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©ogata

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 たしかにリストが現代に生きていたら、迷わずYouTubeを駆使していただろう。彼の演奏旅行は、レコードもない時代、パリで人気を博した最新ヒット曲をヨーロッパ各地に広める役割も果たしていた。後年指揮者としても活躍し、現在のリスト音楽院を創設したことでも知られるが、そうしてピアニストの枠を飛び越えていく生き方にも強く惹かれると角野は言う。

 「時に演奏家をいつやめるか、ということを考えたりもしますからね。ピアノを弾くだけで一生を終えるつもりはありません。同時に、クラシック音楽をできるだけ多くの人に聴いてほしいという思いも揺らぎません。発信者の責任って、自分が音楽的に面白いと思うことを妥協しない誠実さにあると思うんです。音響の観点からセットリストを編むことだったり、21世紀に存在する多様な音楽ジャンルの関わり合いの中で新しいクラシックを模索することだったり。自分にしかできない音楽×AIの研究も含めて、大きく見ればすべてが僕の表現活動なのだと思います」

 


角野隼斗 Hayato Sumino
1995年生まれ。3歳よりピアノを始める。2002年、千葉音楽コンクール全部門最優秀賞を史上最年少(小1)にて受賞。2005年、ピティナ・ピアノコンペティション全国大会にて、Jr.G級金賞受賞。2011年および2017年、ショパン国際コンクール in ASIA 中学生の部および大学・一般部門アジア大会にてそれぞれ金賞受賞。2018年、ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、及び文部科学大臣賞、スタインウェイ賞受賞。2018年9月より半年間、フランス音響音楽研究所(IRCAM)にて音楽情報処理の研究に従事。フランス留学中にクレール・テゼール、ジャン=マルク・ルイサダの各氏に師事。これまでに国立ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、千葉交響楽団等と共演。2019年4月、パリのSalle Cortotにてソロリサイタルを開催し、好評を博す。2020年3月東京大学大学院を卒業。令和元年度東京大学総長大賞を受賞。金子勝子、吉田友昭の各氏に師事。国内外にてコンサート活動を行う他、〈Cateen〉名義で自ら作編曲および演奏した動画をYouTubeにて発信し、総再生回数は6000万回を突破している。チャンネル登録者数は61.8万人(2021年1月現在)。