
愛用のレスポールにはピンナップ・ガールのステッカーが2枚。きっとあなたも見覚えがあるだろう、後にこのギターは海を渡ってセックス・ピストルズのギタリストのものとなる。
エジプト生まれの小柄な男の名はシルヴェイン・シルヴェインといった。初めはファッション業界に身を置いていたが、ニューヨークでミック・ジャガーにそっくりなシンガーとライオンのように立派なたてがみのギタリストに出会い、その一味に加わることとなる。彼らは 〈ニューヨーク・ドールズ〉と名乗った。
彼らのアイデアはこうだ。今どきロックンロールをやるなら、ニューヨークの芸術家連中を相手にやらなきゃならない。奴らですらも目を剥くような、とびきり下品な格好で。
モラルのかけらもない音楽と喧嘩腰の態度、そしてファッション・ヴィクティムのシルヴェインが腕によりをかけたケバケバしい衣装がウケにウケ、ドールズはアンダーグラウンド・シーンで一躍有名となる。
しかし、彼らが物好きなインテリや一攫千金を狙う業界人たちとうまくやれるはずもなかった。彼らは本物のギャングだったからだ。彼らが極東の島国で路頭に迷っている頃、イギリスでは彼らのアイデアを真似たバンドが大流行していた。
たてがみのギタリスト、ジョニー・サンダースはイギリスに招かれ、〈偉大なるパンクの先駆者〉として崇められたのちにトラブルにまみれて死んでしまった。